やはり土曜昼更新か〜い!の追加クエストもどき。ヒミツのポエム手帳を巡るどたばた話。11のはずかしい呪いでもポエム関連ありましたが黒歴史になるかは才能次第なのかそれとも?
今日もあちこち出かけて忙しかったミミは、リッカの宿屋のロビーでようやくひと息つけたところだった。座り心地のいい椅子にちょっとくたりと腰掛けていると、リッカがお疲れさま、と言って温かいココアと胡桃のクッキーを出してくれた。
「ありがとう、リッカ」
ミミはふわりと顔をほころばせてリッカに微笑み、両手でカップを包み込むように持って外気でかじかんだ手を温めた。とろりとカカオの濃いココアは、リッカ特製の胡桃クッキーとよく合う。体も心も暖まり、ミミはすっかり寛いだ夢見るような表情でロビーを見渡した。
すると、厳つい顔と体と装備の如何にも武闘家然とした大柄な男が、その体格に似合わない遠慮がちな動きでミミのテーブルの方に歩み寄ってきた。そして、うっとりとした口調で言った。
「可憐な宿屋の女主人に出迎えられる可憐な踊り子との間のさりげなくわかる篤い友情、そしてその友情によって得られる寛ぎのひととき・・・。実に美しい、まさに詩そのものだ・・・」
ミミがきょとんとしていると、男は慌てて謝った。
「これは失礼した。実は、拙者、こう見えて詩を少々たしなんでおってな。美しい光景を見ると、つい詩にしたくなってしまう趣味があるのだ」
「それはすてきなご趣味ですね」
ミミが感心して言うと、男は溜息をついた。
「皆がそう思ってくれるなら良いのだが。実はその趣味に関して困ったことが起きたのだ」
「どうしたんですか?」
「拙者は思いついた詩を手帳にメモしているのだが、その手帳をうっかりある場所に置き忘れてきてしまったのだ。場所はわかっているのだが・・・中を誰かに読まれていたらと思うと、恥ずかしくて取りに行けない・・・。絶対に笑われるとわかっているからな」
「そんなことないと思いますけれど?戦士系も兼ねた吟遊詩人さんもたくさん居ると思いますし」
ミミが言うと、男はぶんぶんと首を振った。
「いやいやいや!・・・実は、その・・・拙者の詩は、乙女の気持ちになりきって書いているものなのだ・・・。書いているのが自分だとバレたら恥ずかしくて死ぬくらいに乙女心が炸裂している。そこでだ!どこからどう見ても麗しく可憐な乙女の中の乙女である貴殿なら、どんなに乙女心炸裂の詩を書いていても決して違和感はあるまい。貴殿に、代わりに手帳を取ってきてもらいたい。どうか頼まれてはくれぬか?急ぎではないから」
「は、はい、それは構いませんけれど・・・」
ミミはクエスト「はずかしい忘れ物」を引き受けた!
「それで、どこにお忘れになったんですか?」
ミミが尋ねると、男は言いにくそうに口ごもっていたが、やがてしぶしぶ白状した。
「グビアナのダンスホールだ・・・」
グビアナのダンスホールにポエム帳忘れる乙女なんているかなあ・・・とミミは「つっこむところそこっ?!」とつっこまれそうなことを思ったが、ともかく取りに行くことを約束した。
それから間もなく、鍛冶屋に金属加工に行っていたイザヤールも帰ってきたので、ミミは頼まれたクエストのことを話した。
「それで、夕食前にルーラでひとっ飛びに取りに行こうと思っているの。イザヤール様、ゆっくりしててね」
「それならいっそのこと、用事が済んだらグビアナで一緒に夕食にしないか?久々に夜のバザールも見たいしな」
クエストのおかげで、イザヤールとの思いがけないグビアナでの夜デートになりそうな予感に、ミミは大喜びでその提案に乗った。さっそく二人は、ルーラでグビアナに向かった。
とりあえず用事を早く済まそうと、ミミは到着後すぐにダンスホールに向かった。イザヤールは宿屋の手配を済ませてからダンスホールまで迎えに来てくれることになった。
ダンスホールの支配人や酒場のマスターは、忘れ物の手帳について尋ねてみても心当たりが無いようだったので、楽屋に行って踊り子たちに聞いてみると、全員で「ああアレ!」と頷いて、口々に情報が飛び交い始めた。
「あのすっごい泣けるポエムの手帳のこと?感激してみんなで回し読みしちゃった〜」
「うんうん、読んでてすっごく『わかるわかる!』って気持ちになるのよねー。あの手帳、今誰が持ってるんだっけ?」
「え〜と、確かサンマロウに出張に行ってるビビアンじゃなかった?」
それを聞いたミミは慌てた。
「え・・・。ということは、今ここには無いってこと?」忘れ物持ってっちゃダメでしょ、と言いたいところだが、カラコタ橋辺りだったらその理屈は通用しないだろう。
「慌てなくても大丈夫よ☆ビビアンは明日の朝帰ってくるから。今夜はグビアナでゆっくりして待ってれば?」
それでミミは安心し、依頼人には申し訳ないが今夜は残りの予定通りサンディ言うところの「グビアナでおデート」することに決めた。そこへイザヤールが迎えに来たので、ミミは彼に手帳の行方を話しつつ、宿屋へと向かった。
翌朝、ミミとイザヤールがすっかりリフレッシュした気分でダンスホールに行ってみると、ビビアンは帰ってきていたが手帳は帰ってきていなかった。
「ごめんね!サンマロウの宿屋で寝る前に読んでいたら、うっかり忘れてきちゃった!ベッドのサイドボードに置いた記憶があるから、まだそこにあるか、宿屋の人が預かっているんじゃない?」
そこでミミとイザヤールは、急いでサンマロウに向かった。宿屋に駆け込んで、昨夜泊まったグビアナのダンサーが手帳を忘れていったと思うんですけれど、と尋ねると、宿屋の主人は手帳のことは知らないらしかったが、従業員を集めて心当たりが無いか聞いてくれた。
だが、全員知らないと答えたので、ミミは困ってしまった。しかし、一人様子が何となくおかしいメイドが居たので、後でそっと呼び出して聞いてみた。
「あの、何だかご心配そうな様子ですけれど、何かお心当たりがあったら、教えてくださいませんか?宿屋のご主人には内緒にしておきますから」
するとメイドは、泣きそうな顔でもじもじしていたが、とうとう白状した。
「ごめんなさい!部屋のお掃除中になんだろうって思って中を見てみたら、あんまりにステキなポエムが書いてあったから、ゆっくり読みたくなって持ち出しちゃいました!こんなこと旦那様にバレたら、世界第三位の宿屋の評判を更に落とすって叱られてしまいます!お願いです、どうか内緒にして・・・!」
ミミとしては手帳が返ってくればそれで構わなかったが、これほどまでに人々の心を惑わすなんて、いったいどんなにステキな詩なのかとは少々気になった。
「わかりました、内緒にしますから、お返しください。持ち主の方の大切な手帳なんですから」
「それが、その・・・」メイドは、更に泣きそうになって縮こまった。「あなた方がいらしたのを見て、きっと手帳のことだと思って、従業員用タンスに隠してあるのを見つかったらまずいと思って、急いで持ち出して友達に預けちゃいました・・・!」
「と、友達って誰に?」
「花売り娘の一人です。今頃ワゴンで店番していると思います」
「わかりました。でも、もう二度とお客さんの忘れ物を黙って持っているなんて、しないでくださいね」
「はい、絶対にしません!」
そこでミミとイザヤールは宿屋を出て花売りワゴンに向かった。
「このパターン、悪い予感がするな」と言いつつ、イザヤールの顔は笑っている。お約束展開が続いて逆に面白くなっているらしい。だが、ミミの頭を軽くぽんぽんと叩いて、申し訳なさそうに続けて言った。「昨夜、夕食前にひとっ走りサンマロウに行って回収しようと言ってやればよかったな。私が居るから、わざわざサンマロウに行くのをやめたのだろう?おまえ一人だったら、昨夜のうちにさっさと取りに行っていた筈だ」
「イザヤール様は悪くないもの、ゆうべはお楽しみしちゃった私が悪いんだもの・・・」
「え、えーと、それは・・・」
「ごはんおいしかったし、バザールも楽しかったし・・・」
「あ、お楽しみってそれか・・・」
とか何とか言っている間に花売りワゴンに着いたので、ミミはもっとお楽しみだったことにうっかり言及しなくて済んだ。だが、花売りワゴンに居たのは、臨時で店番を頼まれたらしい、娘ではなくどこからどう見ても男の子だった。
「ねーちゃんなら、町の外にゆめみの花とめざめの花仕入れに行ったよ〜」
イヤな予感的中しつつある。ミミとイザヤールはダッシュで町の外に向かった。
サンマロウの町を出て間もなく、商品集めに出た花売り娘を見つけたが、案の定というか、彼女もやはりおろおろしていた。彼女は、ミミとイザヤールの姿を見るなり言った。
「どうしよう!大事な物を、ピンクモーモンに取られちゃった!友達からの預かり物なのに〜!」
「それって、もしかして・・・」
「詩の書かれた手帳か?」
「そうなの、なんで知ってるの?まあそんなことより、どうしよう・・・!」
どうしようも何も、取り返すしかない。ミミとイザヤールは、ピンクモーモンの飛んで行った方向を聞いて、そちらに向かって走った。どうやらゆめみの花が咲く岬に向かったらしい。やがて、茶色の革製表紙の手帳らしきものを持ったピンクモーモンがふよふよと飛んでいるのを見つけた。ときどき軽くかじかじと噛んでいるところをみると、中の詩が気になるというよりは、チョコレートか何かと間違えて取ったというのが真相らしい。
ミミとイザヤールは顔を見合わせて頷き、ミミはピンクモーモンからわざと離れて、岬の縁を迂回するようにして突端に向かった。彼女がピンクモーモンに先回りしたのを見届けると、イザヤールは猛然とピンクモーモンを追い始めた。
ピンクモーモンは、どこからどう見ても文句無しに強そうな冒険者が追いかけてくるのを見て仰天した。慌てて全力飛行を開始したが、それでも手帳はしっかり持ったままだ。
きょろきょろイザヤールを振り返ってばかりだったピンクモーモンは、ようやく正面でミミが待ち構えていることに気付いた。進退絶たれ停止するかと思いきや、ピンクモーモンはそのまま直進して、庇護を求めるように彼女の胸に飛び込んだ。ミミが抱っこしてやると、ピンクモーモンはすりすりとミミに甘えた。手帳はぽとりと地面に落ちる。
イザヤールは手帳を拾い上げ、笑った。
「確かに、私に捕まるよりはミミの方がいいだろうな」
それから彼は、おまえがまだ子供の魔物だから許してやるが、大人だったらギガスラッシュものだぞと、ピンクモーモンの頭を軽く指で小突いた。ピンクモーモンがミミのおどりこのドレスの胸元に相変わらずぴったりくっついていたからである。ピンクモーモンはきょとんとつぶらな目でイザヤールを見上げてから、ふよふよと飛んでいった。
こうしてようやく手帳を取り返した!ミミは本当に依頼人の手帳か確認する為にぱらぱらとページをめくったが、中身をしっかり読むのは遠慮した。依頼人が恥ずかしさで困惑するだろうと思ったからである。たくさんの乙女たちの共感を呼ぶポエムとはどんなものか気にはなったが。
「それに私、いつもイザヤール様に、とても綺麗な詩のような言葉で褒めてもらえているもの♪」
「そ、そうか?私には自覚は無いのだが・・・」
律義に花売り娘や宿屋のメイド、踊り子たちに手帳を取り戻したことを報告してから、ミミとイザヤールはセントシュタインに戻り、依頼人に手帳を渡した。
「おお、かたじけない!それで、その・・・よもや中身をしっかり読んではいないであろうな?殊に、そちらの若者に読まれたとあっては、男として拙者は・・・」
「大丈夫です、私たちは読んでいません。・・・何人かの乙女たちは読んで感激したそうですけれど」
ミミが踊り子たちやメイドが読んで感激したことを説明すると、依頼人は恥ずかしさで悶絶したが、ちょっと嬉しそうだった。依頼人はお礼にと「ごうかなクッキー」をくれて去っていった。もしかしたら今後、名も無き「乙女」の詠んだ詩が、流行ることがあるのかもしれない。〈了〉
今日もあちこち出かけて忙しかったミミは、リッカの宿屋のロビーでようやくひと息つけたところだった。座り心地のいい椅子にちょっとくたりと腰掛けていると、リッカがお疲れさま、と言って温かいココアと胡桃のクッキーを出してくれた。
「ありがとう、リッカ」
ミミはふわりと顔をほころばせてリッカに微笑み、両手でカップを包み込むように持って外気でかじかんだ手を温めた。とろりとカカオの濃いココアは、リッカ特製の胡桃クッキーとよく合う。体も心も暖まり、ミミはすっかり寛いだ夢見るような表情でロビーを見渡した。
すると、厳つい顔と体と装備の如何にも武闘家然とした大柄な男が、その体格に似合わない遠慮がちな動きでミミのテーブルの方に歩み寄ってきた。そして、うっとりとした口調で言った。
「可憐な宿屋の女主人に出迎えられる可憐な踊り子との間のさりげなくわかる篤い友情、そしてその友情によって得られる寛ぎのひととき・・・。実に美しい、まさに詩そのものだ・・・」
ミミがきょとんとしていると、男は慌てて謝った。
「これは失礼した。実は、拙者、こう見えて詩を少々たしなんでおってな。美しい光景を見ると、つい詩にしたくなってしまう趣味があるのだ」
「それはすてきなご趣味ですね」
ミミが感心して言うと、男は溜息をついた。
「皆がそう思ってくれるなら良いのだが。実はその趣味に関して困ったことが起きたのだ」
「どうしたんですか?」
「拙者は思いついた詩を手帳にメモしているのだが、その手帳をうっかりある場所に置き忘れてきてしまったのだ。場所はわかっているのだが・・・中を誰かに読まれていたらと思うと、恥ずかしくて取りに行けない・・・。絶対に笑われるとわかっているからな」
「そんなことないと思いますけれど?戦士系も兼ねた吟遊詩人さんもたくさん居ると思いますし」
ミミが言うと、男はぶんぶんと首を振った。
「いやいやいや!・・・実は、その・・・拙者の詩は、乙女の気持ちになりきって書いているものなのだ・・・。書いているのが自分だとバレたら恥ずかしくて死ぬくらいに乙女心が炸裂している。そこでだ!どこからどう見ても麗しく可憐な乙女の中の乙女である貴殿なら、どんなに乙女心炸裂の詩を書いていても決して違和感はあるまい。貴殿に、代わりに手帳を取ってきてもらいたい。どうか頼まれてはくれぬか?急ぎではないから」
「は、はい、それは構いませんけれど・・・」
ミミはクエスト「はずかしい忘れ物」を引き受けた!
「それで、どこにお忘れになったんですか?」
ミミが尋ねると、男は言いにくそうに口ごもっていたが、やがてしぶしぶ白状した。
「グビアナのダンスホールだ・・・」
グビアナのダンスホールにポエム帳忘れる乙女なんているかなあ・・・とミミは「つっこむところそこっ?!」とつっこまれそうなことを思ったが、ともかく取りに行くことを約束した。
それから間もなく、鍛冶屋に金属加工に行っていたイザヤールも帰ってきたので、ミミは頼まれたクエストのことを話した。
「それで、夕食前にルーラでひとっ飛びに取りに行こうと思っているの。イザヤール様、ゆっくりしててね」
「それならいっそのこと、用事が済んだらグビアナで一緒に夕食にしないか?久々に夜のバザールも見たいしな」
クエストのおかげで、イザヤールとの思いがけないグビアナでの夜デートになりそうな予感に、ミミは大喜びでその提案に乗った。さっそく二人は、ルーラでグビアナに向かった。
とりあえず用事を早く済まそうと、ミミは到着後すぐにダンスホールに向かった。イザヤールは宿屋の手配を済ませてからダンスホールまで迎えに来てくれることになった。
ダンスホールの支配人や酒場のマスターは、忘れ物の手帳について尋ねてみても心当たりが無いようだったので、楽屋に行って踊り子たちに聞いてみると、全員で「ああアレ!」と頷いて、口々に情報が飛び交い始めた。
「あのすっごい泣けるポエムの手帳のこと?感激してみんなで回し読みしちゃった〜」
「うんうん、読んでてすっごく『わかるわかる!』って気持ちになるのよねー。あの手帳、今誰が持ってるんだっけ?」
「え〜と、確かサンマロウに出張に行ってるビビアンじゃなかった?」
それを聞いたミミは慌てた。
「え・・・。ということは、今ここには無いってこと?」忘れ物持ってっちゃダメでしょ、と言いたいところだが、カラコタ橋辺りだったらその理屈は通用しないだろう。
「慌てなくても大丈夫よ☆ビビアンは明日の朝帰ってくるから。今夜はグビアナでゆっくりして待ってれば?」
それでミミは安心し、依頼人には申し訳ないが今夜は残りの予定通りサンディ言うところの「グビアナでおデート」することに決めた。そこへイザヤールが迎えに来たので、ミミは彼に手帳の行方を話しつつ、宿屋へと向かった。
翌朝、ミミとイザヤールがすっかりリフレッシュした気分でダンスホールに行ってみると、ビビアンは帰ってきていたが手帳は帰ってきていなかった。
「ごめんね!サンマロウの宿屋で寝る前に読んでいたら、うっかり忘れてきちゃった!ベッドのサイドボードに置いた記憶があるから、まだそこにあるか、宿屋の人が預かっているんじゃない?」
そこでミミとイザヤールは、急いでサンマロウに向かった。宿屋に駆け込んで、昨夜泊まったグビアナのダンサーが手帳を忘れていったと思うんですけれど、と尋ねると、宿屋の主人は手帳のことは知らないらしかったが、従業員を集めて心当たりが無いか聞いてくれた。
だが、全員知らないと答えたので、ミミは困ってしまった。しかし、一人様子が何となくおかしいメイドが居たので、後でそっと呼び出して聞いてみた。
「あの、何だかご心配そうな様子ですけれど、何かお心当たりがあったら、教えてくださいませんか?宿屋のご主人には内緒にしておきますから」
するとメイドは、泣きそうな顔でもじもじしていたが、とうとう白状した。
「ごめんなさい!部屋のお掃除中になんだろうって思って中を見てみたら、あんまりにステキなポエムが書いてあったから、ゆっくり読みたくなって持ち出しちゃいました!こんなこと旦那様にバレたら、世界第三位の宿屋の評判を更に落とすって叱られてしまいます!お願いです、どうか内緒にして・・・!」
ミミとしては手帳が返ってくればそれで構わなかったが、これほどまでに人々の心を惑わすなんて、いったいどんなにステキな詩なのかとは少々気になった。
「わかりました、内緒にしますから、お返しください。持ち主の方の大切な手帳なんですから」
「それが、その・・・」メイドは、更に泣きそうになって縮こまった。「あなた方がいらしたのを見て、きっと手帳のことだと思って、従業員用タンスに隠してあるのを見つかったらまずいと思って、急いで持ち出して友達に預けちゃいました・・・!」
「と、友達って誰に?」
「花売り娘の一人です。今頃ワゴンで店番していると思います」
「わかりました。でも、もう二度とお客さんの忘れ物を黙って持っているなんて、しないでくださいね」
「はい、絶対にしません!」
そこでミミとイザヤールは宿屋を出て花売りワゴンに向かった。
「このパターン、悪い予感がするな」と言いつつ、イザヤールの顔は笑っている。お約束展開が続いて逆に面白くなっているらしい。だが、ミミの頭を軽くぽんぽんと叩いて、申し訳なさそうに続けて言った。「昨夜、夕食前にひとっ走りサンマロウに行って回収しようと言ってやればよかったな。私が居るから、わざわざサンマロウに行くのをやめたのだろう?おまえ一人だったら、昨夜のうちにさっさと取りに行っていた筈だ」
「イザヤール様は悪くないもの、ゆうべはお楽しみしちゃった私が悪いんだもの・・・」
「え、えーと、それは・・・」
「ごはんおいしかったし、バザールも楽しかったし・・・」
「あ、お楽しみってそれか・・・」
とか何とか言っている間に花売りワゴンに着いたので、ミミはもっとお楽しみだったことにうっかり言及しなくて済んだ。だが、花売りワゴンに居たのは、臨時で店番を頼まれたらしい、娘ではなくどこからどう見ても男の子だった。
「ねーちゃんなら、町の外にゆめみの花とめざめの花仕入れに行ったよ〜」
イヤな予感的中しつつある。ミミとイザヤールはダッシュで町の外に向かった。
サンマロウの町を出て間もなく、商品集めに出た花売り娘を見つけたが、案の定というか、彼女もやはりおろおろしていた。彼女は、ミミとイザヤールの姿を見るなり言った。
「どうしよう!大事な物を、ピンクモーモンに取られちゃった!友達からの預かり物なのに〜!」
「それって、もしかして・・・」
「詩の書かれた手帳か?」
「そうなの、なんで知ってるの?まあそんなことより、どうしよう・・・!」
どうしようも何も、取り返すしかない。ミミとイザヤールは、ピンクモーモンの飛んで行った方向を聞いて、そちらに向かって走った。どうやらゆめみの花が咲く岬に向かったらしい。やがて、茶色の革製表紙の手帳らしきものを持ったピンクモーモンがふよふよと飛んでいるのを見つけた。ときどき軽くかじかじと噛んでいるところをみると、中の詩が気になるというよりは、チョコレートか何かと間違えて取ったというのが真相らしい。
ミミとイザヤールは顔を見合わせて頷き、ミミはピンクモーモンからわざと離れて、岬の縁を迂回するようにして突端に向かった。彼女がピンクモーモンに先回りしたのを見届けると、イザヤールは猛然とピンクモーモンを追い始めた。
ピンクモーモンは、どこからどう見ても文句無しに強そうな冒険者が追いかけてくるのを見て仰天した。慌てて全力飛行を開始したが、それでも手帳はしっかり持ったままだ。
きょろきょろイザヤールを振り返ってばかりだったピンクモーモンは、ようやく正面でミミが待ち構えていることに気付いた。進退絶たれ停止するかと思いきや、ピンクモーモンはそのまま直進して、庇護を求めるように彼女の胸に飛び込んだ。ミミが抱っこしてやると、ピンクモーモンはすりすりとミミに甘えた。手帳はぽとりと地面に落ちる。
イザヤールは手帳を拾い上げ、笑った。
「確かに、私に捕まるよりはミミの方がいいだろうな」
それから彼は、おまえがまだ子供の魔物だから許してやるが、大人だったらギガスラッシュものだぞと、ピンクモーモンの頭を軽く指で小突いた。ピンクモーモンがミミのおどりこのドレスの胸元に相変わらずぴったりくっついていたからである。ピンクモーモンはきょとんとつぶらな目でイザヤールを見上げてから、ふよふよと飛んでいった。
こうしてようやく手帳を取り返した!ミミは本当に依頼人の手帳か確認する為にぱらぱらとページをめくったが、中身をしっかり読むのは遠慮した。依頼人が恥ずかしさで困惑するだろうと思ったからである。たくさんの乙女たちの共感を呼ぶポエムとはどんなものか気にはなったが。
「それに私、いつもイザヤール様に、とても綺麗な詩のような言葉で褒めてもらえているもの♪」
「そ、そうか?私には自覚は無いのだが・・・」
律義に花売り娘や宿屋のメイド、踊り子たちに手帳を取り戻したことを報告してから、ミミとイザヤールはセントシュタインに戻り、依頼人に手帳を渡した。
「おお、かたじけない!それで、その・・・よもや中身をしっかり読んではいないであろうな?殊に、そちらの若者に読まれたとあっては、男として拙者は・・・」
「大丈夫です、私たちは読んでいません。・・・何人かの乙女たちは読んで感激したそうですけれど」
ミミが踊り子たちやメイドが読んで感激したことを説明すると、依頼人は恥ずかしさで悶絶したが、ちょっと嬉しそうだった。依頼人はお礼にと「ごうかなクッキー」をくれて去っていった。もしかしたら今後、名も無き「乙女」の詠んだ詩が、流行ることがあるのかもしれない。〈了〉
ピンモー「これおいしくないんだモン…
いやいや!ミミちゃん、カラコタじゃなくてグビアナだからね、ちゃんと人の物勝手に持ち出しちゃ駄目って注意しようよ。
ピンモーにすらプチ嫉妬するイザヤール様w
このピンクモー、女の子だったりして
戦士不遇時代でずっと戦士だった人猛者というか地雷でしたね。ただ戦士の勇敢スキルの
HPや力上昇は重要ですのでそれを目当てに育成する人は多かったです
リリン「ミミってば、読んじゃえば良かったのに、つまらないわね」
ククール「詩人な武闘家ねぇ、人は見かけによらないな」
リリ「女の子達に書いたのは厳つい武闘家の男って教えたらどんな反応するのかしら…あら?
シェルル「なんで母さんは捨てた筈のポエム帳なんか贈って来たんだ…もし、リリンやククールに見られ…ってうわぁ⁉︎」
リリ「ポエム?…フフ、面白そうね
クク「お前も結構、ロマンチストなんだな
シェルルは超恥ずかしいポエム帳を取り上げられた!
リリ「鍵がかかってるけど最後の鍵で…
シェ「やめてぇ!イヤー!きゃー!」
リリ「さて、何が書いて…って…」
クク「どうした?うわ…汚い字…」
リリ「読めないじゃないっ!」
クク「散々期待させやがって!
シェ「なんで僕が怒られるんだよー(泣
字は丁寧に書きましょう(そこ⁉︎
いらっしゃいませこんにちは☆はい、サンマロウで止まって良かったです。延々長くなるパターン怖い。
ご安心ください、後でグビアナのダンサーさんたちはオーナーに厳重注意された模様です。
そうですよね、女の子ピンクモーモンである可能性を忘れているらしいイザヤール様ですが、たぶんオスだと直感したんだと思います(笑)
戦士一筋な方は猛者ではなく地雷でしたか〜。何となく想像つきますが(汗)
乙女たち、実物を見たらがっかりの可能性が高いと思います。勝手にイメージして勝手にがっかりするのが人間ってヤツさとはぐれメタルも言ってました(嘘)
お母さん、たぶん実家の片付けしていて、大切そうな本が出てきたので送ってくれたんでしょうね(笑)そしてまさかの悪筆により読まれるのを回避とは、う〜ん、読まれたのとどちらが恥ずかしかったんでしょう・・・。