セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

代理召喚精霊

2015年08月07日 23時50分46秒 | クエスト184以降
今週は金曜更新できた~、追加クエストもどき。召喚する方ではなくされる方になるお話です。朦朧脳で書いたせいか展開大雑把ですが書いてて楽しゅうございました。またこのネタやりたいかもです。天地雷鳴士はDQ7の上級職、精霊や幻魔の召喚はDQ6やDQ7ですが、今回はどちらかと言えばカードゲームっぽい感じをイメージしております。フォロボサーンの弱点属性は捏造ですが、土属性攻撃使う妹に負けたってことは、あながち間違いではないかも?

 ダーマ神殿の宿屋の本棚で、ミミとイザヤールは面白そうな本を見つけた。かつて存在した、幻の上級職についての本だった。それらの職業の特徴などが載っていたが、残念ながら転職条件までは載っていなかった。
「やっぱり『勇者』、憧れちゃうなあ」ミミは濃い紫の瞳を輝かせて呟いた。「すごいですよ、白兵戦にも呪文にも強くて、戦闘中にHPが回復したりするんだもの」
「『ゴッドハンド』も気になるな。攻撃系職業のエキスパートだそうだ」とイザヤール。
「イザヤール様なら、絶対ゴッドハンドになれそうだけどなあ・・・。あっ、この『天地雷鳴士』もすごいの。精霊や幻魔を召喚できるって♪」
「かつて存在したということは、方法がわからないだけで、条件を満たせば転職可能な気もするな。気長に方法を探すのも悪くない」
「そうですね♪楽しみがまた増えたの」
 二人は楽しく本を読み終えてから、ベッドに入って休んだが、そのときはまだ、まさかそんな幻の上級職にまつわるトラブルに巻き込まれるとは、夢にも思わなかったのであった。

 ふと気が付くと、ミミは神殿内のがらんとした場所に立っていた。真夜中なせいか、辺りは静まり返っている。だが、周囲をよく見回すと、慣れ親しんだダーマ神殿とはなんだか違う気がする。厳かな雰囲気や柱の感じは似ているが、そもそも広さや壇などの配置が違うような・・・。また夢でも見ているのかな、と彼女は思ったが、気丈な彼女にしては珍しく、何となく心細くなった。
(夢なら、早く覚めればいいのに。そうしたら、イザヤール様の腕の中にいるのだもの・・・)
 そんなことを考えていると、少し離れた柱の陰から、そのイザヤールの声が聞こえてきた。安堵してミミがその方向に駆け寄ると、彼が不思議な格好をしたハスキーボイスの色っぽい美人と話しているところに出くわした。雰囲気から察するに、イザヤールは抑えてはいるがかなり怒っているようだ。
「断る」
「ねぇ~んそんなこと言わないで、お・ね・が・い☆」
「断る」
 どうやら先ほどからこんな会話のループを繰り返しているらしい。イザヤール様がまた逆ナンパされちゃっているのかと、ミミは慌てて彼に駆け寄って腕をきゅうと彼の腕に絡め、哀願するような瞳でその美人を見つめた。言葉に直せば「このひとは私の恋人なんだから、連れていっちゃダメなんだから」というところだろう。
 だが、相手はミミが来たのを見ると、ますます嬉しそうな顔になって手を叩いた。
「やったわ☆もう一人、全てのスキルを極めた強者でしかも元天使ちゃんが来たわ☆しかもすっごくカワイイじゃない♪精霊っぽ~い」
 そう言われてミミは、この女の人は何故自分たちの正体を、と緊張して、もの問いたげにイザヤールを見上げると、彼は眉間を寄せて言った。
「ミミ、相手にするな、帰るぞ」
「え?この人、イザヤール様を逆ナンパしていたんじゃなかったの?」
 先に気にするのはそっちか!とイザヤールが答えるより前に、その美人は声を立てて笑って言った。
「やだ~、違うわよ☆まあナンパしていいくらいのイイ男だけどね☆お願いがあるのよ」
「なんですか?」
 ミミが聞く体勢に入ろうとすると、イザヤールは慌てて彼女の体に腕を回して、半ば引きずるように向きを変えて言った。
「だから相手にするな、帰るぞ」
「どうやって?」美人は楽しげに笑って言った。「うふふ、ここはアナタたちの知ってるダーマ神殿じゃないのよ。私が呼んだの」
「えっ、どういうこと?」
 ミミは目を見開いた。異世界に呼び出された、そういうことなのだろうか。
「なんだと?!」
 ミミとイザヤールが身構えると、美人はくすくす笑いながら説明した。
「私はこの世界で天地雷鳴士を生業としているんだけどね~。実は私の精霊と幻魔が、夏休み取っちゃったところで、ちょっとヤバいヤツを倒さなきゃいけなくなっちゃったのよ。それで、全スキルを極めた強い人をよその世界から呼び出して、代わりをしてもらおうって思ったワケ。そしたら二人とも元天使のチカラも持ってて、ラッキー☆」
 精霊や幻魔って夏休み取れるの?!それも気になったミミだったが、そういうことなら何故イザヤール様はあんなに断っていたのだろうと、そっちの方が気になった。するとイザヤールは、ミミの疑問を察して呟いた。
「精霊と幻魔代わりにするから、カードに封印させてもらうと言ったのだ」彼は、美人を鋭い眼差しで睨み付けた。「ただ手助けをするならともかく、カードに封印されるとは冗談じゃない」
「大丈夫よ~、終わったらまたちゃんと解放してあげるから。すっごいお礼もするし」
「信用できるか。何を倒すか知らないが、ただ手助けするなら協力してもいいが、封印されるのは断る」
 それなら断るわけだよねとミミは納得した。お人好し過ぎるとよくサンディに言われているミミですら、召喚精霊代わりにカードに封印されると言われては、さすがに素直に引き受ける気にはなかなかなれない。万が一解放してもらえなかったらとても困ったことになる。
「私もお断りします」ミミも言った。「封印されるのは、さすがにリスクが大きすぎますから」
「あらまあ、用心深いのね~。でも」ここで美人は、妖しい笑みを浮かべて言った。「引き受けることになると思うわよ」
 そう言うやいなや呪文を唱え印を結ぶと、ミミとイザヤールの足元に光る魔法陣が現れた!イザヤールはそれに気付くやいなや、とっさにミミを突き飛ばし、魔法陣の外に出した。その一瞬後にはイザヤールの姿が消え、魔法陣の上には、一枚のカードが落ちているだけだった。
「イザヤール様!」
 蒼ざめてミミが叫ぶと、カードからかすかに彼の声が聞こえた。
「ミミ、おまえは逃げろ!」
 ミミがカードを拾い上げると、それにはイザヤールにそっくりな姿が描かれていて、しかも動いていた。それが絵ではなく、封印されてしまったイザヤールだと知るのに、そう時間はかからなかった。
「うふふ、どうする?このまま逃げたら、アナタの大切なカレは、もう二度とカードから出られないわよ~。協力してくれるわよね?」
 にこっと笑って美人はミミに囁く。
「ミミ、言いなりになっては駄目だ!」
 イザヤールの必死の叫びが聞こえたが、ミミはうなだれた。ここが本当に異世界なら、逃げる場所も無いし、女神セレシアの力も及ばないから、本当に彼を助けることができなくなってしまう。引き受けるしか無さそうだ。
「わかりました。協力します。でも必ず約束してください。役目を終えたら、私たちをちゃんと解放してくれると」
「もちろん♪ごめんなさいね~、手荒な真似をして。でも、これから行く場所は、どんなに強くても生身の身体では危険なの。カードに入っていてくれている方が安全だから、そうさせてもらったのよ」
 相手のおどけた態度が一転神妙になったので、ミミは思いきって信じてみることにした。ミミはクエスト「代理召喚精霊」を引き受けた!

 ミミは言われるままにイザヤールのカードを持って魔法陣の上に立った。光に包まれたかと思うと、一瞬後には、イザヤールの隣にふわふわと浮かんでいた。辺りはちょうどげんませきのような色の虚空がずっと続いていて、如何にも亜空間という言葉がぴったりな雰囲気だった。
「ミミ・・・。なんてことを・・・」
 イザヤールは、怒っているというよりは悲しげな顔で呟いてミミを抱きしめたが、ミミは微笑んで彼の顔を見つめて言った。
「きっと大丈夫よ、イザヤール様。それに、イザヤール様と一緒の空間に居られるなら、少しも怖くないし」
「・・・そうか。そうだな、私も、おまえが一緒なら・・・」
 二人はそうしてしばらく静かに抱き合っていた。どれくらいの時間ここに居るのかわからないが、空腹も睡魔も一向に覚えない。まるで止まった時の中に居るようだった。
「私たち、何をすればいいんでしょうね」
「何と戦うんだろうな」
「私たちの攻撃が効く相手ならいいけれど。二人一緒ということは、ダブルギガスラッシュでもすればいいのかな・・・」
「いっそダブルバックダンサーよびでもするか?」
「う~ん、召喚される方が更に召喚しちゃっていいのかな」
「確かにややこしくなりそうだな。そもそも、バックダンサーやオオカミが呼べるかどうか」
 そんなたわいない話をしているうちに、空間の一部からまばゆい光が発せられた。どうやらこれが召喚される合図らしい。二人は顔を見合わせて頷き合い、光に向かって飛び込んだ。

 召喚されて飛び出した二人の前に居たものを見て、ミミは思わず驚いて目を見開いた。それが一瞬、宝の地図の洞窟でお馴染みの、破壊神フォロボスに見えたからだ。だが、よく見ると気配は似ているがあちこちが異なっていた。そして、辺りは天の箱舟内のサンディの部屋にも似た、無限に広がる漆黒の空間に無数の星がちりばめられた奇妙な世界だった。
「魔空五兄弟の長男、フォロボサーンよ」依頼人は言った。「一度妹のフォロボシータに倒されたけど、完全に倒れてはいなかったの。力を蓄えて、また出てきちゃったってわけ。さあお二人さん、ヤツの弱点は土属性よ、必殺『星ふぶきの夜』をばーんとかましちゃって☆」
「え、私たち、そんな必殺技なんか持ってないんだけれど・・・」
「二人の心を合わせて、星に祈ってみて」
 そう言われて、ミミとイザヤールは半信半疑ながら、互いの手を握りしめて星々に一心に祈った。すると、フォロボサーンに四方八方から流星が襲いかかり、大ダメージを与えた!ぶつかった流星群の中に、どさくさに紛れてカマエルまで居たとか居なかったとか。
 ミミとイザヤールは半ば呆気にとられてこの状況を見つめていた。意外な展開の連続に、思考がいまいちついていってないのだ。ミミはふと、フォロボシータも攻撃に流星を使っていたことを思い出して、だから土属性に弱いフォロボサーンは以前妹に負けたのかと思い当たった。
 そうこうしている間に一ターンが終わったので、召喚精霊ポジションの二人は、カードの中に戻った。
「今の必殺技・・・ほんとに私たちがやったの、かな・・・」
「あまり実感は無いが、たぶんそうなのだろうな」
 元天使である自分たちに、元天使である星たちが力を貸してくれた、そういうことなのだろうか。
 それからしばらくして、まばゆい光に包まれたことで二人は我に返った。そして、先ほど依頼人と遭遇した、ダーマ神殿によく似ているが違うところに戻っていた。どうやらカードから出してもらえたらしい。
「アナタたちのおかげで、手強いフォロボサーンもあっさり倒せたわ~、ありがとね~♪さすが!」依頼人は怪我ひとつせずぴんぴんしていて、二人の手を感謝を込めてぎゅっと握りしめた。「ずっと私の召喚精霊代わりやっててほしいけど、まあそういうわけにはいかないもんね。でも困ったらまた助けてね~。はい、これお礼!」
 ミミは「天使のソーマ」をもらった!・・・意識が薄れる前、依頼人の「またね」という声が聞こえた気がした。

 目が覚めると、ミミは天使のソーマの瓶を握りしめたまま、ダーマ神殿の宿屋のベッドの中、もっと正確に言えばイザヤールの腕の中にいた。天使のソーマを手に持っていなければ、何もかも夢かと思ったことだろう。
 その後二人は、試しに必殺技「星ふぶきの夜」をもう一度できるか試してみたが、祈りが足りないのか、召喚される時にしかできないのか、はたまた「あの空間」でしかできないのか、とにかく二度と発動することはなかった。話を聞いたサンディは、「アタシの部屋で試そうなんて思ったら許さないからねッ!」と釘を差したという。〈了〉
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