セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

一番日が、短いけれど。

2015年12月22日 13時11分15秒 | クエスト163以降
夜中に力尽きて遅くなりましたが、本日冬至ということで、無理やり冬至関連イザ女主話。真夜中テンションも考えましたが、敢えてほのぼので終わらせてみました。真夜中テンションの方は気が向いたら別枠で書くことにします(笑)大切な人に憧れの気持ちも持ち続けたり惚れ直したりするというのは、幸せの長持ちに有効な気がします。

 今日は、一年で一番日が短い。ただでさえも留まる時間が短い太陽は、雲と無数に降る雪の向こうに隠れている。ミミは、思わず立ち止まって、後から後から落ちてくる雪を見上げた。サンタガールの衣装に合わせたサンタ帽が音も無く落ちたことにしばらく気付かないほど、長く見上げていた。
 今日は殊に寒い為か、落ちてくる雪は、全く重量を感じさせない、文字通り羽のような感触だった。雪は、空に居る星になった天使の羽が落ちてくるのだと、儚い空想をしたことがあった。ラヴィエルが星の瞬きを告げる数日前のことだった。あの頃のことを思い出してしまうと、今でもきゅうと胸が痛んで、ミミは濃い紫の瞳を思わず潤ませた。・・・でも、大丈夫。今では、みんなが楽しく見守ってくれていると知っていて。そして・・・とてもとても、信じられないくらいに幸せだから。
「サンタのおねえちゃん、帽子落としたよー」
 落とした帽子を子供に差し出されて、ミミは我に返った。
「ありがとう」
 ミミがにっこり笑って受け取ると、子供もはにかんだように笑って、雪の舞う中を走っていった。
 そうそう、のんびりしている場合じゃなかった。今はクリスマス前でリッカの宿屋もてんてこ舞いなのだ。引き受けたクエストの方はちゃんと終わっているけれど、またお願いしてくる人が居るかもしれないから、急いで帰らないと。
 サンタガールの服の白いふわふわした裾を軽やかに翻し、ミミは走り出す。すると、そんなサンタガールの服によく似合う、やはり白くふんわりしたマフラーを、背後からそっと肩にかぶせられた。
 あれ?マフラーは落としてないし、そもそもしてこなかったと、ミミが驚いて振り返ると、こちらは「しんわのよろい」に「しんぱんのかぶと」装備で荘厳ながら華やかな姿のイザヤールが、やわらかな微笑みを浮かべて立っていた。その笑顔が移ったかのように、ミミの顔にもみるみる愛らしい笑みが浮かんでいく。
「イザヤール様、おかえりなさい。クロースさんに蹄鉄を届けに行ってくれて、ありがとう」
「ただいま、ミミ。クロースさんと馬たちが、おまえにもよろしくと言っていたぞ」
 ミミとイザヤールは、午前中は二人でれんごく天馬のところに「伝説のテイテツ」を取りに行っていたのだが、午後はフィオーネ姫と約束があったミミに代わって、イザヤールが蹄鉄を届けに行ってくれたのだ。
 光そのもののような清浄な金色の鎧兜は、イザヤールの彫りの深い調った顔や逞しくもすらりとした体躯によく似合っている。翼が無くても、イザヤール様は今でも守護天使そのもののようだと、ミミは陶酔と、手の届かない存在を眺めるような一抹の寂しさを湛えた瞳で、彼を見つめた。
「どうした?」
 ミミの視線のかすかな寂しさを敏感に覚ったのか、イザヤールが首を傾げた。
「え・・・あの、えっと・・・。このマフラー、どうしたのかな、って」
「ああ、それはクロースさんからおまえへの少し早いクリスマスプレゼントだそうだ。・・・だがミミ、本当はそんなことを聞きたいのではないのだろう」
「・・・ごめんなさい。笑われちゃうと思うけれど・・・イザヤール様が、とても、かっこよくて・・・。手の届かないすごくすてきなものを見るときの気持ちに、なっちゃって・・・」
「な・・・」言われたことが思いがけなさすぎて、イザヤールは絶句してから、堪えるようにしながらもやはり笑いだした。「ミミ。そんなことを思ってくれる変わり者は、おまえくらいのものだぞ」
「そ、そんなことないもの!イザヤール様、本当にかっこいいんだから。えっと、ほら、クリスマスツリーのてっぺんを見ているときのような気持ちとか、ショーウインドーに飾っている、非売品のすてきなドレスを見ているときの気持ちっていうか・・・?」
 イザヤールは、それを聞いてまた低い声で笑った。調った精悍な彼の顔は、戦う時は峻厳そのものと言っていいくらいだったが、こうして笑うと、少年のような茶目っ気も垣間見せて、一気に親しみやすくなる。その笑顔のまま、彼は籠手を外し、あたたかな素手で彼女の頬をなでて、囁いた。
「私の全ては・・・おまえのものだぞ」
 ほら、いつでも手の届くところにと、イザヤールはミミの手を握りしめ、歩き出した。手を引かれて歩きながら、ミミは瞳に煌めきを浮かべ、愛しいひとの微笑む横顔を見上げた。欲しくて堪らなかったクリスマスツリーの星が、手の中に落ちてきた幼子のように、いやそれよりももっと、幸せそうな顔で。
 一年で一番太陽が留まるのが短くて、寒い日だけれど。ミミの手と心は今、あたたかだった。〈了〉
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ノンアルコール~。 | トップ | ドラゴンフルーツ! »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿