セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

赤い葉っぱのヒミツ(前編)

2013年11月29日 23時59分15秒 | クエスト184以降
意外なことに前後編になってしまいましたの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。ブラックタヌーなどのタヌキ系モンスターが、葉っぱを盾にしたりするのを見て、「あの葉っぱは何でできてるんだろ?」と思ったところからできた話です。たぬき忍者の里云々については、モンスター図鑑108のブラックタヌーの2ページ目をご参照くださいませ~。大した話じゃないのに後編明日に続く!(笑)

 セントシュタインは大都市故か、服飾に関する職人も流行研究によく訪れる。今日もそんな服職人の一人が、リッカの宿屋の図書室で、自分流のデザイン理論を熱く語っていた。
「ファッションはパッションなのよ!着るものには情熱がばんばん出てないとダメなのよ!」
 服職人は若い女性で、連れの若者の肩をそれこそバンバン叩いた。そんな彼女に対して、若者は肩をすくめて呟いた。
「オレは盾職人だからさあ。見た目よりまず丈夫さ優先だよ」
「だからあなたはダメなのよ!情熱のカケラもないだっさださのデザインの盾を装備したがる冒険者なんて居ると思う?あなたの作る盾みたいにさ?」
「なっ!オレの盾はだっさださじゃねえ!質実剛健っつーんだよ!」
 若者は盾職人らしい。服職人の言葉に腹を立て、一見クールそうな様子かなぐり捨てて声を荒げた。
 幸か不幸か、今図書室には、この二人の他には静かに本を読んでいる愛らしい娘が一人居るだけだったが、彼女は濃い紫の瞳を心配そうに潤ませて、喧嘩になりそうな雰囲気の二人を見ていた。その娘とはもちろん、たまたま本を返しに来て、ついでに錬金術師の日記を読んでいた我らがミミだったが、元来争いごとが苦手な彼女は、険悪になりかけた室内の雰囲気に憂いの色を浮かべた。間もなく彼女は、立ち上がって二人に歩み寄り、穏やかな声で言った。
「ここは図書室だけれど・・・図書室でなくても、喧嘩はやめてください、悲しいもの。ね?」
 心配そうに、ね?と首を少し傾ける表情が、とても可愛らしい。その顔と、穏やかな声が二人の職人を我に返らせて、彼らは一気に恥ずかしそうな顔になりしゅんとした。
「あら・・・ごめんなさい、あたしったらつい」
「ごめんよ、確かに図書室で大声でケンカは良くないよな。・・・図書室でなくてもな」
 盾職人の言葉に、ミミも服職人も思わず笑い、空気は和やかなものに一変した。と、ここで、服職人の女性はミミの着ているものに視線が吸い寄せられた。
「あらっ、あなた、一見シンプルだけどけっこうパッションなもの着ているじゃない!しかもプロポーションいいし!」
 ミミは、清楚な白に袖口と裾の紅が鮮やかなムーンブルクドレスを着ていた。慎み深く簡素に見えて実は体のラインが綺麗に出るこのドレス、しばしばおしゃれに凝る人の目を惹き付ける。褒められてミミは、ほんのり顔を赤くしてうつむいた。
 服職人は、ミミやムーンブルクドレス、特に紅の部分をなおも見ながら、呟いた。
「う~ん、あたしの新作デザインドレスも、完成したらぜひあなたに着てほしいもんだわ~。・・・でも、材料がね・・・」
「材料?特別な物なのですか?」
 ミミが尋ねると、服職人は頷いた。
「そうなの。あなた、『ブラックタヌー』っていうタヌキの魔物、知ってる?アイツらが持ってる大きな赤い葉っぱ、すっごくいい赤で、あたしの新作のイメージにぴったりなの。でも、どこを探してもあの大きな葉っぱは見つからないのよ」
「ブラックタヌーの葉っぱって、武器や盾代わりになってるだろ?」ここで盾職人が口を挟んだ。「盾職人としても興味深いよ。あれを使ってそれこそ盾や扇が作れるかもな。こいつの作りたがっている、ドレスもね」
「ねえあなた、ブラックタヌーをこっそり尾行して葉っぱの採取場所を突き止められるような、そんな凄い冒険者知らない?ルイーダさんに紹介してもらおうと思ってるけど、あなたの意見も聞かせて」
 服職人が尋ねると、ミミはにっこり笑った。
「何人か知っています」ミミは答えた。そして、ちょっぴり照れくさそうに付け加えた。「そのうちの一人は、私です」
 ミミはクエスト「赤い葉っぱのヒミツ」を引き受けた!

 ヤハーン湿地。ブラックタヌーがたくさん出没する地域の一つである。いつもなら箱舟で移動するところだが、今日ミミはルーラでカルバドの集落へ移動し、そこから目的地に向かうことにした。イザヤールが、朝からカルバドに乗馬訓練に行っていて、元々そろそろ迎えに行く予定だったからである。
 彼は最近、駆けさせた馬の上から弓を射て的に命中させる技の訓練に凝っている。馬を駆けさせながら、木に生るリンゴを実を傷付けずに落とす離れ業も極めて、ナムジンはじめ草原の民を驚かせたものだ。だが、今日カルバドを訪れる理由は、それだけではないようだ。
「今日は、差し支えなければ後で待ち合わせでもいいか」
 朝出がけにそう言ったイザヤールの表情はポーカーフェイスだったが、瞳の奥には楽しげな煌めきが隠れていたので、ミミは素直に承知した。何かいい「サプライズ」があるときは、彼はそんな顔をするのだ。殊に、わざわざ待ち合わせを後に伸ばす場合には、ほぼいいことの方に間違いない。それで彼女は待ち合わせまでの時間を、ほのぼの嬉しい気分で過ごしていたという訳だ・・・図書室のケンカ未満に遭遇するまでは。
 ミミがカルバドの集落に着くと、イザヤールは集落の老婆と何やら楽しそうに話していた。彼女に気付くと、彼は清潔な草の上に広げてある敷物を見せた。
「ミミ、いいタイミングで来てくれたな。ちょうど今、仕上がったところだ。気に入ってくれるか?」
 イザヤールに言われてミミが敷物を見ると、それは「やわらかウール」を使って作った絨毯だった。大部分は生成りの色を生かし、縁だけ鮮やかに染めた色とりどりの毛糸で控えめながら可愛らしく刺繍してあるミミの好みのデザインだ。
「すてき・・・!暖炉の前の敷物、そろそろ替えようかなって言ってたの、覚えていてくれたんだ・・・ありがとう、イザヤール様」
 ミミが嬉しくなって瞳を輝かせると、老婆がにこにこしながら口を挟んだ。
「ほら、この端っこの方、オラたち独自の、幸運を示す文様でね。ここだけでも自分で刺繍したいって、イザヤールが今日仕上げただよ。なかなか筋がいいね」 さすがにまだ絨毯を織るまではできないので、集落の人々が作ったうちの一枚を分けてもらって、文様だけ刺繍させてもらっていたのだと、イザヤールは説明した。
「じゃあここの刺繍はイザヤール様が・・・」
 それを聞いてますます嬉しいと、ミミは更に瞳を輝かせ頬を染める。

「今度は絨毯織りもやってみないかい」
 老婆がイザヤールに向かって言うと、彼は笑って答えた。
「ぜひお願いしたいな」
「私もいい?」とミミ。
「おお、もちろんミミも大歓迎だよ。さて、しばらく草原の風とお日さまに当ててから、持って帰るとええ」
「じゃあ、その間にヤハーン湿地に行ってこようかな」
 ミミが呟くと、イザヤールは怪訝な顔をした。
「ヤハーン湿地?どんな用事だ?」
 そこでミミは、受けたクエストの説明をした。
「ふむ、ブラックタヌーの葉の調査か。私もつき合おう、いいな?」
「はい、お願いします」
 その後ミミがナムジンに挨拶に行くと、彼はヤハーン湿地の手前の橋まで馬を使うよう勧めてくれた。馬は自分で帰れるので心配はないからと。その厚意に甘えることにして、ミミとイザヤールは馬を借りて草原を駆け、ヤハーン湿地に向かった。

 ヤハーン湿地は、たくさんのブラックタヌーがうろついている。この魔物の出身は、「たぬき忍者の里」らしいが、その里がどこにあるのか知る人間は今のところ居ない。
「葉っぱのヒミツを追ったら、里の場所もわかったりして」
「かもな」
 ブラックタヌーは、バギマやマホトーン、かすみがくれの術と、様々な攻撃手段を持つ手強いタヌキだが、今やミミたちの敵ではなく、むしろ近寄ろうとすればこそこそ逃げてしまう。ステルスを使って、辛抱強く尾行することにした。
 しかしブラックタヌー、修行をしてみたり食事してみたり果ては昼寝してみたりと、さっぱり巨大赤葉っぱの調達に行く気配がない。
「戦って、奴らの葉っぱを使い物にならなくして、新しい物を取りに行くようしむけたらどうだろう」
 イザヤールが提案し、なるほどと、ミミはステルス状態のままブラックタヌーの一団に近付いて姿を現したので、油断しきっていた彼らは文字通り飛び上がった。
「に、忍者である我々の背後を取るとは、やるな、人間どもめ!だが、これまでだ!」
 かすみがくれの術をしてみかわし率を上げる者、マホトーンを唱える者、バギマを唱える者と各々攻撃してきたブラックタヌーたちだったが、どれもミミたちにはあまり効かなかった。しかし武器にも盾にもなる例の葉っぱ、イザヤール愛用のすいせいのつるぎをもってしても、切れたり破れたりしないのはさすがだった。どんな植物の葉っぱなのかますます興味がわく。しかしこれでは壊して新しいものを取りに行かせるのは難しそうだ。
 手加減したがブラックタヌーたちはのびてしまい、その機会に葉っぱを拾い上げて調べようとしたミミだったが、ブラックタヌーは気絶しても葉っぱは意地でも放そうとしていない。
 仕方ないのでそのままブラックタヌーが握りしめたのをしゃがんで調べてみると、手触りはしなやかで表面はつるつるしていて、風を受ければひらひら動く。やはり感触は葉っぱだが、葉っぱにしては厚みがあるので表面が滑らかななめし革のような感触でもある。縫い合わせたら真っ赤なレザーワンピースになりそうで、服職人は喜ぶだろう。
 と、ここで、葉を調べられていたブラックタヌーが目を開けた。そして叫んだ。
「おまえたちも、かすみがくれの術の巻物を狙っているんだろうが、あれはたぬき忍者の魂、里の誇り!命に代えても渡さないからな!」
「え?巻物?違うんだけれど・・・」
「嘘つけ!」
「嘘じゃないの。私たち、あなたたちの使っている葉っぱが、どこで手に入るのか、知りたいの。教えてくれない?」
 ミミは誠実そのものな態度で頼んだが、ブラックタヌーはそっぽを向いた。
「誰が人間なんかに教えるか!」
 こうなると処置なしである。結局二人はこのブラックタヌーたちを放してやった。やはりステルスで姿を隠して辛抱強く尾行するしかない。
「じゃあブラックタヌーたちが家に帰りそうな時間にまた来ましょうか」
「しかしこの辺をねぐらにしていて、わざわざ里には帰らないのではないか?」
「う~ん、そうかも・・・。どっちにしても、葉っぱは取り替えているのかずっとこのままかも観察しなくてはいけないのね・・・」
 案外長期戦になりそうなクエストだ。考えてから、ミミは呟いた。
「とりあえずどちらにしても一旦カルバドの集落に戻らなきゃ」
「そうか?」
「だって干している絨毯を大事にしまわないと」
「ああ、そうか」
 忘れるところだったとイザヤールは苦笑し、ミミはルーラを唱えて集落に戻った。

 だが。集落に戻ると、意外な展開が待っていた。
「たいへんだあ!干しておいたおまえさん方のせっかくの絨毯が、持ち去られてしまっただよ!」
 集落の老婆が、ミミとイザヤールの顔を見るなり叫んだ。風を当てるために集落の囲いにかけておいた絨毯が、盗まれてしまったのだと言う。
「ええっ・・・いったい誰が・・・」
「ブラックタヌーどもだよ!」
「え?・・・えええー?!」〈続く〉
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