セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

一から指輪

2013年11月23日 00時29分51秒 | クエスト184以降
今週ちょっと時間オーバーですみませんの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。いい夫婦の日にちなんだ話にしようとしてなんだか明後日の方向に?錬金材料集めというクエストの王道らしいクエストと言えなくもないんですが、作りたい物が物だけにその辺の説明が煩雑かつ余分です。その辺すっ飛ばしてお読みされた方がいいかも(笑)必要材料数の計算が合ってるかかなり怪しいし。お暇な方は錬金レシピをご覧頂いて、アレを一から作った場合の手間と膨大な材料に驚いてみてくださいませ(笑)余談ですが文中イザヤール様が「以前もこんなことをやったような」と思った内容は2010年10月のクエスト184カテゴリ「究極のリンゴ」参照。三年前かあ・・・。


 ロクサーヌの店は基本仕入れた物をそのまま販売する形式だが、例外もある。今日も、特注品を注文したい客が相談に訪れていた。
「小さな石ですがな、この店で売っている結婚指輪に、それぞれ組み合わせてもらえませんかな」
 そう言って客の老人は、小さいが美しく光るダイヤモンドを懐から取り出した。彼の頼みに、ロクサーヌはにっこり笑って頷いた。
「お安いご用ですわ。大切な石、確かにお預かりさせて頂きます。お任せくださいませ」
「若い頃は、女房に指輪のひとつも買ってやれんでな」老人がしんみりした顔になった。「最近ようやく、買うだけの余裕ができてのう。もうお互い指輪も似合わんじゃろうが、まあ冥土の土産代わりにな。では頼みましたぞ」
 それから届け先などの細々したことを告げて、老人は帰っていった。ロクサーヌの隣には、カウンター内にリッカと、そして錬金中のミミが居て、そのやりとりを見ていた。リッカはにこにこしながらミミに囁いた。
「遅ればせながらの結婚指輪かあ・・・。ステキね」
 ミミも微笑んで頷き同意した。たとえいくつになっても、心のこもった綺麗な贈り物は嬉しいことだろう。
「腕のいい宝石細工職人の方を手配してありますから、数日内には完成しそうですわ。このロクサーヌ、なにがなんでもお客様の結婚記念日に間に合わせますことよ!」
 優雅な笑顔の中にも気合いを入れるロクサーヌ。さっそく彼女は、預かった石と結婚指輪を持って職人のところに出かけていった。
「そうか、結婚記念日の贈り物なのね」
 おじいさんのお年から考えると、もしかして金婚式くらいかな?ミミは楽しげに首を傾げる。彼女の濃い紫の瞳は、無意識に、自分の指にはめた、結婚指輪ではないが同じくらい大切な、愛しい人からの贈り物の指輪に吸い寄せられた。ふたつで一組の指輪の片割れ。もうひとつは、イザヤールの指に付けられている。
 おじいさんの奥さんも、きっと喜ぶよね。大切な人からの贈り物。心あたたまる思いでミミは内心呟き、リッカと顔を見合わせてにっこり笑った。
 すると、ルイーダの酒場のカウンターで酒を飲んでいた客の若者が、空になったジョッキを陽気に掲げながらいきなりミミたちの会話に割り込んできた。
「いーや、やっぱり金は無くとも似合ううちに渡したいでしょう指輪は!男のカイショーですよ!」
「でも、お金無いのに無理をされても嬉しくないんじゃ・・・」
 指輪よりお酒代を貯金した方がこの人の彼女さんも喜ぶんじゃないかなあと内心思いながらミミが言うと、彼はポケットから金の指輪を取り出して言った。
「無理はしません!この指輪をベースにして、イケてる指輪に錬金する、って手がありますよ。実は僕、ちょっと腕に覚えがある錬金術師なんです。でも・・・」
「でも?」
「色男、金も力もなかりけり、です。僕、錬金術は得意なんだけど腕っぷしがさっぱりで、材料集めに苦労しているんですよー」
 ここで彼は、振り返って酒場のカウンターの奥に目線を移した。
「だからルイーダさん、腕っぷしに自信がある冒険者紹介してくださいよ~。錬金素材落ちてる場所、けっこうヤバい魔物多いから」
 ルイーダは呆れたように自称錬金術師の若者を見ていたが、肩をすくめてからミミに言った。
「仕方ないわね、この子危なっかしいから、ミミ、一緒に行ってあげてくれる?」
「え、こんな美人さんを紹介してくれるんですか?やったあ♪」
 彼はウキウキしていたが、世の中そんなに甘くはない。
「もちろんミミ一人じゃないわよ。もう一人、腕っぷし大保証の冒険者も紹介するわ。イザヤールさ~ん!」
 呼ばれたイザヤール、実は今まで貯蔵庫にウイスキーの樽の補給に行っていて、話の流れにさっぱりついていっていなかった。それで、大樽を肩に担ぎながら、目をぱちくりさせた。ミミが彼に寄り添う様を見て、若者はたちまちがっくりしつつも改めて頼んだ。
「はは、そーゆーことですかあ。とにかく、お願いできます?」
 まあ急ぎの仕事も無いし、イザヤールも一緒なら異存はない。ミミはクエスト「一から指輪」を引き受けた!

 依頼人の錬金術師はさっそく地図を広げて言った。
「どーせなら凄い指輪にしたいんです。目指すは『女神のゆびわ』です!」
「なんとも大胆だな・・・」
 事情をようやく飲み込んだイザヤールが思わず呟く。
「『まほうのせいすい』と『ばんのうぐすり』と『天使のすず』と『さえずりのみつ』と『おかしなくすり』と『ほしのカケラ』はたくさんあります!」
 と、錬金術師は胸を張ったが、それでも金の指輪から女神の指輪にするにはかなりビミョーである。
 ミミは他に必要な物の数を計算してみた。女神の指輪の材料の材料のそのまた材料、という感じである。更に無料で採取可能な物、という条件が加わると・・・。
「『まりょくの土』が十、『いかずちのたま』と『こおりのけっしょう』が四つずつ、『めざめの花』が二つ、『あやかしそう』が四、『かぜきりのはね』が二十四枚、『きよめの水』が十六、『命の石』が三つ・・・」
 これで計算が正しいのかいささか不安になりながら、ミミは必要な物のリストを作った。しかし、「かぜきりのはね」をこんなにたくさん確保するのはものすごく困難そうだ。その懸念を伝えると、錬金術師は自信たっぷりに答えた。
「大丈夫です!羽の持ち主の鳥の巣にはたくさん『かぜきりのはね』が使われてます!・・・ミミさんとイザヤールさんが鳥の注意を引いてくれてれば、その間にばっちり僕が巣から頂きます!」
 少々イヤな予感はするが他に方法はなさそうだ。効率的なルートを相談してから、さっそく出発することにした。
 まずエルシオン学院にキメラの翼で移動し、エルマニオン地方でこおりのけっしょうを確保した。移動に使うキメラの翼も、依頼人の自前だ。これも買わずエラフィタで拾いましたと彼は得意そうに胸を張る。それから船でアシュバル地方のいかずちのたまも採取した。
 それからカルバドに移動し、まりょくの土の一部はダダマルダ山で確保した。ついでに、カズチィチィ山できよめの水の一部を、ヤハーン湿地であやかしそうの確保もし、いよいよ懸念のかぜきりのはね採取に向かった。
「ここの鳥、けっこう凶暴だったよね・・・」実はついてきていたサンディが、ぽつりと呟く。
 木の下に散らばる羽を集めてももちろん足りないので、錬金術師は案外身軽に木によじ登って、かぜきりのはねを落とす鳥の巣を探そうとした。なんだかイヤな予感がするミミとイザヤールと、そしてサンディ。案の定、間もなく樹上から依頼人の悲鳴が響いた。
「わー!鳥出たあー!ちょちょちょちょ、デカイってヤバいですってー!」
 以前もこんなことをやったようなと思いつつイザヤールは「くちぶえ」を吹いて巨大な鳥の注意を自分に引き付け、ミミとイザヤールは錬金術師が羽を確保する間、鳥を傷つけないようにしつつのおとりを必死に続けたのだった。
 それから、アユルダーマ島に移動して残りのまりょくの土を、ベレンの岸辺に移動して残りのきよめの水を手に入れ、そしてサンマロウでめざめの花と残りのかぜきりのはねを・・・今度は幸い鳥に遭遇せずに・・・集めることができた。そこから船ではるばる南下し、ジャーホジ地方に行って命の石も無事確保し、こうしてようやく、女神の指輪を作るのに必要な材料が全て揃った!
 女神の指輪を作るには、命の指輪と天使のソーマと金塊が必要だ。そして金塊を作るにも天使のソーマが、しかも三つも必要で、その天使のソーマを作るには、一つにつきけんじゃのせいすいが二つ要る。けんじゃのせいすいは命の指輪の材料の「いのりのゆびわ」を作るのにも二つ必要なので、結局けんじゃのせいすいは計十個必要だ。
 天使のソーマの材料の一つ天使のはねも、かぜきりのはねときよめの水と天使のすずを使って作らなくてはならない。天使のはね一つにつきかぜきりのはねは三枚必要で、天使のソーマ一個につき天使のはねは二枚要る。天使のソーマは結局計四つ必要だから、天使のはねは八枚、つまりその材料のかぜきりのはねは二十四枚必要・・・普段意識していないが、改めて考えると、錬金とは気の遠くなる作業だと一同はしみじみと思った。
 依頼人は手持ちの材料と確保した材料とを組み合わせていき、ばんのうぐすりを超ばんのうぐすりに変え、せいれいせきからげんませき、天使のソーマを組み合わせて金塊へ、と段階を踏んで、ついに「女神のゆびわ」は完成した!
「すごい、本当に、お金かけてないのに金の指輪が女神の指輪にまでなったよ・・・たいへんだったけど。ありがとう!」
 依頼人の錬金術師は感動していた。
「よかったですね、こんなに頑張って作った指輪なら、きっとあなたの大切な方も喜んでくれると思うの。さあ、早く渡しに行ってあげてください」
 ミミが言うと、依頼人ははっと何かに思い当たった顔をし、叫んだ。
「あーーー!!」
「ど・・・どうしたんですか?!」
 依頼人の錬金術師は、ものすごく気まずそうな顔で答えた・・・。
「肝心の指輪を渡したい相手を・・・まだ見つけてなかったです・・・」
「・・・」
「・・・」
 ミミとイザヤールは、暫し絶句した。それからどちらからともなく吹き出し、笑い出した。依頼人も弱々しく笑ってから、ぺこぺこ頭を下げた。
「本当にすみません、すみません!お詫びとお礼を兼ねて、僕の手持ちの錬金材料を全て差し上げます」
 ミミはほしのカケラやさえずりのみつをたくさんもらった!
 まあ作った指輪は、将来渡したい相手に巡り会えれば無駄にならないから問題ないと全員で流して、一同はセントシュタインに戻った。サンディだけがぽつりと呟く。
「それでいーんかいアンタら・・・」

 ミミたちが数日ぶりにリッカの宿屋のロビーに帰ってくると、ロクサーヌがミミに声をかけてきた。
「ミミ様、先日のお客様がご注文の品を受け取りにいらっしゃいますの。そして奥様とご一緒にここリッカの宿屋でお祝いされるそうですわ」
「ああ、あの特注の指輪のおじいさんの?じゃあ奥さんも一緒にここへ来るのね☆」
 妻と共に訪れた老人はロクサーヌから特注の結婚指輪を受け取り、それから照れくさそうに妻に渡すと、彼女はしばらく言葉も無く嬉し涙を流し、そして呟いた。
「綺麗すぎて、あたしのシミとしわだらけの手にはもったいないよ、あんた・・・」
「そんなことはないぞい」老人はぶっきらぼうだがあたたかい口調で妻に言った。「この手は、わしと子供たちの為にずっと苦労してくれた勲章だ。指輪なんぞに負けてない」
 そんな老夫婦のやりとりを見つめ、錬金術師の若者はぽつりと呟いた。
「いいもんですね・・・。想いのこもった指輪って結局、いつ着けても似合うもんですね・・・。僕もあんな夫婦になれるような、運命の人を早く探さなくっちゃあ」それから、彼は少しいたずらっぽく笑って言った。「ミミさんとイザヤールさんは、あんな夫婦にもうなってる感じですね」
 そう言われて、ミミはぽうと頬を染め、イザヤールは照れくさそうに眉を僅かに上げる。そのそっと重ねた手は、二つで一組の指輪が触れ合い、星のような光を放っていた。〈了〉
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