セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

花冠

2014年06月21日 23時58分34秒 | クエスト163以降
ギリギリですが夏至祭イザ女主話。夏至祭も国によっていろいろな風習や言い伝えがあるようですね。そんな言い伝えをいくつか使ってみました。

 夏至の日に摘む薬草は、不思議な魔力を秘めていると言われる。みんなを守ってくれますように。そんな願いを込めて、ミミはいつもにも増して優しく摘んだ。夏至祭の花冠にする為の花も、たくさん集めた。
 花と薬草の束を抱えていると、清浄な香りがふわりと全身を包む。夏至の日が持つ「何かいい力」のお裾分けをしてもらえるようだと、ミミはにっこり微笑んだ。きっと夏至の女王の素晴らしい花冠に仕上がるだろう。
 今年の夏至の女王は、リッカの宿屋に泊まっていた旅のシスターだった。「当たり」の赤い実が入ったパイを口にして、今年の夏至の女王だと告げられた時のびっくりしてから頬をみるみる染めた様子は、とても可憐で綺麗だった。
 早く持って帰ろうと、ミミが立ち上がって行こうとすると、彼女の頭の上にぽふんと、花冠が落ちてきた。目蓋までずり下がってきたので、それが花冠だとわかったミミは、思わず腕の中の花束がちゃんとあるか確認してしまった。もちろん花束はある。では、誰がこの花冠を。辺りには誰も居ない筈なのに。
 振り返ると、ぽわぽわした光の輪がたくさんと、鈴を振るようなたくさんの笑い声が遠ざかっていった。今日は、人の目には見えない者たちもこの日を楽しむから、こんな不思議なことも起きるのだろう。とはいえ、ミミには常の人に見えないものが見えるから、その遠ざかっていくものを見れば、花冠の謎も決して謎ではなくなった。・・・妖精たちの、可愛いいたずら。
 笑い声の他に、ちょっと変わった予言めいたものも残して、妖精たちは飛んで行った。
『きっと後で、あなたにもう一つ花冠が贈られるから、二つの花冠を、夏至祭の後に一緒に川に流してごらんなさい。きっといいものが見られるよ』
 どうして、妖精たちのいたずらの他に、もうひとつ花冠が来るのだろう、ミミは首を傾げた。今年の夏至の女王は、私ではないのに。
 だが間もなく、妖精たちの予言の意味の一部はわかった。
「おや、誰かに先を越されたか?」
 そんな声と共に、頭上にふわりと、もうひとつ、花冠が載せられた。振り返るとそこには、愛しい人の微笑む姿。
「イザヤール様。・・・妖精さんたちの言ってたことって、このことだったんだ・・・」
「ん?なんのことだ?」
「妖精さんたちが言ってたの。私に、花冠が二つ贈られるって。一つは妖精さんたちがくれたの。・・・イザヤール様、今年の夏至の女王は私じゃないのに、どうして花冠を?」
「私にとっては」イザヤールは微笑んでさらりと言った。「どの年でも、おまえが夏至の女王だからな」
「もう・・・そんな・・・」
 ミミは赤くなってうつむき、花束で顔を隠した。

 夏至祭が終わって、名残惜しみながらもミミは二つの花冠を川に流し、イザヤールと見つめていると、二つの花冠はぴったりと寄り添い、流れて行った。
『恋人と一緒に花冠を川に流して、ぴったり寄り添って流れて行くと、その二人はずっとラブラブって、知ってた?』
 また妖精たちの声が聞こえた。それは確かにいいものを見せてもらったと、ミミとイザヤールはいつまでも寄り添って流れていく二つの花冠のように、そっと寄り添って、見えなくなるまで眺めていた。〈了〉
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