セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

時奪いの森(前編)

2017年11月11日 23時45分34秒 | クエスト184以降
いろいろ予定外が起きて結局この日時更新でしかも続きモノになりましてそのうえ続き書くのこれからです申し訳ございませんにも程がありすぎるの追加クエストもどき。また時間ネタ、クエスト184カテゴリ2013年2月アップの「歪められた時の迷宮」と似たようなシチュエーションですが、今回はある意味もっと危機的状況に?!当サイトでは天使は百年で一歳年を取る設定にしております。人間の百年が一年くらいの感覚です。

 最近、カラコタ橋近くの森で、行方不明者が頻発しているという噂が冒険者の間で流れていた。カラコタ橋は、元々無法者の吹き溜まりのような町なので、行方不明者が出てもしばらく気付かれなかったのだが、それにしても度が過ぎる為に噂になったらしい。
 こんな噂を聞いては、地上の守り人としては放ってはおけない。そんな訳でミミとイザヤールは、さっそく調査に出かけた。今回は森ということで、共にレンジャー職で出かけることにした。サンディは「ロトゼタシアを旅行中」とナゾの言葉を残して留守だったので、彼女の帰りを待とうか迷ったが、それでその間に更に行方不明者が増えることを懸念して結局出発に踏み切ったのだ。
「これで何かあったら、またサンディに叱られちゃいますね、『まーたアタシが居ない時にヤバいコトになってー!いーかげん学習しなさいっつーの!』って」ミミがサンディ風に腕組みしながら言った。
「なかなか似ているな」イザヤールは笑ったが、すぐに真剣な顔になって言った。「今日は私がついている。何があっても共に切り抜けよう」
 ミミは彼を見上げて微笑み、力強く頷いた。イザヤール様と一緒なら、きっと大丈夫。何百年も共に居たという年月の積み重ねは伊達ではないのだからと、彼女は濃い紫の瞳を更に色深くして、愛しい者を見つめた。

 カラコタ橋では、大した情報は得られなかった。ただ、キャプテン・メダルも盗賊団の首領デュリオも、「イヤな予感がするから気を付けた方がいい」という見解では一致していた。
 カラコタ橋周辺の森もかなり広いので、どの辺りが現場なのかも判然としなかったが、二人はとりあえずカラコタ橋側から「花のみつ」が採れるサンマロウ北部に向かって縦断してみることにした。
 最初のうちは、歩いてみても特に普段と変わったところは無かった。地域別的にはこの辺りもベレンの岸辺になるわけだが、まだらイチョウやリカントがいつも通りにうろうろして、殊にまだらイチョウはオレの季節だー!とでも言いたげにうきうきと歩いていて、レベルの高い二人に気付いては慌てて逃げていくという緊張感の無さだ。少なくとも通常の魔物は、行方不明事件とは関係ないらしい。
 しかし、森の奥に行くにつれて様相が変わってきた。辺りが霧に覆われ始めたのだ。近くの木さえ見えなくなる程の濃霧だ。
「これは・・・。いい前兆とは言い難いな」イザヤールは眼光を鋭くして呟いて、ミミの手を引いて引き寄せる。
「普通の霧と、違うの・・・」ミミも不安そうに呟き、イザヤールにいっそう身を寄せた。
 ミミは道具袋から「ひかりの石」を取り出し、片手でそれを握って、指の隙間から細い光の筋を一本だけ出すようにした。そして、その光を、まっすぐ前方に向けた。その光は、かなり離れた場所にある木の枝と葉をちらちらと照らした。
「イザヤール様、あの枝に、糸を付けた矢を射ってください」
 ミミの言葉を聞く前にイザヤールは既に弓矢を取り出していた。言わずとも互いの意図はわかる領域に達しているコンビネーションだ。そして彼は矢に糸を付けて放ち、いとも簡単に命中させた。糸を手繰って行けば、少なくともその木のところまでは、確実に進める。
 矢を当てた木にたどり着くと、その木には小さなうろがあって、中には小鳥が一羽隠れていた。ミミが覗き込むと、小鳥は鋭く一声叫ぶように鳴いたが、ミミを一目見ると、安堵して喋り始めた。
「早く逃げて、でないと、『時』を盗まれちゃうピ」
「どういうこと?」
「この森に、変な魔物が来たっピ。あちこち動き回る、影のようなヤツで、姿ははっきりわからないピ。でもそいつは、森の動物や訪れた人間たちの『時』を盗む恐ろしい魔物だったっピ!半年時間を盗まれた蝶は芋虫に戻ってしまったし、三年時間を盗まれた狼は生まれたての赤ちゃんに戻ってしまったピ。それどころか、この辺りの動物は、二十年の時間を盗まれて、赤ちゃんになるどころか消えてしまったピ!そしてヤツは、霧の中に迷い込んだ人間からも何十年もの『時』を奪って、消してしまったっピ!なんかよくわかんないけど、『時を集めて、我がネクタイの復活を』とか何とか言ってたっピ」
「え?え?」戸惑うミミ。
「それってもしや、『我が肉体の復活を』とでも言っていたのではないのか?」とイザヤール。
「そうそう、それだっピ!」
「イザヤール様すごい、よくわかったの・・・」
「まあ状況から考えるとな・・・。とにかく、深刻な事態のようだな」
「行方不明になった人々は、もしかして・・・」
「『時』を奪われて消されてしまったのかもしれない、ということか。これは見過ごすわけにはいかないな」
 ミミは頷いた。濃い紫の瞳が、決意を湛えて陰影を描く。
「ええっ、あんなヤバそうなのと戦うつもりっピか?気を付けるっピよ!」
 小鳥が翼をぱたぱたしながら言った。ミミとイザヤールはクエスト「時奪いの森」を引き受けた!

 霧の中をさ迷い続ければ黙っていてもその魔物に会えるだろうと考えて、二人ははぐれないように気を付けながらしばらく歩いた。正体不明とはいえ影のような魔物ということは、光属性の攻撃に弱い可能性は高いので、それで対抗して様子を見ることに決め、二人は歩き続けた。
 武器を構えてなければならないので、今は手をつなぐことはできない。傍に居る者の顔も見えないくらいの濃霧の森は、容易に二人を引き離すように思われる。ミミは思わず、イザヤールの装備している毛皮のベストの裾を左手でそっとつかんだ。イザヤールはそのしぐさに振り返って微笑み、彼女の額に素早くキスを落とした。
「な・・・なんのキス・・・?」頬を赤らめるミミ。
「おまえは可愛いな、という意味だ」しれっと答えるイザヤール。
 ミミはますます赤い顔をしてうつむいたが、ベストの裾は放さず、二人ははぐれる心配無しにしばらく歩いた。そんな甘い雰囲気になると邪魔が入るのがこの二人のお約束だが、邪魔が入ることも無く霧もだんだんと薄れてきた。
 こちらが探していることに気付いたので謎の魔物は出てこないのかなとミミが思っている間に、森の中にぽっかり空いたような小さな広場に出て、霧も晴れてきた。だが、それは吉兆ではないことを覚って、二人は剣を構えた。やがて、広場の中央の地面から、ゆらりと黒い影のようなものが宙に伸びた。それは、黒い楕円の塊になってぽんと跳ねると、二人の目線の高さまでふわふわと浮いた。
『おまえたちの時も、我が糧にしてやろう・・・』
 低い音と高い音が重なったような奇妙な声で、それは喋った。これが件の魔物に間違いなささうだ。
「みんなから奪った時を返して、元に戻して」
 無駄と知りながらもミミが言うと、謎の魔物は、地響きのような笑い声を立てた。目に当たりそうな場所が丸く赤く光った。
『奪ったのではない、我が一部になることで、永遠の時を生きられるようになるのだ。おまえたちもその栄誉を担うがよい!まずは肉体の時間を提供せよ!』
 謎の魔物は、ドルマドンのような呪文を放ってきた!イザヤールはとっさにミミをかばい、闇の塊はイザヤールを直撃した!だが、通常のダメージを与えることなく、闇の塊はイザヤールを包み込んだ後、魔物の元へと戻った。
「イザヤール様!」
 ミミは叫んでイザヤールの安否を確かめようとして呆然とした。装備はそのままだったが、イザヤールの背に翼が生え、頭上に光輪があったからだ。
「な?!なんだこれは・・・」
 イザヤールも自分が天使の姿に戻ってしまったことに戸惑っていたが、間もなくニヤリと笑い、剣をギガスラッシュの型に構えながら言った。
「なるほど、生き物の体だけの『時』を奪う術というわけか。だが、生憎だったな!体は十年前に戻っても、記憶さえそのままならば、修得した技を放つのに何ら問題ない!」
 イザヤールはギガスラッシュを放った!閃光と雷撃が謎の魔物を襲い、絶叫が響き渡る。とはいえやはりギガスラッシュ一撃で倒れるような魔物ではないらしく、謎の魔物は黒い体をうねうねとさせながら呟いた。
『・・・そんなバカ、な・・・二十年の時を取ったのに、その姿になるなど・・・おまえはいったい・・・まあよい、ならばそちらの娘の肉体の時を百年分頂くまでだ。魂だけ残されればすぐに、魂の「時」も我に捧げたくなるであろう』
 魔物は再び闇の塊を撃ってきたが、ミミはすばやく身をかわした。しかし、避けて消えた筈の闇は、突如ミミの足元から湧き出し、全身を包み込んだ!一瞬後には闇の塊は魔物の元に戻り、ミミの体は百年分の時間を奪われて立ち尽くした。
 だがその姿は、魔物の期待とは裏腹に、やはり翼と光輪がある以外は、ほとんど変わらない姿だった。よくよく見れば顔立ちがほんの僅かだけ幼くなってはいたが、それがわかるのはおそらくイザヤールくらいだろう。
「生憎、私も、体が百年前に戻っても、ギガスラッシュくらいは撃てるんだから!」
 そう言ってミミは、渾身のギガスラッシュを放った!魔物は閃光で切り裂かれ、倒れた。
『おまえも・・・天使か・・・』倒れ伏した魔物は呟いた。『まさか、この世界にまだ天使が居たとはな・・・。まあよい、かくなる上は・・・』
 謎の魔物は、触手を伸ばして、地面に何やら書き込んだ。砂時計を簡略にした図形のような文字のようなものと判別する間もなく、空間が揺らぎ、時間が戦闘が始まる前に戻ってしまった!
 魔物が時戻しの魔法を使ったのだと知る由も無く、ミミとイザヤールは翼も光輪も無く先ほどと同様に剣を構えて立ち、彼らから見れば何の前触れも無しに突然現れたように見える黒い楕円の影のようなものに驚いた。魔物は、影の一部をもたげて、赤く光る目の不気味な光を更に強めて、叫んだ。
『今度は、千年の時を奪ってやろう!体も、魂の時もな!何もわからずに霧の中で力尽きるがよい、天使どもめ!』
 その言葉の意味を知る由もなく、ミミとイザヤールは時奪いの魔法を撃ち込まれた。避けることができないよう、魔物は闇の塊を二人の上に数知れず容赦無く降り注ぎ、全ての闇の塊を再び回収すると、高笑いして姿を消した。
 千年の時を奪われてしまったミミとイザヤールは、霧に包囲されたような形で、呆然と座っていた。今度は魂の方の「時」も奪われてしまったので、先ほどどころかここ千年の記憶も全て失ってしまった。失ったというより、今の二人にとって最初から存在していない記憶ということになる。
 体の時も奪われてしまったので、容姿も当然それぞれ千年分幼くなっていた。ミミは、まだ勉強すら始めていない見習い天使の幼児期のような姿になってしまい、イザヤールは、エルギオスの元で修行に励んでいた少年期見習い天使の頃の鍛えているとはいえまだ細身な変声期前後のような体になってしまった。
 そして何より、二人にとっては、天使界に居た筈が、いきなり霧の真ん中に放り出されて、互いに見知らぬ見習い天使と二人きりという奇妙どころかパニックになりかねない状況だった。ミミは、これだけはいつも変わらない、濃い紫の瞳を大きく見開いて、「知らない見習い天使のおにいちゃん」を見つめた。彼の綺麗に澄んだ濃い茶の瞳と、同色に見えるきりりとした眉毛とやや固そうにはねている髪が、ぶかぶかの毛皮の帽子の下から覗いている。その瞳は、驚いたような顔でミミを見つめていた。
 イザヤールも、「知らない見習い天使の小さな子」をまじまじと見つめた。以前に鉱石学の授業で見たアメジストのような、だがそれよりもっと美しい濃い紫の瞳が、不安と驚きを湛えて自分を見ている。何故か一刻も早く安心させてやりたくて、イザヤールはそっとミミに近寄った。〈続く〉
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