セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

マッチ売りのお手伝い

2016年12月24日 18時50分52秒 | クエスト184以降
遅くなりましたが何とか書けましたぜーはーの追加クエストもどき。マッチ売りの少女ってそういえばクリスマスの話だったなと思い出してできた話。元ネタのマッチ売りの少女が、この話のくらいたくましかったらあんな悲しいお話にならなかっただろうなと思います。童話としてはアレですが。

 カラコタ地方には珍しく、雪の降る寒い晩だった。サンディのネイル関係の用事に付き合ってカラコタ橋に来たミミは、彼女の用が済むまで、キャプテン・メダルのところでお茶に呼ばれてのんびりしていた。そして待ち合わせの時間近くになって、集合場所のひみつの店に向かうことにした。
 店に行く前にミミはふと橋の上を眺めてみた。すると、この雪なのに、ぼろぼろの粗末な服にやはり壊れそうなくらい古びたサンダルしか身に着けていない女の子が、橋の真ん中に立っていた。腕には籠を提げていて、どうやらその中のマッチを売っているらしいが、ここカラコタ橋で首尾よく売れる筈もない。女の子は帽子すらかぶっていないので、その金髪にも雪が積もっていた。
 守護天使だった経験上、薄っぺらい同情は一時しのぎにしかならないとよくわかっているミミだが、それでもその女の子に歩み寄って、こう言わずにはいられなかった。
「マッチをください・・・籠の中に入っている全部」
 女の子はそれを聞いて顔をぱっと輝かせた。痩せ過ぎてはいるが、とても可愛らしい顔立ちをしている。ミミは、その女の子の綺麗な金髪とやつれ過ぎているような顔色や目の下の隈を見てちょっと首を傾げたが、それでも彼女の言う金額を支払った。すると女の子は、籠ごとミミにマッチを渡して、切なくなるような笑顔で言った。
「ありがとう、おねえさん。おうちにお金を持って帰らないとお父さんにぶたれるから、怖くて帰れなかったの。これで、今日は帰れるわ。お父さんに、お酒も買っていけるし」
「そう・・・」
 ミミは余計な同情は口に出さず、ただ頷いた。それでは、いくらお金を渡したとしても、マッチの代金は少女の父親の飲み代に変わってしまうだけなのかもしれない。
 女の子が行ってしまってミミがしばらく橋の上で考え込んでいた。

 ミミが橋の上で考え込んでいた頃、カラコタ橋の酒場に、先ほどのマッチ売りの女の子が現れた。彼女は歩きながら顔をハンカチで拭いていて、そうすると蒼白い顔色や目の下の隈は消えて、わりと元気そうに見えた。彼女は酒場に入るなり、先ほどの弱々しい声からうって変わった威勢のいい声で、ウィスキーのロックを注文して一気に空けた。
「何よ、今日は景気いいじゃない」
 酒場の女主人―ちょっと前まではエルシオン学院の生徒だった―は、怪訝そうに声をかけた。
「えへへ、お人好しのカモに、マッチ全部売りつけてやったんだ☆あたしのこと、哀れなガキだと思い込んだみたいでさ。あ〜、ちびでスレンダー体型でよかった〜♪ハタチ過ぎてるなんて誰も思わないもんね?」
 女の子は―実際は子供でないらしかった―そう言って笑い、また同じ物を注文した。
「そりゃメーキャップうまいからでしょ」酒場の女主人はおかわりを注いでやりながら言った。「私が言うのもなんだけど、その才能、セコいサギじゃなくて他に活かせばいいのに」
「お説教はたくさんよ!あんたも、さっきのお人好しのコも、根っこは一緒ね。お嬢さん育ちなクセに面白半分にこんなとこに来て、あたしたちみたいな連中を笑ってんでしょう。そんなお嬢さん方からちょっぴりだけお金もらって、イイコトした、って優越感に浸らせてやってんだから、別にいいじゃない!」
 マッチ売りが声を荒げると、酒場の女主人は肩をすくめた。
「はいはい。早くも酔ったわね。それにしても、あんたの今日のカモ、女の子だったわけ?ここに来る女の子がただのお嬢さんなわけないでしょ、後で痛い目に遭うかもよ」
「そんなことないわよ〜、全身からお人好しオーラ溢れてたんだから!キレイな濃い紫の瞳しちゃってさ、『せいれいのほうい』なんか着ちゃって、済ましかえって・・・。よ〜し、あの法衣やアクセサリーも巻き上げてやるわっ」
 そう言うとマッチ売りは、カウンターに代金を叩きつけて、出て行ってしまった。酒場の女主人は呟いた。
「キレイな濃い紫の瞳?・・・それってもしかして、探偵さんのことじゃない・・・。騙したら絶対痛い目に遭うわよ、知〜らない」

 マッチ売りはメイクを直してまた顔色を悪くし、またマッチいっぱいの籠を用意して、ミミのところに戻った。
「おねえさん、さっきはありがとう・・・」彼女は、弱々しい声で言った。「でも、またお父さんに家から出されちゃった・・・。今度は、この籠いっぱいのマッチを五千ゴールドで売ってくるまでは、帰ってくるな、って・・・」
 マッチ売りはしくしくと泣き出した。
 ミミは、そんな彼女を見ながら思った。五千ゴールドを渡すのは簡単だが、それでは根本的な問題が解決しない。そこで彼女は、こう答えた。
「籠いっぱいのマッチを五千ゴールドなんて、お父さんも無茶を言うのね・・・。でも、諦めないでやってみましょう。一緒に来て」
 ミミはクエスト「マッチ売りのお手伝い」を引き受けた!

 ミミはまずマッチ売りと一緒にひみつの店に行った。サンディはちょうど今来たところで、ミミの後ろに知らない女の子がついてきているのを見て、また何かに巻き込まれたのね〜とニヤニヤした。ミミはマッチ売りから少し離れて、サンディにこっそり事情を説明した。
「え〜、マッチひと籠五千ゴールド?!ムリデショ。だいたい、コレ絶対サギだって、だってあの女の子の顔色、絶対メイク・・・」
「それに、金髪も、染めたものでしょう」
「え、ミミ、アンタ気付いてんの?じゃあ何でサギかもってわかってて、五千ゴールドなんとかしようと思ってるワケ?」
「だってこのままにしておけば、他の人に同じことをしようとするだけだろうし・・・。何とかしたいの」
「まったく〜、今回もばっちりお人好しモード炸裂ねっ。で、どうするつもり?」
「とりあえず、段階を踏んで、なんとかしてマッチを五千ゴールドに変えてみようかな」
「いやムリっしょ!あり得ないって!」
 するとそのとき、ひみつの店の店員が、タバコに火を点けようとして慌てて叫んだ。
「あらやだ、マッチ切らしちゃったわ」そして店員は、ミミの提げている籠を見て言った。「ねえ、よかったらあなたの持ってるマッチの何束かと、この『ハイヒール』交換しない?ちょっとキズが付いてて売り物にはならないんだけど、あなたの創意工夫でデコレーションすれば、キズは隠れてオシャレな靴になるわよ。どう?この破れた『あみタイツ』もオマケに付けちゃう☆」
 ミミはもちろんその取引に応じた。ミミはキズありハイヒールと破れたあみタイツを手に入れた!

 それからミミは、マッチ売り(そしてサンディ)を連れて、橋の上に戻った。すると一人の男(やはり酔っていた)が橋の上に現れ、よろよろとミミたちに近付いてきた。男は、ミミが持っている籠入りのマッチを見て、絡んできた。
「お〜、今日のマッチ売りのねーちゃんは二人かあ、しかも一人はスレてなくてカワイイじゃねーか〜」そして男はミミに向かって言った。「アンタが付いてくるなら、買ってやってもいいぜ〜」
「私は非売品です」
 ミミはそう言ってさっさと行こうとしたが、男はしつこくついてきた。
「売ってないってコトは、タダで遊ばしてくれるってコトってか?いいねいいね〜」
 こういうときは相手にしないに限るとミミが歩調を早めようとしたが、男は案外素早いのか、わざととおせんぼをしてからかい続けてくる。こんなときにイザヤールが居れば、そもそもミミに酔っぱらいが絡んだ時点で視線だけで追い払えるのだが、あいにく彼は今頃、ドワーフの金属細工工房でミミへのクリスマスプレゼントをせっせと作っているところだった。
 ラリホーをかけて屋根のあるところに置いていこうかなとミミが呪文を唱えようとすると、その前にうんざりしていたサンディが、いきなり男を突飛ばした!サンディの姿は人間には見えないから、あたかも天罰が下ったかのように、男は橋から川の中にまっ逆さまにダイブして、派手に水しぶきを上げた。
「サンディ!こんな寒い日に、さすがに川の中はダメでしょ!」
「いや〜、アタシもまさか、落っこちるとまでは思わなかったわ〜」
 とにかく助けなきゃとミミは急いで橋から降りて川岸に行くと、男は自力で這い上がっていて、しかも酔いはすっかり醒めていた。彼は派手にくしゃみをし、言った。
「うう、寒びぃ〜!ねーちゃん、焚火するから、そのマッチ一束くれ!・・・あれ、金ねえな・・・。じゃあこの手袋と交換で頼む!拾ったヤツだからすげえばっちいけど、洗えばキレイになるぜ!・・・たぶん。ねーちゃんみたいな美人に絶対似合うって!」
 男はすっかり汚いねずみ色になった手袋をミミに渡してきたので、ミミはマッチ一束ならあげるのに案外律義な酔っぱらいさんだなあと感心して、マッチを渡した。
 酔っぱらいは震えながらいつも焚火をしている老人のところに行って、火に当たろうとしたが、いつものことながら火は弱く消えそうになっていた。老人は、ミミに気付いて言った。
「おお、おまえさんは!さあさあ、何か燃えるものを・・・おっ、マッチを持っておるではないか!いつもより礼を弾むから、そのマッチを大量に焚火に投げ込んでおくれ。そうすれば火の勢いが強まるでな」
 ミミは言われた通りマッチを焚火にたくさん放り込み、焚火は明々と燃えた。老人と、ついでに震えていた酔っぱらいはほくほくし、老人はミミにひしゃげて乾いた泥だらけの何かを渡した。
「川の汚泥の底から拾ったんじゃが、これは燃えないのでそのまま忘れて持っておったんじゃ。なんかようわからんが、たぶんバッジかなんかじゃろ」
 ミミはそれを受け取り、橋の上に戻ると、マッチ売りはミミがマッチで短時間の間に更に物を手に入れたことに驚いていた。

 手に入れた品はどれも、そのままでは使えそうにない。だがミミは、手袋と謎の何かを調べてみて、にっこり笑って言った。
「このままでは売り物にならないけれど、錬金すれば五千ゴールドは無理でもちょっといいものになるかも☆錬金してきていい?」
 マッチ売りは、このままカモに逃げられると思ったのか、またしくしく泣いて言った。
「そんなこと言っておねえさん、帰っちゃうんでしょ・・・お父さんにぶたれちゃう・・・」
「じゃあ、一緒にちょっとついてきてくれる?」
 こうしてミミたちはルーラでセントシュタインにあっという間に移動し、ミミはまずハイヒールとあみタイツを錬金してピンヒールにした。それから、汚れた手袋と謎の何かをカマエルに入れると、それらは「ひめのてぶくろ」と「ロイヤルバッジ」だったので、「女王のてぶくろ」になった!
 ミミがピンヒールと女王のてぶくろを手にしていると、そこへロクサーヌの店の前に居た冒険者が近寄ってきて、言った。
「そのピンヒールと女王のてぶくろを、『クインヒール』に錬金してくれませんか?そしてボクの『ゆうしゃのブーツ』と交換してください!彼女へのクリスマスプレゼントには可愛くないなと悩んでいたところなんです!」
 ミミはこの交換に応じて、クインヒールを作ってゆうしゃのブーツと交換した。そして、それをマッチ売りに渡した。
「はい、これを売れば五千ゴールドになるわ。これでおうちに帰れるでしょう?」
 マッチ売りはブーツを受け取り呆然としていたが、やがて本当に泣き出した。
「ズルいわよ、運が凄く良くてしかもそんなに優しいなんて!・・・あたしも、ちゃんとした生活したら、そうなれる、かな・・・」
 ミミは大きく頷いた。マッチ売りはブーツを受け取り、代わりにピンクパールを差し出した。
「あたしが持っている唯一マシなもの・・・もらって」
 マッチ売りが行ってしまうと、サンディは呆れと感心が混じった声で呟いた。
「今回もお人好しにより改心させってか☆イザヤールさんにきっと褒めてもらえるよね〜」
 ミミは照れたように顔を赤らめ、微笑んだ。〈了〉
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