セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

時奪いの森(後編)

2017年11月13日 20時30分21秒 | クエスト184以降
たいへん遅くなりましたがようやく仕上がりました〜の今回の追加クエストもどきの完結編。前回のあらすじ、時を奪う魔物に千年以上時を奪われてしまい記憶まで無くしたミミとイザヤールは、やはり時を奪われてしまった亀の案内で、魔物が奪った時を溜め込んでいる砂時計のような物を壊しに行くことになった・・・。前回お断り忘れこけておりましたが、少年化イザヤール様の一人称が俺で髪の毛有り設定です。なんか長かった割にあっさり片が付いてしまったというかのんき展開というか。イザ女主のやりとりは中学生のおにいちゃんが小学生の妹の面倒をちやほや見てあげてるみたいで書いてて楽しかったです。

 亀がミミの頭上から「まっすぐ」とか「右に曲がって」とか指示をし、ミミを背負ったイザヤールが歩き、途切れたり立ち込めたりする霧の中を進んだ。
「なんか霧の範囲広がってる気がする〜」亀はミミの頭の上できょろきょろしながら言った。「ボクから取った『時』をエネルギーに変えて、範囲広げてるとか?どんどん範囲広がったらまずいよね〜きっと」
「それって怖い魔物が悪いことができる場所がどんどん広がっちゃうってこと?」
 ミミは怯えたように身を震わせた。確かにそれはまずいな、とイザヤールも眉をしかめた。まだいまいち実感は無いが、本当に自分たちも含め『時』が奪われているのだとすると、その範囲がどんどん拡大していったら、恐ろしいことになるくらいの想像はつく。エルギオス様ならすぐに何とかしてくれるんだろうな、とイザヤールは思ったが、できればやっぱり自分たちだけで解決して、一人前と認めてもらいたいな、とも思った。
 問題の場所には意外とあっさりと着いた。ボクの案内がいいからね、と亀は言ったが、どちらかと言えば亀の逃亡スピードののんびりさによる移動距離の為だろう。
 亀の言っていた通り、木々のぽっかり無くなった空き地に、巨大な砂時計のような物がでん、と置かれていた。背が縮んでしまっているとはいえ、首を思いきり上向けて見上げなければならない程の大きさだ。その中に、何かキラキラした光の砂とでも表現したいようなものが中央でくびれた瓶の下方に半分ほど詰まっている。
「あれが・・・時、なの?きれい・・・」
 ミミはうっとりと濃い紫の瞳を輝かせた。瞳の陰影が増してグラデーションを描いている。綺麗なものや愛しいものを見る時の常であるこの状態は幼い頃も変わらないらしい。ミミの言葉を聞いたイザヤールは、もっとゆっくり見せてやりたいなと思ったが、心を鬼にして言った。
「だけど、魔物が戻ってこないうちに、これを壊して、みんなの時間を取り返してやらなくちゃな」
「うん・・・魔物、今は居ないみたいだものね」
 謎の魔物は他の誰かの時を奪いに行っているのかもしれない。急がなきゃとミミは頷いてから、名残惜しそうにイザヤールの背中から滑り降りた。そして亀をそっと地面に置いた。
「まあボクの体の『時』は取り戻せなくてもいいんだけどな〜」亀はぼそっと言って草の上にのびのびと寝そべった。
 イザヤールはぎんがのつるぎを構え、ミミも装備になっていたロトのつるぎをいくらか重そうに取り出した。頑張って持ってはいるが、お世辞にも軽々使いこなせそうとは言い難い。ミミは少しよろけてから、悲しそうに言った。
「ごめんなさい・・・実は、本物の剣、まだ使わせてもらったことないの・・・」
 弟子入りする前の見習い天使なら、当然そうなるだろう。イザヤールも、剣術訓練で真剣をなかなか使わせてもらえなかったことを思い出し、優しく言った。
「無理はするな、大丈夫、俺がやる」
 イザヤールは巨大な砂時計状の物を見上げた。斬るにせよ叩き割るにせよ、この剣ならきっとできる、そんな気がした。彼は剣をしっかりと握り直し、気合いの一声を発して巨大砂時計に飛びかかった。
 だが、遮るように何かが体当たりしてきて、イザヤールをふっ飛ばした。木に叩きつけられ、彼は低く呻き声を上げたが、すぐに起き上がって、鋭い眼差しで相手を睨み付けた。その魔物が戻って来てしまったのかと唇を噛む。もし本当に『時』を奪って生物を消失させることが可能な魔物なら、今度こそ本当に消されてしまうかもしれない。ミミだけでも逃がさなくてはと再び剣を構える。
 敵は、真っ黒な影のような、ただし狼のような、大型犬のようなシルエットだった。時を奪った魔物とは別の姿なのだが、今のイザヤールはそれを知る由は無い。だが、亀がのそりと起きて言った。
「あれ、時を奪う魔物じゃなくて、見張りの方じゃんかー。てへ、ごめんね、時を奪う魔物、この砂時計から離れるときは留守番置いてくって言うのをすっかり忘れてた〜」
「そういう大事なことは、忘れないでほしかったな!」
 イザヤールは腹立たしげに叫んだ。だが、亀にというより、当然怪しい魔物が怪しいものをそのまま置いていく筈が無いということに気を回さなかった自分の方に余計に腹が立った。しかしその一方で内心少し安堵した。防げない時奪いの術を使われてしまっては太刀打ちは難しいが、見張りの手下なら、まだ何とかできると踏んだのだ。
 だが、その狼のような魔物は、素早い動きで再びイザヤールに飛びかかってきた。避けそびれて、イザヤールの腕に爪で掻いたような傷が走り、鮮血が飛び散った。思っている以上に手強い。喉笛に噛みつかれれば即死だと、彼は恐怖を捩じ伏せてそれ以降は何とか身をかわし続けた。
 ミミはイザヤールが怪我をしたのを見て蒼白になり、足が震えてその場から動けなかった。真っ黒な狼のような魔物は、こっちの獲物の方が倒しやすいと踏んだのか、彼女の方に飛びかかろうとした。イザヤールは渾身の力でそれを取り押さえ、一人と一匹で転がり回って暴れながら叫んだ。
「ミミ、逃げろ!」
 イザヤールのその言葉が、泣きじゃくりそうになったミミを奮い起たせた。幼いながらも、早くあの砂時計を壊さなければたいへんなこと、砂時計を壊す筈だったイザヤールは黒い狼のようなものと戦うことで手一杯なこと、そして、自分は足手まといでしかないことも、よくわかっていた。それでも、この優しいおにいちゃんを置いて自分だけ逃げるなんて絶対にいやだった。
 ミミは、ロトのつるぎを両手で持ち上げた。両手で持っても、まだふらつく。この動きでは、狼に攻撃しようとしても、黒い狼と縺れ合うように取り押さえているイザヤールの方に怪我をさせてしまうかもしれない。それなら。自分にできることは。
 ミミは全速力で巨大砂時計の方に走り、自分の体ごとぶつけるようにして、思いきりロトのつるぎを振った。伝説の勇者が使っていたと言われる剣は、謎の砂時計に刃を食い込ませ、激しい光を発した。その衝撃でミミは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられて気絶したが、剣の刺さった砂時計には、確実に亀裂が走っていく。
 黒い狼は、その光で絶叫を上げて消えた。自由になったイザヤールは慌てて倒れているミミに駆け寄り、抱き起こして揺さぶった。
「ミミ、ミミ!」
 とても痛かっただろうとイザヤールの方が泣きそうになっていたが、やがてミミの長い睫毛がゆっくりと持ち上がったので、彼は安堵の息をついた。そのとき、砂時計のようなものは、粉々に砕けた。
 キラキラと輝く粒子が舞い上がり、霧を消し、森全体に広がっていく。光の砂のようなものはミミとイザヤールにも降り注ぎ、二人の体も記憶も、元に戻った。奪われた「時」が返ってきたらしい。何も言わず二人は暫し見つめ合ってから、互いを固く抱きしめた。
 と、そのとき、木陰から、虚ろな声が聞こえてきた。
『そんな・・・。我が糧になる筈の「時」が・・・』
 見ると、件の魔物が、触手を手足のように伸ばして、がっくりと項垂れていた。赤く不気味に光っていた目も、今は黒くぽっかりとしてつぶらにさえ見える。また「時」を奪うつもりかと、ミミとイザヤールは素早く立ち上がって光属性の攻撃ギガブレイクとグランドネビュラをそれぞれ放つと、魔物は、断末魔の悲鳴を上げて消えてしまった。
「ヤツは、溜め込んだ『時』が無くなったことで、すっかり力を無くして、元の世界に戻ってったみたいだね〜」
 今まで隠れていたところからのそのそ出てきた亀が言った。
「元の世界?倒せたんじゃなかったの?」動揺するミミ。
「大丈夫、きっと、その世界の勇者がどーにかするでしょ。君たちのおかげですごく弱っただろうから、倒しやすくなるかもしれないしね。そんなことより」亀はとても残念そうに付け加えた。「ボクの体の『時』戻ってきちゃったよ〜!九千九百九十九歳に戻っちゃったよ〜!」
「見た目では全然わからないけれど・・・」
 そう言いながらもミミは、亀は万年生きると聞いたことがあるから、もしかしてこの亀さん、来年寿命が来ちゃうのかなと心配していると、亀は伸びをして言った。
「ま、いーか。ボクの一族の寿命は、十万歳だし」
 それを聞いて本当に亀か?!と動揺するイザヤールと、素直にああよかったと安心するミミ。後々聞いてみたところ、この亀の遠い親戚に某地でカメさまと呼ばれているカメが居るとか居ないとかとのことだが、真相は不明である。
 結局、あの魔物の正体は不明なままで、本当にこれでいいのか不安は多少有るが、消えてしまったのでは仕方がない。また現れたら、今度は時を奪われないように気を付けようと、二人は心に誓った。互いに共に過ごしてきた、大切な「時」なのだから。

 亀に別れを告げ、ミミとイザヤールが森の中を歩いてカラコタ橋の方へ戻ろうとすると、あちこちで人や動物が座り込んできょとんとしていた。おそらく「時」を奪われて今まで消えていた者たちなのだろう。
 小鳥の居るところまで戻ってくると、小鳥は、ミミとイザヤールが無事に戻って来たのを見て喜んだ。
「『時』を取り戻せたっピね!よかったよかった!無事にスキンヘッドとナイスバディに戻れてよかったっピね!おめでとうっピ!」
「あ・・・ありがとう・・・」
「微妙な言い方だな・・・」
 ミミとイザヤールは苦笑し、小鳥は森の動物を代表してのお礼にと「きようさのたね」をくれて飛んでいった。
 歩きながら、イザヤールは満足そうに言った。
「記憶が無い時でも、我々のコンビネーションは健在だったようだな。幼い頃のおまえもとても可愛らしかったし」
「まだ見習い天使の頃のイザヤール様にとても優しくしてもらって、嬉しかった」ミミはイザヤールの腕に自分の腕を絡め、幸せそうに微笑んだ。「もしも早く出会っていても、絶対好きになっちゃってたの」
 守ってくれてありがとう、とミミはイザヤールの頬にキスをした。
「こちらこそおまえに助けられたのだぞ、ありがとう」
 囁いて、彼はミミの体を引き寄せる。
 イザヤール様と一緒なら、何があってもきっと大丈夫、ミミは内心呟く。積み重ねた時を奪われても、助け合うことができたから・・・。ううん、「時」は奪われても、無かったことにはできない。共に過ごした記憶は、必ずどこかに刻まれていて、だからこそ、助け合えたのかも・・・。
 でも、どちらでもいい、イザヤール様と一緒なら、どんな時でも。ミミは、イザヤールの肩に頬を当て、つい先ほどまでの「千年前の彼」と同じぬくもりを感じて、微笑んだ。〈了〉
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2 コメント

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時はどんな宝石よりも高価 (神々麗夜)
2017-11-13 23:51:33
スキンヘッドぉ?!俺が?!で笑いましたw
何がきっかけでスキンヘッドになったのか…
自分はまだ修行中という意味か、 それとも試しにやってみたらかっこいいぜ、俺!だったのか…後者だったら嫌だなぁw
小さいながらも頑張って時を閉じ込めた砂時計を壊すちびっ子なミミちゃん。よく大変よくできました(^o^)
実はDQ10で登場するカメ様の正体はグランゼニスの眷属 天馬ファルシオンなんですよ。もし今回のお話の亀の親戚のカメ様が10と同一亀物だったらこの出会いは偶然?それとも…?
もうすぐ公開されるDQ10の新章も『時』がキーワードらしいです。はっ!?もしや今回の話が最新ストに繋がっていたり?

シェルル「イザやん、リリン達と始めて会った時、どんなだった?
ククール「リリンは幼い頃もキュートだろうね
イザやん「今よりずっと可愛かったよ。リリンとレレンは私の同期のアンジェロの娘で…
回想開始
アンジェロ「お前つるピカじゃないかw
イザやん「お前は髪長すぎwでその子達は?
アン「娘のリリンとレレンだ。」
レレン「パパのともだち?
イザやん「始めまして」
リリン「いざやーる、髪ないね。ふられたの?
イザやん「え⁉︎なんで⁉︎」
リリ「いざやーる、かわいそう。リリンはパパのお嫁さんになるから無理だけど、いざやーるにも可愛いお嫁さん来るといいね」
回想おしまい
シェ「お父さん、長髪だったんだぁ
イザやん「あの頃のリリンは本当に天使だったのに今じゃおっさんだの、ハゲだの…しくしく」
クク「いやあの美しさにあの妖艶さは女神だろ
シェ「それ僕が言おうとしたのに!
イザやん「うぅ…シェルル君、慰めて〜(抱
シェ「ぎゃー⁉︎くっ付くなーっ‼︎
ガチャ…
リリ「皆、ケーキ焼…ククール、ケーキ焼いたからお茶にしましょ」
シェ「言い直した‼︎何でククールだけ⁉︎
リリ「寄るな変態っ!(殴)…ほら、ククール早く行きましょ」
クク「おいおい、そんなに押すなよ」
イザやん「シェルル君、大丈夫?
シェ「お前のせいだぁあっ‼︎
二人の分のケーキはちゃんとっておきましたww
お母さんの名前は未定です
返信する
そうだったんですか・・・! (津久井大海)
2017-11-14 12:30:14
神々麗夜様

いらっしゃいませこんにちは☆今回もお返事長くなりまして失礼します。

イザヤール様のスキンヘッド開始時ほんといつなんでしょうね〜。津久井は勝手に「上級天使昇格頃」と思っておりますが果たして。確かに、かっこいい俺理由だったらイヤです(笑)

女主、ちびっこだとあんまり活躍チャンスに欠けて誰が主人公かわからなくなるので見せ場が作れてよかったです(笑)

そうなんですか!6のファルシオンと9のグランゼニスと10のカメさまにそんな繋がりがあったとは!やっぱり課金と廃人化に怯えないでさっさと10やれって話ですね津久井(苦笑)
そして10の次のテーマが時というのはやはり11と繋がっていくということでしょうか。うわ〜いい意味での鳥肌です!当サイトの与太話はもちろん一切無関係ですが(笑)

そちらの女主さんの幼少時代、まさに天使ですね☆今だって変わらず優しいでしょうが、師匠の理不尽方向?の厳し教育のせいで天使モードだけではいられなくなったのではと勝手に憶測。
長髪イケメンのお父さまなんですね☆師匠とのやり取り仲良しそうでステキです。お父さんと師匠が同期なら、そりゃおっさん扱いになるのも無理ないかしら・・・。
そうか、失恋し過ぎて髪を切りすぎてツルツルになったと思っていらしたのか!(笑)
女主さん、ケーキをとっておいてあげるのは優しいですけど、ぶっ飛ばす相手は師匠の方ではといつも思うんですが・・・。複雑な乙女心?
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