セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

不思議なランプ職人

2014年04月19日 01時22分19秒 | クエスト184以降
今週の追加クエストもどきは、ちょっと不思議な材料で作る楽しいランプのお話です、以上。(笑)こんなふうに材料を組み合わせてランプを作っていたら楽しい気がします。もっといろいろな材料の組み合わせを考えるのも。タイトルはランプが不思議なのか職人さんが不思議なのか、どちらとも取れるようになってます。職人さんおそらく普通の人間ですが。またいつか材料の組み合わせ共々この人の頼むクエスト話も書いてみたいです。

 新緑の旅と冒険の季節となり、リッカの宿屋もルイーダの酒場もロクサーヌの店も相変わらずの大盛況のようだ。ミミも冒険の合間を縫って、あれこれと手伝っている。
「ねえミミ、私、今日ちょっと忙しくなっちゃって・・・。注文していた物を代わりに取りに行ってもらっていいかな?特注のランプなんだけど。今夜ロイヤルルームにいらっしゃるお客様の為に、今日中に飾りたいの」
 急な団体客が入っててんてこ舞いのリッカが、手にしたタオルの山の陰から顔を懸命に覗かせてミミに頼んできた。タオルの半量は一時的にリネン室に運ぶのだ。
「もちろん。どこへ行けばいいの?」
 リッカの持つタオルを半量取り、運ぶのを手伝いながら、ミミはにっこり笑って答えた。
「サンマロウよ。ランプ職人さん、今までサンマロウの町で仕事していて、本当は届けに来てくれるつもりだったけど、急にどうしても手が放せない用事ができて来られなくなっちゃったんだって。お届けできなくて申し訳ないけれど完成はしたので、よろしかったら取りにいらしてくださいませんか、ってお手紙に書いてあったの。すごくデリケートな品だから、普通に誰かに届けてもらうのは心配なんだって。その点は、ミミに任せれば安心だもん」
「うんわかった、気を付けて運んでくるからね」
 リッカの信頼に応えようと、ミミは張り切って答えた。返事をしてから、サンマロウかあ、イザヤール様は今日ビタリ海岸の高台で特訓をしているから、ニアミスだなあとちょっぴり嬉しくなったりちょっぴり残念に思ったりした。いずれにせよ、一番星が出る頃に待ち合わせしているけれど。
「ありがとう、ミミ。それじゃお願いね」
 それからランプ職人との待ち合わせ場所の詳細と品物受領の合言葉等の事務的なことも伝えたリッカは、最後に笑顔で気を付けていってらっしゃーい!と言って、ぱたぱたと走っていった。ミミはタオルをリネン室に運び、踊り子のドレスの裾をひらひらさせながら建物の外に出て、サンマロウに向けてルーラを唱えた。

 その頃イザヤールは、ビタリ海岸の高台の広大な地形を利用して、素手スキルの特訓に励んでいた。「岩石おとし」で盛大に放り投げた岩を、「ばくれつけん」で、地面に落ちる前に粉砕する、という力と素早さと技術力をバランスよく鍛えられる訓練である。
 彼がミミと一緒に、冒険以外はあまりにも宿屋の手伝いをするので、申し訳なく思ったミミとリッカが、たまには彼に休暇をと申し出たのだ。それなら、せっかくだから特訓にでも行ってこよう、とイザヤールが言うと、ミミはさすがイザヤール様と瞳を輝かせ、リッカはワーカーホリックだと苦笑していた。彼女だって人のことは言えないが。
 岩は地面に落ちる前に石ころくらいに細かく砕け、現在辺りにはそんな岩の残骸が山となっている。始めてから、一つも外していない。これを応用して、守備力の高い魔物にも有効な技になるといいが、と、イザヤールは独りごちた。彼のそんな高度な技の迫力に圧されて、ここに棲息する魔物たちは近寄ってこない。
 また始めようとして、イザヤールは人の気配を感じて、ふと動きを止めた。辺りに人里の無いこの高台、しかし決して無人の地ではない。珍しい品を売買している商人たちのアジトがあるのだ。そんな商人の一人が洞穴から出てきたのかと、彼が振り返ると、そこには商人というよりほっそりとして繊細そうな、芸術家とでも言いたいようなタイプの青年が立っていた。先ほどから離れたところから見ていたのか、イザヤールと目が合うと微笑んでゆっくりと拍手をし始めた。
「失礼とは思いましたが、思わず見とれて先ほどからついついずっと眺めてしまいました。素晴らしく強くていらっしゃるんですね」
 青年は、ものやわらかな声で話しかけてきた。イザヤールは軽くゆっくりと会釈してから尋ねた。
「私に何か用か」
 すると青年は、人懐っこい笑顔を浮かべて答えた。
「実は、そうなんです。先ほど、そこの洞穴に居る商人から、『げんませき』を買いまして、それを細かく砕いてくれるハンマーの使い手とこの辺りで待ち合わせしてたんですが・・・どうもすっぽかされちゃったみたいで。今日しか空きが無いと言われて、品をお客さんに届けるのを先伸ばしにしてまで、待っていたんですけどね」
「それは気の毒だな。ところで、品だのお客だのと、君は商人なのか?失礼だが、あまりそうは見えないが」
「いい勘をしていらっしゃいますね。その通り、僕は、商人ではなく職人なんです。ランプの職人です」青年は誇らしげに言った。
「ランプ?ランプと『げんませきと』、どんな関係が?」
「僕が作っているランプは、普通のランプではなくて、ちょっと特別なランプなんです。一つひとつ、使う人のイメージに合わせて、光源や笠、ガラス部分を変えるんです」
「ほう、それは興味深いな。・・・失礼、君は私に何か用があるのだったな」
「あ、そうでした。あなたは、そんな硬い岩石を素手で砕けるくらいなら、げんませきも砕けるんじゃありませんか?ハンマーの使い手の代わりに、ひとつ頼まれてくださいませんか?」
 冗談ではなく本気で言っているらしく目をキラキラさせている青年に、イザヤールは苦笑して告げた。
「素手ではない、特殊な籠手を装備している」彼は今「ツクヨミのこて」を装備しているのだ。「それに、げんませきは特殊な石だ。その辺の岩とは比べものにならない硬さだろう。・・・せめて、私にもハンマーを使わせてくれ。多少の心得がある」
「わあ、すごいんですね。僕は、げんませきが細かくなってくれれば、素手でもハンマーでも構わないです。お願いします」
 イザヤールは「たいりくくだき」を装備して、げんませきの綺麗に割れる結晶の目を狙って、素早く降り下ろした!げんませきは、たちまち細かな結晶の破片となった。
「やはりあなたはすごい方ですね、ありがとうございます。これで当分の作業に間に合うだけの材料ができました」
 青年はお礼にと、イザヤールに「ほしのカケラ」くれてから、日の傾き方を見て急に慌てだした。慌てていてもばたばた感が全くなかったが。
「あっ、そろそろランプを受け取りに来たお客さんが、サンマロウの待ち合わせ場所に着いてる頃だ、急がないと。お世話になりました、それでは失礼します」
 青年はおじぎをすると、キメラの翼を放り投げて去っていった。イザヤールはその後を見送って空を見上げて微笑んでから、また特訓に戻った。

 サンマロウの町の翼のある像の前にでランプ職人と待ち合わせだとリッカは言っていたが、それらしい人の姿がなかったので、少々困惑したが、そのとき町の入り口の方から、急ぎ足で、だが転ばないように慎重に歩いてくる青年が見えたので、彼がそのランプ職人なのだろうと見当をつけた。青年はミミの前に来るとランプ職人だと名乗って挨拶を始めた。
「今日はご足労頂いたうえ、お待たせしまして申し訳ないです。あなたはリッカさんの代理の方ですか?」
 ミミはその通りだと認め、リッカから聞いた合言葉を言って代金を渡した。するとランプ職人は、背中に背負っていた箱形の入れ物から、厳重に梱包した箱を取り出し、くるんでいる布や詰め物を取り去って、ミミに見せた。たちまち暖かくやわらかな色の灯りが辺りを覆う。部屋に居る者ならほっと和むような、窓の外に居る者なら人恋しくなり思わず集まりたくなるような、そんな光だった。そして笠や台座の装飾は、ロイヤルルームにふさわしい豪華で洗練されたデザインで、青銅の上に貼られた金箔にルビーが効果的にあしらわれてあった。
「以前リッカの宿屋のロイヤルルームに宿泊させて頂きまして、あの部屋に調和するランプを作りたいと思っていたんです。今回、ご注文を受けて、その願いが叶いました」
 ランプ職人はそう言って微笑んだ。ミミはうっとりとランプの灯りを眺めた。
「とっても綺麗ですね・・・ランプもだけど、灯りも・・・贅沢なのにあったかくてほっとして、本当にリッカの宿屋のロイヤルルームを思い出します」
 ミミが呟くと、ランプ職人は嬉しそうににこにこした。
「おわかり頂けますか。光源に『ひかりの石』の他に、『たいようの石』も混ぜてみたんです。ガラスには水晶を使って、煌めきを心持ちやわらかくしてますし、台座や笠に黄金を使うことで実はより灯りに暖かみが増しているのですよ。黄金の輝きは、古代では太陽の輝きと同一視されていましたからね」
「へえ・・・いろいろな物を使っていて、それぞれに意味があるんですね」
「ええ。置く部屋の雰囲気や、使う人のイメージにや、用途に合わせて、材料を変えるんです」それから、ランプ職人はちょっと不思議そうに首を傾げてから、ミミをじっと見つめて呟いた。「あなたのランプも・・・作ってみたいですね」
「作って頂けるんですか?」
 ミミは濃い紫の瞳を輝かせて身を乗り出した。
「はい、材料さえ揃っていれば、すぐにでも」そう言ってランプ職人は道具袋をごそごそ探し始めたが、悲しそうに呟いた。「しまった、『ほしのかけら』を切らしている・・・あなたのランプなら、あれが肝心なのに」
「ほしのカケラがあればできますか?」
「ええ・・・でもあれはなかなか見つかりませんよ。・・・先ほどうっかり、最後の一つを、材料の細工に手を貸してくれた方に、お礼に差し上げてしまいましたからね。ビタリ海岸の高台で特訓をしていた、男前で剃髪の冒険者の方でしたが」
 それを聞いてミミは目を丸くした。その人って・・・。それから、いたずらっぽい顔で言った。
「その人のこと、私、よく知ってます」それから、頬をぽうと染めて付け加えた。「私の、一番大切な人なんです・・・」
「すごい偶然ですね。なるほど、だからか」ランプ職人は、ミミを見つめて言った。「先ほどお世話になったその方と、あなたに作ってあげたいランプのイメージが、不思議と似てましてね。血縁者や仲のいい配偶者同士では、よくそんなことがあります」
「ほんとですか・・・嬉しい」
「ならばお二人の為に作りましょう。でも、ほしのカケラがなあ・・・」
「私、用意します」
 ミミはクエスト「不思議なランプ職人」を引き受けた!
 ・・・が、クエストを引き受けて間もなく。ミミは道具袋から、ほしのカケラを取り出してランプ職人に渡した!最速記録に近いクエストクリアである。
「ありがとうございます。では、お二人の為の最高のランプを作りますから、しばらくお時間をくださいね。完成したらお届けに伺います」
 ランプ職人はミミたちがリッカの宿屋で暮らしていることを確認して、箱形の入れ物を背負い直し、去って行った。このように世界中を歩きながら各地でランプを作ったり、材料集めをしているそうだ。

 それから数週間後、ミミとイザヤールは完成したランプを受け取った。台座や笠にわざとやや黒ずませた銀を使うことで、模様として彫り込まれた翼の形の線が引き立っている。灯りには優しさがあり、夜空の星を集めたような静かな輝きもあり、だがかすかに人知を越えた神秘性もある。その灯りを見て、ミミは一瞬目を潤ませ、呟いた。
「故郷の・・・故郷を思い出します・・・」
 天使界に穏やかに満ちていた、優しさと聖なる力を。このランプは思い出させた。
「最高の褒め言葉です」
 そう言ってランプ職人は帰っていった。ランプ職人が帰っていく後ろ姿を見送りながら、イザヤールが微笑んで呟いた。
「不思議な職人だったな」
 ミミは頷き、イザヤールの腕に頬をすりよせるようにもたれてランプを眺めた。ランプの灯りは静かに輝きを放っている。宵に現れる、一番星のように。〈了〉
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