セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

代理ビルダー!〈後編〉

2016年07月26日 00時00分01秒 | クエスト184以降
追加クエストもどき後編。これで終わりかと思いきや、次回のクエストに続くという荒業となりました〜!脱出したイザヤール、町を発展させるミミ、二人の運命や如何に?

 鍛冶屋は、ミミが作った石造りの炉を使って、まずはたちまちに鋼の片刃の剣を作ってくれた。よく切れる包丁などを作るのと同じやり方なのだという。それを渡してくれながら、彼は言った。
「オリハルコンっていう珍しい金属があれば、『おうじゃの剣』とかいう凄い剣も作ってやれるんだがな・・・」
 それを聞いてミミは、リッカの宿屋の自室の道具袋のことを思って小さく溜息をついた。その中には、ちいさなメダルと交換したオリハルコンが、ゴロゴロと言っていいくらいに入っていたのである。だがそんなことを思っても仕方ないと、彼女は気持ちを切り換えて言った。
「オリハルコンの採掘所がわかったら私、取りに行ってきます」
「俺も詳しくは知らねえんだが」鍛冶屋は首を振りながら言った。「オリハルコンのある場所は、とっても危険な魔物が居る砂漠地帯らしいぜ。お嬢さんがいくら強えったって、そんなとこに行かせるわけにゃあ行かねえよ」
「でも・・・」
 オリハルコンでできた剣があれば、ビルダーという人の役にも立つだろうとミミは思った。できればやはり、採掘には行きたい。
 やっぱり手がかりを探しに行くとミミが言いかけたとき、少女がフライパンを持ったまま慌てて走ってきて(キメラの卵で作った目玉焼きが入っていた)、叫んだ。
「たいへんよ!空から人が降ってきたわ!」

 鍛冶屋や大工の老人と共に慌ててミミが駆けつけてみると、そこに居たのは、思いがけずもずっとその身を案じていたイザヤールその人だったので、ミミは一瞬呆然としてから、言葉も無く彼に飛びついた。イザヤールの方も、枷と鎖の着いたままの手も構わずに、ミミをひしと抱きしめた。
「え、この人、ミミさんの知り合い?!何だかたいへんなことになってるけど・・・」
 ミミはイザヤールがはぐれた恋人であることを皆に説明した。イザヤールはミミが無事なことに安堵し、自分の置かれていた状況を説明した。
「私は、おそらく魔物である何者かに囚われていた。王の中の王、とか言っていたな」
「王の中の王?!・・・それは、この地の闇の元凶、竜王ではないか!」大工の老人が叫んだ。
「竜王?!」
 ミミとイザヤールは同時に目を見開いた。竜王は、宝の地図の洞窟で、何度も戦っている大魔王である。
「竜王に捕らえられて自力で脱出できたとは・・・。そなたは、いったい・・・」
 老人は如何にも戦士然としてただ者ではない気配を漂わせているイザヤールをまじまじと見つめていたが、イザヤールはその視線にも平然としながら答えた。
「いや、自力ではなく、精霊の力も借りた。それに」彼は、依然として両手首と両足首にしっかりはまったままの枷を見つめ、眉をしかめた。「これが、どうしても外せない。これでは存分に戦えない。おそらく、普通の金属では裁つことができないだろうしな」
 鍛冶屋が枷や鎖を調べ、なるほど、と頷いた。
「確かにな。これは、『マネマネ銀』という特殊な金属でできているぜ。同じマネマネ銀で作った鍵でもなけりゃ、外せねえだろうな」
「そんな・・・」
 ミミは枷をされている本人より辛そうに瞳を潤ませ、もがいたことで傷だらけになったイザヤールの手首をそっとなで、ベホイミをかけた。
「そのマネマネ銀とやらがある場所はわかるか?」
 イザヤールは大丈夫だとミミに微笑んでから、鍛冶屋に尋ねた。
「トロルっていうバカでかい魔物がたまに落とすらしいがな。奴らは動きは鈍いが怪力だ。一撃をくらったら、無事じゃあ済まないぜ」
「それなら任せてくれ。トロルなら、何度も戦ったことがある」
 イザヤールが言い、ミミは仰天した。
「イザヤール様、枷と鎖が着いたままで行くつもりなの?!大丈夫、私がオリハルコンと一緒に取ってくるから」
「せっかく再会できたのに、またおまえを一人で危険な場所に行かせるわけがないだろう?それに、この鎖は壁石がくっついているから、振り回すとちょうどいい武器になるしな」
「そんな無茶な・・・」
 皆も加わった押し問答の末、結局ミミとイザヤールは二人で出かけることになった。その日は休んで疲れを取って、翌日早朝に出発することにした。
「はい、これ、二人分のお弁当!キメラのゆで卵と薬草の葉っぱのサンドイッチに、ベリーのジャムを入れたクッキーよ!気を付けてね〜」
 翌朝、少女がここにある材料だけで工夫して作ったお弁当を持たせてくれた。キメラの卵は瓦礫の隙間や屋根の上にちょいちょい見つかるらしい。ミミはおおきづちの他に鍛冶屋が作ってくれた鋼の片刃剣を持ち、イザヤールは鎖の先に付いた壁石を更に破壊力が増すよう加工してもらい、二人は元気良く出発した。互いの無事を確認できて一緒に居られる今、見知らぬ世界かつどんな困難が待っていようとも、畏れは無く、冒険へのわくわく感が二人を満たした。

 平原を行き山を越え、砂漠を抜け、岩山地帯にやって来た二人は、この辺りに丸い岩がやたらにごろごろあることに気が付いた。よくよく見るとそれは、居眠りしているばくだん岩たちだった!
 危険な魔物とはこのことだったのかと、ミミとイザヤールは起こさないようにしのびあしをして通り過ぎようとしたが、あいにくイザヤールは足にも鎖を引きずっているのでそういうわけにはいかなかった。そこでイザヤールは渋々その場に留まり、ばくだん岩の群れの向こうに見えた、鉱石がありそうな岩壁を、ミミがそっと調べに行くことにした。
 ミミは鉱脈を調べて、それがキャプテン・メダルに貰っているオリハルコンと同じ物であることを確かめた。さっそくおおきづちを振るって掘り出そうとしたが、当然オリハルコンはとても固く、木製ハンマーであるおおきづちで掘り出せるわけもない。
 剣を採掘に使うのは気が引けたが、やむを得ず鋼の剣で岩場を切ってみると、周りの岩はすっぱり見事に切れたが、オリハルコンに当たると甲高い音を立てて切れなかった。しかもその音でばくだん岩たちが目を覚まし、いっせいにミミの方へ転がり出した!
「ミミ!」
 イザヤールは叫んで、ばくだん岩たちの注意を自分の方へ引き寄せようとしたが、転がり出したばくだん岩の勢いは急には止まれない。岩壁を背に、文字通り追いつめられて絶体絶命と思われたミミだが、もちろんそのままばくだん岩たちの下敷きになる気はさらさら無い。体当たりされる前にすばやく岩壁をよじ登り崖上に行ったので、ばくだん岩たちはみんな岩壁に激突した。中には勢い余ってめり込んでいるものまで居た。
 すると、岩壁にめり込んだばくだん岩が、あの恐ろしい言葉を唱えた。
「メ・・・メ・・・メガンテ」
 当然そのばくだん岩は爆発し、他のばくだん岩も次々誘爆して、ばくだん岩たちは居なくなってしまった。そして、ミミの上っていた崖の下は、ぽっかりとえぐられたように穴が空いた。
「ミミ!無事か!」
 イザヤールはミミが崖上に登ったのは見ていたが、メガンテの爆発が想定以上に酷かったらと気が気でなかったので、彼女の無事を確認して安堵の息を吐いた。
「私は大丈夫。・・・ねえイザヤール様、ばくだん岩たちのおかげでオリハルコンの鉱脈が砕けて、結晶の塊がこんなにたくさん!」
 そう言ってミミはするすると崖上から下りてきて、爆発のおかげで拾えるようになったオリハルコンの結晶を嬉しそうに集め始めた。
「まったく、おまえこそずいぶん無茶をするな・・・」
 イザヤールは苦笑して、自分もオリハルコンを拾い集め始めた。

 充分と思われる量のオリハルコンが集まったので、二人は今度は次の目的を果たしに荒野に向かった。荒野に着くと、巨大なものがたくさんうろうろしているのが、遠くからでも見えた。そのシルエットにはものすごく見覚えがあった。ミミたちの世界ではカズチィチィ山辺りでよく見かける魔物、トロルである。
 トロルたちは、人間の姿を見るやいなや巨大な棍棒を振り回して襲いかかってきた。ミミがひらりと身をかわすと、トロルの棍棒は地面にめり込み、大きな穴を空けた。すかさずイザヤールが鎖をトロルの足にひっかけてぐいと引くと、トロルはよろめいて自分が作った穴に落ち、身動きが取れなくなった。
 怒り狂った別のトロルがやはり棍棒を振り回したが、やはりミミにすばやく避けられて、他のトロルに当たってしまい、それが元で喧嘩が勃発した。そうやって互いに殴り合っているうちに、ミミとイザヤールが攻撃する間でもなく、トロルたちは頭に大きなこぶを作って、全員のびてしまった。
 気絶しているトロルのうちの一匹の側に、メラゴーストによく似た形のおかしな金属が落ちていた。マネマネというメラゴーストに似た姿の魔物が居ることはミミも知っていたので、これがマネマネ銀なのだろうと二人は見当をつけて、それも拾った。こうして目的の物を手に入れ、二人は町に戻った。

 町に帰ると、鍛冶屋はさっそくマネマネ銀で鍵を作ってくれて、イザヤールはようやく枷と鎖から解放された。そして鍛冶屋は、次はさっそくオリハルコンをおうじゃの剣にするという次の仕事にかかり始めた。
 大工はどんどん建物を直しているし、ミミとイザヤールが留守にしている間に、人々も増えている。町はいい感じに発展しているようだ。そんな折タイミング良く、精霊が二人に呼びかけた。
『ミミ、イザヤール、力を貸してくれてありがとうございました。人々も次々失った力を取り戻し、あなた方の役目は終わった・・・と言いたいところなのですが・・・』
 精霊は、まずはお礼にと「みずのはごろも」をミミに与えてから、続けて言った。
『残念ながら、まだビルダーは見つからず、しかも・・・勇者になる筈の若者が、よりによって世界の半分と引き換えに、竜王に買収されてしまったのです・・・!あなた方には、また別のお願いをしなくてはなりません・・・』
 なんとまだ帰れないどころかこの世界の状況は悪化しているらしい。ミミとイザヤールは呆然とした。〈次回のクエストに続く〉
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