セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

小さな木の実

2017年10月23日 02時23分26秒 | 本編前
天使界師弟時代の、相変わらず両片想い話なんですがどちらかというとイザヤール様のお仕事話。人間たちに肩入れしない主義イザヤール様ですが、義務的な働きだけじゃきっと星のオーラは集まらないと思われるので、一見無駄なこととか子供に優しいこととかしてたんじゃないかな〜と勝手に妄想しました。タイトルは有名な歌とは無関係ですがちょっと意識したかもです。そして文中の犬の名前はDQ4に出てくる犬の名前ですが特に意味はありません(笑)

 今日も一日の務めを無事に終えたウォルロの守護天使イザヤールは、天使界に戻ろうとしたときにふと、守護天使像の前で幼い子供が熱心に祈っているのを見つけた。子供が一人でこんな遅い時間にと心配になって、近くに行って様子を見ると、その子供は、小さな両手で包み込むように持っていた何かを守護天使像の足元に不器用な手つきでそっと置いた。
 それは、ひと粒の団栗だった。小粒の木の実は、地面に置かれて不安定に少し転がったが、なんとか守護天使像の前に落ち着いたので、子供は安堵したらしい息を吐いた。それから彼は、空になった丸ぽちゃな手を組んで、再び祈り始めた。
「イザヤールさま、ペスタを見つけてくれて、本当にありがとうございました。お礼にぼくの宝物、お供えします」
 ペスタとはこの子供の家の飼い犬で、今日の日中に村の外に迷い出てしまい、魔物に追いかけ回されていたところをイザヤールが保護して連れ帰ってやったのだった。
 子供は祈り終えると、家に向かって歩き出した。イザヤールは、彼が家に着くまで付き添ってやり、無事に家の中に入ったのを確かめてから、守護天使像の側に戻った。そこに置かれた幼子らしい感謝の気持ちを眺め、彼は顔をかすかに和ませた。
 このひと粒の団栗が、あの子供にとってはただの木の実でないことも、イザヤールは知っていた。子供の多忙な父親が、山へ出かけた日に、珍しく子の為に拾ってやってきたもので、村周辺のものとは色艶がいくらか異なっていて美しかった。子供にとっては父親がわざわざ山奥から持ってきてくれたことが本当に嬉しかったようで、ガラス玉や鉱石のかけら等と一緒に箱に大切にしまわれていた。
 そんな大切なものを、とイザヤールは僅かに苦笑した。犬を送り届けたときの喜びと大きな感謝によってできた星のオーラをもう受け取っているのだから、礼など必要ないというのに。天使の務めは星のオーラを得ることなので、それ以外の人間からの供物は、務めの意味からだけ考えれば無用とも言えた。
 だが、仲間たちから堅物だの朴念仁だの言われているイザヤールも、幼い子供のせいいっぱいのお礼の気持ちを無下にするほど不粋ではなかった。月明かりで宝石のように光る木の実を拾い上げると、彼は翼を広げて星空へと飛んだ。

 天使界に戻り長老への報告を済ませ、世界樹に星のオーラを捧げると、イザヤールは自室に向かった。歩きながら彼は、この可愛らしい供物をミミに見せたらどんな顔をするだろうと、密かに想いを寄せる弟子のことを思った。あの美しい瞳を輝かせて、愛らしい笑みを浮かべてくれるだろうか。そういえば、とイザヤールは手のひらを広げて木の実を見つめた。この色合いと光沢は、彼女の艶やかな髪を思わせた。
 自室に戻ると、ミミは暖炉の前に膝を抱えて座り、炎とやかんの吹き出す揺らめく蒸気に見入っているところだった。濃い紫の瞳は、炎を映してより煌めき、グラデーションを描いている。何を思っているのだろうと、誰かを想っているのだろうかと、彼女のそんな瞳を見る度に、イザヤールの心はざわつき、揺れる。
 ミミは師匠が帰ってきたことに気が付くと慌てて立ち上がった。ぼんやりし過ぎて、しかもイザヤール様のことを想ってぼんやりし過ぎていたなんて、しかもそこへご本人が帰っていらしてたなんてと、みるみる頬が染まり、あたふたしてしまう。それでも、やっぱりとても嬉しくて、彼女は少し恥ずかしそうな笑顔で言った。
「おかえりなさい、イザヤール様」
「ああ、ただいま、ミミ」
 それからミミは、温かい飲み物の仕度を始め、卓についたイザヤールは、その様子を心和ませながら眺めた。
 カップを手に持つ前にイザヤールは、卓上にころんと小さな木の実を転がして、言った。
「ミミ、土産だ」
 思い浮かべていた通り、いや思い浮かべていたよりもっと愛らしい表情で、ミミの瞳が再びグラデーションを描いた。
「綺麗・・・」
 団栗を手に入れた経緯をイザヤールが話している間、ミミは楽しんで聞き入りながらそれを眺め、その滑らかな表面を指先でそっとなでたり、灯りに向かってかざして光沢にみとれたりした。
「何か作ろうかな、でも・・・これ、その男の子にとって、宝物なんですよね・・・」
 呟いてミミは、手のひらの小さな木の実をじっと見つめた。イザヤールはそんな彼女を見て、だしぬけに言った。
「ミミ、明日は、地上での実習にしよう」
「私も今、お供させてくださいってお願いしようって思っていたんです・・・!ありがとうございます」
 ミミは団栗を握りしめ、輝くような笑顔を浮かべた。おそらく同じことを思いついてくれたであろう師匠に、感謝と、更なる密かな愛情を、溢れそうに抱いて。

 翌日、ミミとイザヤールはウォルロ村を一緒に訪れて、村の木陰が必要そうな場所に、例の団栗を埋めた。ミミはそこに清らかな水をかけてやりながら、呟いた。
「団栗をそのままで持っていると、いつか朽ちてしまうけれど、こうすればもしかしたら・・・毎年、見られるようになるかもしれないんですね・・・私も、これをくれた子も。楽しみです」
「ああ、そうだな」
 おまえがウォルロの守護天使になる頃には、大木になっているだろうか。そう内心呟いて、イザヤールは静かに微笑んだ。〈了〉
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2 コメント

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秋の小さな贈り物 (神々麗夜)
2017-10-23 23:55:42
団栗のお供え物ですか〜子供らしくて可愛らしくてほっこりしました(^ ^)
そしてぼんやりしているミミちゃんが想う『誰か』に妬くイザヤール様。(ニヤニヤ
『自分なんか相手に振り向いてもらえない、仮に振り向いてくれても自分なんか相手に釣り合わない』とマイナス思考だったのが今じゃ
『自分が相手以上に夢中になれる人も相手が自分以上に夢中になれる人はいない』オーラ出てますよねwまぁ、美男美女の依頼人が現れて少し焦ることもありますがwそしてそんなパートナーの焦りに『そんな筈無いのに』な二人


ククール「何?団栗?」
リリン「綺麗だから髪飾り作ろうと思って。
…これヒビ入ってる…ククール、食べる?」
クク「何でだよ⁉︎俺はリスか⁉︎」
リリ「フフッ、物欲しそうに見てたから」
クク「リリンが欲しいなって…
リリ「な…何言ってんのよ///」
クク「団栗って固い殻で覆われてるけど…すぐ割れるよな」
リリ「え?そうね…」
クク「リリンに似てるよな…本当は、繊細で寂しがり屋で甘えん坊なくせにかっこつけて強がってる所とか…」
リリ「…繊細なのに強がってるのはククールも同じでしょ」
その頃…
レレン「どんぐり、おいしそう〜バリボリ」
シェルル「団栗は生で食べちゃダメだよっ!しかも殻ごと⁉︎」
レレン、シェルルは自然体、イザやんはよくわからんです…
すっかり秋ですよね〜 (津久井大海)
2017-10-24 12:58:44
神々麗夜様

いらっしゃいませこんにちは☆ほっこり&ニヤニヤ頂きました〜!津久井のテンションが上がった!

互いの気持ちを確かめることもできないまま悩み続けていたのが、今や誰もが呆れるようなバカップルに(笑)いやあ、人って成長できるもんですね(そんな話だったか)

華やかな美人なのに素朴な団栗を髪飾りにするのも好きなそちらの女主さんステキです☆
そしてさらっと君が欲しいとか言えて、団栗に喩えてもかっこいい口説き言葉になるイケメン☆イケメンは正義か!正義なんでしょうね〜(笑)
あっさり固い殻で繊細な中身を覆っているけどその殻も案外脆くて、って相手を互いによく見ていますね、なんか大人の関係☆

あわわ、団栗はそのまま食べたらひとかじりで「渋っ、まず〜!」ですよ〜(汗)
自然体も本人は楽し、ですよね。師匠は・・・何があったんでしょうか・・・。

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