セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

孤高の翼

2016年02月28日 23時59分34秒 | 本編前
イザヤール様見習い天使時代の短い話。尊敬していて大切だけどまだエルギオス様と完全には打ち解けてない頃くらいです。

 珍しい、と見習い天使イザヤールは思った。エルギオス様が、どこか疲れているように見える・・・。
 イザヤールの師匠であるナザムの守護天使エルギオスは、天使界きっての実力の持ち主で、どんな激務の後もそれを感じさせない穏やかな微笑みを浮かべているのが常だった。激しい感情どころか、少し怒っているところさえ見たことが無い。優れた武勇と知性、不動かつ自愛の心を持つ完璧な天使と謳われ、イザヤールもそれに全く同感だった。それでも、完璧な天使とて、心に憂いも葛藤もあり、むしろそれを抱えつつも引きずられないことこそが真の強さなのだと、まだ幼いと言っていいくらい若いイザヤールも、おぼろげに気付き始めていた。
 地上で何かあったのだろうか、エルギオス様のことだから、きっとまた守護する村の人間のことで心を痛めているのだろうと、イザヤールは厄介ごとを起こしたであろう人間に腹が立った。エルギオス様は、人間に優しすぎる。あんな弱くて愚かな生き物の為に、心に重荷を抱えられるなんて。
 しかもエルギオスは、弟子どころか友や長老にさえも、そんな心の重荷を打ち明けることはせず、じっと自分の胸にしまいこむ質だった。それが、不信によるものではなく、大切な者たちに余計な心配をかけまいとする優しさだったから、いっそう切なく感じられた。
 しかもいくら弟子とはいえ、見習い天使に過ぎない自分は、心の重みを分かち合い負うことも、踏み込むことすらできない。・・・俺は、エルギオス様の為に何の役にも立てない・・・。かすかな寂しさと悲しさと無力感で、イザヤールの顔も一瞬曇った。
 だが、どちらもほんの一瞬で。エルギオスはいつもの微笑みに戻り、イザヤールも唇を結んで、気を取り直した。今は役立たずでも、いつか、エルギオス様の重荷を分かち合い共に負えるくらい、強くなってみせる。
 強くあらねばならない者は孤独なのだ、上級天使になるということはその孤独を負う覚悟を持つことなのだということを、イザヤールは知り始めていた。エルギオスの背中を、哀しいほど白く輝く翼を見つめることで。〈了〉
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