セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

性悪リスを捕まえろ

2013年10月04日 23時53分23秒 | クエスト184以降
今週は何とか間に合いました捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。いよいよ秋突入ということで、秋らしい?たいへん平和なクエストです。何せリス捕獲クエスト。でもリスちょっと強え(笑)秋と言えばベクセリアかもしれませんが、敢えてウォルロが舞台でございます。今回も見事なコンビネーションを発揮の元師弟コンビ、このまま末長く現役冒険者をやってくれそうな気配です。『超~』が付く種や実は、DQ7に登場アイテムです。

 ウォルロにもようやく秋がやってきた。村から程近い山は、胡桃や栗、榛などを集める為に訪れる、女性や子供たちで賑わっている。そんな者たちの護衛を兼ねながら、ミミとイザヤールは自分たちも秋の恵み集めを楽しんでいた。
 枯れ葉の上にぽとりと落ちるつやつやした木の実よりも美しく艶やかな髪に包まれた頭が、茂みの間から見え隠れしている。その可愛らしい頭を眺め、やはりミミは髪も綺麗だと、木の実を拾う手を休めてイザヤールは微笑んだ。冬を前にいよいよ艶やかに宝石のように光る晩生の栗の実を思わせるその色を、彼は「晩秋の木の葉の色」と密かに名付けて愛していた・・・彼らが天使だったずっと昔から。赤や黄の華やかな色素を失ってもなお、樹と共に生きる小動物を保護してふんわりと地に積もる落葉は、ミミの優しさを思わせ、地上での任務に励む彼の心を和ませたものだ。
「イザヤール様」
 ミミが茂みをかき分け、愛らしい笑みを浮かべて駆け寄ってきた。その手には、珍しいくらい大粒な胡桃が載っている。
「よく見つけたな」
「ちょっと休憩にしましょう。・・・この胡桃、イザヤール様にあげる」
 そう言いながら、ミミははにかむように顔を伏せた。子供のような好意の表し方が、ちょっと恥ずかしかったのだろう。
「ありがとう」
 いい物はなんでも愛しい者に与えようとする彼女の心が嬉しくて、彼は唇を綻ばせた。イザヤールは胡桃を受け取り、ナイフも使わずに片手でぱかりと綺麗に割った。胡桃を素手で握り砕ける男はそこそこ居るだろうが、素手で綺麗に割れる力と繊細さを併せ持つ男はそうそう居ないだろう。ミミはその様をほれぼれと眺め、割った半分を差し出されて、幸せで瞳を輝かせた。
 だが、ミミがその半かけを受け取ろうとしたそのとき。
 なんとはぐれメタルよりも素早い小さな何かが、イザヤールの手のひらから胡桃を奪い去り、一瞬で木に駆け上がって姿を消した。通常の人間なら、高速の黒い影にしか見えなかっただろうが、熟練冒険者の二人の動体視力は、その姿を捉えた。
「リス・・・?」
 その姿は確かにリスだったのだが、あまりの素早さに信じられなくて、ミミは呆然と呟いた。
「リス・・・だよな?」
 イザヤールも信じられないように、空になった手のひらを見つめる。
 よほど空腹なリスだったのだろうと、胡桃の残った半分を二人で仲良く分けて、再び木の実集めに戻ったミミとイザヤールだったが、その後辺りのあちこちから、悲鳴や驚く声が次々聞こえた。
「わーん、ボクのとっておきのでっかいドングリが取られちゃったー!」
「や~ん、あたしの袋、穴空けられてるー!」
「キャー!何、何なの?!イヤー!胡桃返しなさーい!」
 どうやら先ほどのリスが、暴れまわっているようだ。そして、ミミとイザヤールが捕まえようかと身構えた頃には、あっという間に遠くに逃げてしまった。リスだから食べ荒らした量こそたいしたことはないが、食べもしないのにかじったり、袋に穴を空けていたり、取った物を取りにくい場所に放り出していたりと、かなり意地悪なことばかりをしていた。
「いたずらなリスさんなの・・・」
 ミミはちょっと頬を膨らませて、リスの逃げていった方向を見つめた。
「いたずらというより悪意を感じるな」
 イザヤールも苦笑したが、幸い被害はさほどなかったので、一同はこれを汐に村に帰ることにした。

 村人たちをウォルロ村まで送り届け、森の様子を見てから自分たちも帰ろうかと、ミミとイザヤールが再び木々の間を歩いていると、何かが枯れ葉をかき分ける乾いた音が近付いてきた。見ると、落ち葉の上を、二匹のスライムがしょんぼりと歩いて・・・スライムの場合は這ってと言う方が正しいかもしれないが・・・やってきた。
「うっうっ、ボクたちれっきとした魔物なのに、小動物に負けるなんて・・・」
 スライムの片方が嘆く。
「仕方ないだろ、あのリスのヤツ、頬の中に、凄い種を詰め込んで隠し持っているんだから」
 もう片方が答え、大きく溜息を吐いた。
「リスって・・・もしかして、今日この辺に居た、すっごく素早いリスのこと?」
 ミミが思わず尋ねると、スライムたちはニンゲンだと一瞬飛び上がったが、ウォルロ地方のスライムたちの間では結構有名なミミとイザヤールだと気付いて、安心して話し始めた。
「そーなんだよ!かなりのイジワルリスでさ、悔しいけど手を焼いてるんだ」
「もしかしてリスの姿に化けた魔物か何かなのか?」
 イザヤールが眉をひそめて尋ねると、スライムたちはぷるぷると否定した。
「ううん、全くフツーのリスだよー。でもアイツ、ボクたち高台のスライム属が溜め込んでたすっごい種や木の実の一部を食べちゃって、ムキムキで素早くて賢くて魔力も高いスーパーリスになっちゃったんだ」
 ムキムキなリス・・・ちょっとイヤかも・・・。ミミは思った。
「そしてね、『超すばやさの種』や『超かしこさの種』や『超魔力の種』なんかをほっぺたに詰め込んだままでさー。返してほしいんだけど、『超すばやさの種』を既に食べまくっているせいで、はぐれメタルすら捕まえられないくらい速くなっちゃってるんだ」
 もう一匹のスライムも言って、また溜息を吐いた。
「捕まえて、背中を叩けば、種を吐き出してくれると思うけど・・・」
 でもはぐれメタルも敵わないんじゃあ・・・と半ば諦めムードのスライムたちに、ミミがおずおず提案した。
「あの・・・ダメ元で、私、捕まえてみようか?」
「ホント?!」しょげていたスライムたちの顔が一転、ぱっと明るくなった。「やってみてくれるの?助かるよ!」
「私も及ばずながら手助けしよう」イザヤールも不敵な笑みを浮かべて言った。「素早さを上げるいい特訓になりそうだしな」
 こうしてミミとイザヤールはクエスト「性悪リスを捕まえろ」を引き受けた!

 二人は素早さの高い武闘家に転職してから、更に「ぶとうかの証」と「ほしふる腕輪」をそれぞれ装備した。それから、リスを誘い出す作戦を考えた。やはり餌で誘き寄せるのが手っ取り早いだろうということになって、先ほど集めた木の実類の他に、砂糖菓子のカケラやこの辺りでは珍しいアーモンドなども加えて、ところどころに積み上げ、ステルスで気配を消して、木陰からじっと様子を窺った。
 すると、しばらくして、ちょろりとリスが一匹現れた。首を傾げて、ナッツ類の小さな山を見つめている。一見普通のリスかとも思ったが、頬に何かを目一杯詰め込んでいるらしく、ぱんぱんに膨れている。それなのにナッツに手を伸ばし、更に食べる様は、なんとも食いしん坊だと思わせた。
 ミミは「まだらくもいと」を、イザヤールは「どくがのこな」を持って、そろりと音も立てずにじりじりと近付いた。リスは、今度は砂糖菓子のカケラを一心にかじっている。
 だが、ミミがまだらくもいとを投げたその瞬間、リスはひょいと身をかわした!そしてつむじ風のごとく瞬く間に木の枝に駆け上がり、そして・・・背中を向けてしっぽを突き出し、ふりふりと振った。明らかに馬鹿にしている。
「私たちの動きに気付いているみたい・・・」
「かしこさのたねも食べているようだから、知性が付いてしまったのかもな」
 こうなったらまどろっこしい作戦はとりあえず抜きだと、イザヤールがたちまち枝に跳び上がると、リスは彼の追えない細い梢まで上っていった。だがイザヤールはすかさず手にした棍で、切るように梢の枝を叩き落とし、リスは落下した。それを、下に居たミミがすかさず受け止めた。
 リスはミミの手の上に座り込んでいたが、彼女にそっと体を包まれるようにつかまれると、ぶるぶると震え、黒目がちなつぶらな瞳をきらきらさせて彼女を見た。なんとも可愛らしく、哀れさを誘う。つかむ力が強すぎるかと、ミミが思わず手を緩めると、すかさずするりと逃げ出してしまった!
 イザヤールは木の上からどくがのこなを投げたが、惜しいところで当たらなかった。そしてリスは、たちまち姿を消してしまった。
「ごめんなさい・・・可愛くてつい・・・」
 しょんぼりするミミに、小動物にまで騙されてしまうのがミミらしいとイザヤールは苦笑して、気にするなとミミの頭を優しくなでた。それからミミは少し考えて、魔法使いに転職した。ピオリムで二人の素早さを上げ、更にラリホーをリスにかけようというのだ。ミミはさっそくピオリム二回がけをした。
 リスは、すっかり馬鹿にしているのか、今度はアーモンドをポリポリと食べている。そこへミミはラリホーをかけたが、リスには効かなかった!それどころかリスは、小さな前足を伸ばしてメラミを唱えてきた!かしこさのたねとまりょくのたねを食べていたから使えるようになったらしいが、リス恐るべしである。ミミは盾でガードしたが、驚いた。
 その隙にイザヤールは棍に花のみつを着けたもので捕まえようとしたが、ひょいと避けられてしまった。ならばと装備を扇に変え、花ふぶきを巻き起こした。リスは幻に包まれた!慌てて逃げようとして、木だと思って駆け上がったのが、なんとミミだった!
「・・・」
 ミミは、いいのかなあ・・・という表情で、今度こそリスをしっかり捕まえた。

 捕まえたリスの後ろ足をよく見ると、両足それぞれ足輪のような物がはまっていた。どうやら指輪のようだ。外してみると、それぞれ「ソーサリーリング」と「ひらめきのジュエル」だった。たねの力だけでなく、このアクセサリーのおかげで呪文が使えたり呪文耐性ができていたらしい。これらを外した途端、リスの顔が明らかにふにゃりと脱力し、だいぶ賢さが下がった気配となった。
 間もなく依頼人のスライムたちがやってきたので、ミミはリスの背中を軽くとんとん叩いて、頬袋の中の種を吐き出させようとした。リスはしぶとく耐えていたが、ミミが今度は天使のはねを取り出してリスの鼻をくすぐると、堪えきれずくしゃみをして、全部吐き出した!
 スライムたちは、喜んで跳ねた。
「わーい、ありがとう!お礼に好きな種をどれでも持っていっていいよ!」
 これらの種は確かにとても貴重品だが、リスのよだれまみれでビミョーに使いたくない状態だ。気持ちだけ受け取ると固辞するミミとイザヤールに、なんて欲のないと感心するスライムたち。
 リスは反省した様子で、今まで食べてしまった種や木の実を同じものを集めて返すと決めたらしかった。それでスライムたちと一緒に、高台へと去っていった。ソーサリーリングとひらめきのジュエルを残して。
「やれやれ、人騒がせなリスだったな」
 呟いてイザヤールは笑った。
「あのリスさんが、女神の果実を食べたりしたらどうなってたのかな・・・」
 ふと呟いたミミに、怖いことを言うなと彼は苦笑する。明日からは、木の実集めももっと平和にできるだろう。そろそろ日没の冷たい風の気配に、二人は互いに手を伸ばし、指を絡めて帰路に就いた。〈了〉
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« テンションブースト!(適当w) | トップ | 少々お待ちくださいませ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿