セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

静聴

2014年03月25日 03時24分49秒 | クエスト163以降
イザヤール様単独お出かけ話。たとえ一人で仕事に行っても、ちゃんと地上の守り人スキルばんばん発動イメージなイザヤール様です。しかも助けなきゃ!ってチカラ入ってる感じじゃなくあくまで淡々と。さて今回、野郎ばかりでむさ苦しい雰囲気の話になるかと思いきや案外そうでもありませんでした(笑)女主に変えても成立しそうなストーリーですが、「男性同士の会話とか空気」を書いてみたかったのです。それにしても聴くって凄いかも。ルイーダの酒場とかでも迷える若者とかに相談乗ってほしいもんです。

 薪のぱちぱちと爆ぜる音以外は、辺りは静寂に包まれていた。春先という季節柄か、夜行性の鳥や虫の音すら聞こえない。焚火を挟んで向かい合うように座っている二人の男は、炎を眺めているばかりで先ほどから全く声を発していない。一人は、暗色のターバンで剃髪の頭を覆っている、彫りの深い整った顔立ちの精悍な青年、もう一人は、やや蒼白い神経質そうな顔つきで、くすんだ麦藁色の長髪を垂れた細身の青年だった。共に簡素なレザーマント姿だが、片方は戦士系、もう一人は呪文使いだと、一見してわかる。
 退屈したのか、長い沈黙に堪えかねたか、長髪の青年が、独り言とも話しかけるとも取れる言葉を呟いた。
「明日で野営生活も終わりか、やれやれだ」
 剃髪の青年は、声がしたので火からちょっと視線を上げたが、饒舌な質ではないらしく黙っていた。そんな様を見て、長髪の青年は苦笑した。
「ちぇ、一週間護衛仲間したってのに、愛想が無いなイザヤールさんよ」
「ああ、話しかけていたのか」
 剃髪の青年・・・イザヤールは、唇の片端を軽く上げた。そう返答されて、長髪の青年は更に苦笑した。
「まったく、敵わねえな。あんたは、仕事が無事終わるのが嬉しくないのかい」
「それは嬉しいに決まっている。だが、まだ明日一日残っているからな。安心するのは本当に終わってからにしたらどうだ」
「ったくカタイんだよなあ。一回だけ町に泊まれた日も、あんただけさっさと眠っちまって女のコたちと遊ばなかったしさ。あんたにカノジョさんが居るってホントか?フカシじゃないのか?」
「大切な人が居るから他の女性に構う気はしないのがそんなにおかしいか。嘘をつく理由は別に無いが、信じてもらわなくてもこちらには全く支障が無い」
「へえ・・・そんなに惚れてるカノジョさんってどんなコなのか、気になるな。またルイーダの酒場に行けば会えるのかな?」
「会えるかもしれないが、君のような軽薄な男にはあまり紹介したくないな」
「そんなキツイこと言って、ホントは俺に取られるんじゃないかってビビってんじゃない?」
「かもな」
 そう言いながらもイザヤールは余裕のある笑みをかすかに浮かべている。
「ちぇ、顔でのろけてやんの。あ~お熱いね」
 長髪の青年は茶化すように笑ってから、ふいに真剣な、寂しげな顔になり、言った。
「あんたは・・・自分のカノジョのこと、運命の相手だと思っているかい」
「ああ」
 ためらいなく答え頷くイザヤールに羨望の眼差しを投げ、青年はぽつりぽつりと呟いた。
「実は、さ・・・俺も、カノジョが居て・・・故郷で待ってんだよな・・・。でも、俺は、好きだけど運命とか思えるかって言うと、それほどではなくて、ほんとにあの子でいいのかなって、迷ったりしてさ・・・目移りしないくらい惚れられる相手に出逢えたあんたが、羨ましいよ」
 イザヤールが何かを言う前に、青年は照れくさそうにあくびして言った。
「おっと余計なこと言っちゃったな、俺のカノジョにはくれぐれもナイショだぜ。じゃ、俺はもう休むわ。この様子なら、見張りは一人で充分だろ。後は頼むぜ」
「・・・ああ、任せてくれ。おやすみ」
 長髪の青年はテントに入っていった。テントと言っても、雇主が裕福な為かカルバドの遊牧民のパオと言ってもいいくらい立派な物だった。その中に今戻っていった青年を含めて三人の護衛が休んでいる。雇主は別のやや小さめだがやはりパオ並にしっかりしたテントで休んでいた。

 一人焚火の側に残って、イザヤールの周囲は再び静かになった。こうして揺らめく炎を眺めていると、ミミと並んで暖炉の傍らに居る時間を思い出す。明日、ようやく逢える。実は町に泊まった日に、キメラの翼を使って短時間だがセントシュタインに帰ったから、三日ぶりくらいになるのだが、それでもようやく、という感じがする。
 早く逢いたいものだと彼は口の中で呟いた。通常の依頼だったら二人で受けて一緒に出かけたのだろうが、雇主が少々偏屈らしい中老の男で、女性の護衛というものの同行どころか存在も認めないという主義だった。ミミはそんな偏見を少々悲しく思っているのをイザヤールも知っているので、最初はそれなら自分も無理に依頼は受けないと断ろうとしたのだが、ルイーダがぜひにと頼み込んでこっそり理由を教えてくれた。
『あの方、冒険者だった娘さんを亡くしているの・・・。あんな言い方をしてるけど、よその娘さんまで危ない目に遭わせたくないっていう不器用な優しさなのよ。お願い、イザヤールさん、一週間でいいそうだから、護衛してあげてくれない?私も、ミロのことがあるから、なんか他人事と思えなくて』
 そういうことならとイザヤールは納得し、ミミも快く送り出してくれた・・・出発前も三日前の短い逢瀬の時間も共に、一週間は余裕で消えそうにないしるしを体のあちこちに付けられて、上気したように赤くなってはいたが。
 そのときのミミの、熱に浮かされたような潤んだ濃い紫の瞳を思い浮かべて、イザヤールは僅かに頬を緩めた。こんな顔を見られたら、今回の護衛仲間たちに盛大にからかわれるのだろうと苦笑して、ついでに星空に居る仲間たちもひょいと見上げると、これまた案の定からかうように瞬いていたので、わざと少し眉をしかめてやった。
 と、そのとき、雇主用のパオの入り口の垂れ幕が動いた。何事かと訝しげにイザヤールが首を傾げると、雇主はパオを出て、焚火の側にゆっくり歩み寄ってきた。
「何か?」
 イザヤールが尋ねると、雇主は火の側にどっかりと座って呟いた。
「ちょっと眠れなくてな。まあいい、構わんでくれ」
 それきり彼が口をつぐむと、また辺りは炎の燃える音だけに戻った。
 雇主はしばらく押し黙ったまま焚火を眺めていたが、やがてぽつりと呟いた。
「・・・ずいぶん反対したんだ。でもあれは、わしに似て頑固者で、親の言うことなんぞ聞かずに家を飛び出しおった・・・」
 どうやら死んだ娘のことについて話しているらしかった。彼は、イザヤールに聞かせたいというよりただ思い出を喋りたいだけのようなので、イザヤールは特に返事はしなかったが、静かに雇主を見つめた。
「頑固者だが優しくて可愛くて、本当にいい子だった・・・。自分のことより人助けばかりして・・・。
娘が自ら選んだ道が、娘の幸福だと懸命に言い聞かせた・・・だが、あれが死んだとき、わしは悔やんでも悔やみきれなかった。もっとしっかり止めていれば、手元に置いて花嫁修行でもさせておけば、こんなことには、とな・・・。娘の幸せを願ってした選択が最悪の結果になるなんて、あまりに残酷じゃないか・・・」
 そう言うと雇主は手で顔を覆った。イザヤールは口を開きかけて、ふと、雇主の後ろに、悲しげな顔をした若い女性が立っていることに気付いた・・・生きてはいない、魂だけの姿の娘が。イザヤールの視線に気付いて、娘の幽霊が尋ねた。
『あなた、あたしの姿が見えるの?』
 イザヤールが小さく頷くと、娘の幽霊は必死に訴えた。
『お願い、パパに伝えて!あたしは幸せだったって。後悔してないって!悲しませてごめんなさいって!』
 イザヤールはまた小さく頷き、口を開いた。
「娘さんが、自ら選び進んだ道を全うしようとしていたのなら、悔いは無かったのではないかと私は考えます」そして彼は、澄んだ力強い瞳で雇主を見て、言った。「娘さんが悔やんでいるとしたら、それは父親であるあなたを悲しませたことだけでしょう。・・・あなたの娘に生まれ、娘さんは幸せだったのではないでしょうか」
 雇主は顔を覆っていた手を退けて、イザヤールを見つめ、泣きそうな顔で笑って呟いた。
「・・・不思議なもんだ、あんたの澄んだ目を見ていると、本当に娘がそう思っているような気がするよ・・・」それから彼は、静かに目を拭って言った。「あんたの恋人も、冒険者だと言ってたが、あんな可愛い華奢な子が強いとは、どうしても思えん。・・・しっかり守ってやってくれよ。・・・くれぐれも、わしのような思いをしないようにな」
 イザヤールは頷き、言った。
「必ず守ると、誓っています」
「そうか。・・・あんたなら、きっとその誓いを守れるだろうな」
 雇主は静かに笑い、テントに戻っていった。彼の娘の幽霊も嬉しそうに微笑んで、ありがとう、と言って姿を消した。

 それから間もなく見張りの交代の時間になったので、次の担当と交代してイザヤールもテントに戻ると、眠っていたかと思われた長髪の青年が、ぱっちりと目を開けて呟いた。
「・・・あんたって、不思議な人だな。俺とそんなに歳が変わらないだろうに、すごい大人っていうか・・・なんか打ち明けちゃったんだよなあ・・・」それから彼は、寝返りを打って呟いた。「俺、今回の仕事終わったら、とりあえず一回故郷に帰ってみることにしたよ。・・・カノジョが運命であってもなくても」
「・・・そうか」
 イザヤールは微笑み、頷いた。
「ちぇ、相変わらず無愛想な返事だな。・・・でも、ありがとな」
「私は何もしていないが。助言さえもな」
「それがいいんだよ」
「そうなのか」
 と、ここで、これまた眠っていた筈のもう一人の護衛の声がした。
「あの~イザヤールさん、僕の話も聞いてもらえます?」

 翌日。無事に護衛の仕事を終えて帰ってきたイザヤールに、ミミは輝く笑顔で駆け寄ったが、その様を見たサンディが、目をまん丸に見開き叫んだ。
「え、ちょっ、イザヤールさんてば!ミミから盛大に『無事に帰ってきてウレシイ』星のオーラが出まくるのはわかるけど、他にもどーしてこんなに星のオーラ持ち帰ってこられたワケ?!」
「?そうなのか?」
 ミミを腕に抱えたまま、イザヤールは不思議そうに首を傾げる。だがミミも、イザヤールの得た星のオーラが一瞬見えたような気がして、花が開くような微笑みを浮かべた。〈了〉
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2 コメント

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待つのも楽しみ? (神々麗夜)
2014-03-25 12:08:21
イザヤール様、さっさと寝るフリしてミミちゃんに会いに行ったのでは…ニヤリ。
確かに聴くって一見簡単ですけど実は凄く難しいのかもしれませんね。

同行者、彼女いるのに他の女の子引っ掛けてたのか…笑。運命の相手かはわからないか…ひょっとして親が決めた相手とか彼女に好きと言われてとりあえず付き合っているとか?
浮気と言えばうちの女主は男パラディンがもし浮気をしたらどうする?と男僧侶が聞いたら『有無を言わせずすり潰す』と答えたそうです。
男僧侶「え…俺の聞き間違い?」
女主「すり潰しますわ。」
男僧侶「(ガクガク)(・・;))」
女主「もしくはやり返す」
男僧侶「どうなる!男パラディン」
男パラ「しないから!女主だけだから!」
まぁ男パラディンもそれなりに女性経験ありますけどね(笑

男バトマスは間違いなくテンチョー目当てですが、実は男パラディンや男僧侶と違って天使界に行った事や天の方舟に乗った事がなくサンディやテンチョーが見えない(男パラディン達には見える)のですが何故か男バトマスはテンチョーの凄まじい筋肉の何かを捉えるか見えない何かを追いかけている状態です。本人曰くにおいだとか
男バト「ものすごい筋肉のにおいを追って来たのに…なんでこいつらが…」
女主「き…筋肉のにおい?」
男僧侶「アギロのおっさんの事か?」
男バト「何処に筋肉のお方を隠した!」
男バトマスは女主に殴りかかったが
男パラ「女主に手を出すな!」
会心の一撃!
男バト(返事がないただの屍のようだ)







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待つも切なくも楽し? (津久井大海)
2014-03-26 02:27:34
神々麗夜様

こんばんは☆念のためお知らせがあるので長めお返事失礼します☆
イザヤール様、まさしく眠るふりして会いに行ったのです(笑)w
聞き上手、憧れます~。守護天使ってトラブル解決が多い職業?柄聞き上手なイメージです。
運命の人と信じてお付き合いって逆にレアケースかもと思ってしまう津久井は腐った年寄りかもです。悲しい~。いずれにせよ彼女居るのに女のコ遊びはアカンです。ちゃんと別れてからしないと(←おい)

そちらの女主さん、「すり潰す」ってw殴るとか刺すとか斬るより強烈ですね~wいやいや、お仕置きが怖いんじゃなくて女主さんの魅力で浮気無し、ですよね☆
バトマスさん・・・テンチョーのストーカーさんでしたか!そんな状態なのに追い払わない皆さん、優しすぎませんか?パラディンさんが屍にしちゃいましたがw

そうそう、コメント欄にネタを書いてくださるお客様には僭越ながらちょいちょい申し上げておりますが、くれぐれもせっかくのネタのバックアップをお忘れなく☆津久井の弱小サイトでのご披露は勿体無いとつい思ってしまうのです、釈迦に説法お節介すみません。
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