なんか結局土曜日更新がデフォになってるんですケド!の追加クエストもどき。このまま少しずつ金曜日に寄せていけまいか・・・。今回登場のモンスターはもちろん捏造な設定なんですが、なんかもしかして10に居たりするのか?チョコレートゴーレム。居そうだなあ・・・。チョコヌーバはホントに居たしなあ・・・。言わばズッキーニャとかの食べ物の怨み系モンスターと思われる魔物との対決の行方や如何に!
バレンタインシーズンも終わり、多忙をきわめていたリッカの宿屋もようやく少し落ち着いた。甘いチョコレートはあげなかったが甘い甘いバレンタインを過ごすことができたミミは、幸せそのものな様子で、やはり同じように幸せそのものな様子のイザヤールと一緒に、冒険に人助けにと勤しんでいた。
しかし、サンディがホクホクするほど各地で星のオーラが大量発生していた一方で、そうそううまくいかなかった者たちの悲哀も大量発生しているのがこのシーズンである。その悲哀が、恐ろしい事件を巻き起こすとは、バレンタインデー当日までは誰も知る由も無かった。
バレンタインデーから数日後、仕入れに出かけていたロクサーヌが、彼女には珍しく心配そうな顔で帰って来て、厨房に居たミミのところに駆け込んで来て言った。
「ミミ様、たいへんですわ!新種の魔物が現れて、人々を襲っているらしいとのことですのよ!」
その報せを受けた時、ミミは愛らしいエプロン姿で宿屋スタッフのまかないを作っているところだったが、そんな平和な姿にもかかわらず緊迫した表情になって、手にした木べらを思わず武器のように握りしめて尋ねた。
「それはたいへん、どんな魔物なのか、ロクサーヌさんは聞いたの?」
「ええ、それが、遭遇した方たちは、最初ゴーレムかと思ったそうですのよ。ただ、色がちょっと違っていると思ったら、攻撃してみると恐ろしく硬くて、かなり腕の立つ冒険者たちも勝てなくて、撤退するしかなかったそうですわ」
「色が違って硬いってもしかして、ゴーレムみたいな姿をしたメタル系モンスターとか?」
「いえ、それが、黒に近い焦げ茶色だったそうで、しかも、何だか異様な匂いがしたそうですわ。甘いような、苦いような、スパイシーなような、焦げ臭いような、とにかく正体不明の匂いで、近くに居ただけで気分が悪くなったと」
「毒の息とかなのかな・・・。確かにたいへんかも・・・」
そんなやりとりをしながらも料理を作り終え、お昼ごはんよとリッカたちを呼びに行くと(非公式にラヴィエルも)、ルイーダと戦士系の冒険者の少年が深刻そうな顔で話し合っていた。話題はやはり、その新種の魔物のことだった。
「絶対アレはチョコの化け物だ!間違いねえ!」
少年は力説した。
「どうしてそんなことがわかるのよ?得体の知れない匂いだってみんな言ってるんでしょ?」
「オレの元カノがくれた手作りチョコと全くおんなじ匂いだったんだよ!ガマンして食べたけど、死ぬかと思ったし腹壊したし・・・」
「それが原因で別れたの?」
ルイーダは今それ聞くかーなことを尋ねたが、少年は素直に答えた。
「ちげーよ!目玉焼きにはソースかケチャップかでケンカになって別れた」
「そんなことより」ルイーダは自分で聞いておいて話題を変えた。「その魔物、どこで見たの?」
「んーと、関所の先の方」
ルイーダと少年のやりとりを聞いていたミミは、その言葉ではっと目を見開き呟いた。
「じゃあベクセリアの手前・・・!イザヤール様が、今ちょうどベクセリアに古文書を返しに行っているところなの。遭遇しちゃうかもしれないから、応援に行かなきゃ!」
「まあそうですの!」ロクサーヌも驚きの表情になったが、すぐに笑顔になって言った。「でもミミ様、イザヤール様でしたらそんな魔物もあっさり撃退できるのではございません?」
「でも、ヒドイ匂いするって言うし、どんな攻撃してくるかわからないし・・・。とにかく行ってきます!みんな、お昼ごはんは厨房のテーブルの上にあるからね!」
ミミはエプロンを外して、クエスト「チョコレートゴーレムの逆襲」を引き受けた!
ルイーダたちは、一人で行くなんてみずくさいと言ったが、作ったまかないがパスタなのでのびてしまうとミミは言い張り(イザヤールの分は帰ってきてから改めて作るつもりだったのだ)、夕方になっても戻らなかったら様子を見に来てと言い残し、装備を戦闘モードに変えてとりあえず外に出た。歩いて関所を越えるかベクセリアまでルーラで行くか迷ったが、イザヤールがまだベクセリアの町に居るかもと考えて、ルーラでベクセリアに飛んだ。
ベクセリアの町に着くと、ミミは町長の家まで階段を一気に走った。イザヤールが返しに行ったのは、町長の家から借りた古文書なのだ。町長の娘婿ルーフィンが授業をしている時間と思われたので、そっと覗くと、イザヤールがちょうど新しい古文書を借りて帰ろうとしているところだった。
「おやミミさん?こんにちは」
「ミミ?どうした、何かあったか?」
イザヤールは、思いがけずミミが来て嬉しそうだったが、用事を終えたらすぐに帰る予定の自分をミミがわざわざ迎えに来たということは何かが起きたのだとすぐに覚ったらしい。ミミは手短に事情を説明した。
「新種の魔物だと?!それはすぐに手を打たないとな」
イザヤールは言ったが、モンスター図鑑に加えられるかもしれないとどこかわくわくしている様子だった。
「ミミさん、イザヤールさん、お願いできますか?僕も父に報せてきます」とルーフィン。
謎のゴーレム風魔物は、ベクセリアの町に来るかもしるないし、関所に向かうかもしれない。どちらにせよ、被害者をこれ以上増やすわけにはいかない。ミミとイザヤールは道を急いだ。
しばらくすると、程なく巨大な影が見えてきて、怯えて逃げ回る近隣のモンスターたちがこちらに向かって大移動してきていた。逃げ惑うテンツクやもみじこぞうたちの後ろから現れたのは、確かに焦げ茶色という点を除けば、ゴーレムにそっくりだった。
『チョコ・・・食ベテヨ・・・チョコォォォオ!』
ゴーレム風の魔物はそう言いながらテンツクたちを追い回している。ミミとイザヤールは魔物の前に立ち塞がった。
『チョコ食ベテヨォォォ!』
叫びながら魔物は拳を振り上げ突き出してきた。ミミとイザヤールはすばやく身をかわした!しばらく二人は攻撃を避け続けていたが、やがて魔物が殴ってきているというより、口に向けて拳を突き付けてきていることに気付いた。
それにしても、焦げ臭さが目立つが様々な匂いが複合した酷い匂いで、それが動く度に起こる風で匂いが辺りに広がっていって堪らない。なるべく吸い込まないようにしても、なかなか防げるものではないし、息を止めれば動きが鈍くなる。バンダナで鼻と口元を覆っても気休め程度だ。
二人は風上に移動して距離を置き、一息ついた。
「イザヤール様、大丈夫?」
「ああ、おまえこそ。しかし酷い匂いだな。昔ウォルロ村で、料理下手な娘が手作りチョコに失敗したときの災害クラスの匂いを思い出す」
「やっぱり、本当にチョコが化けた魔物なのかな・・・」
「かもしれないな。とにかく、動きを止めなくては」
反撃に転じることにして、ミミとイザヤールはしっかり鼻と口元を覆ってから魔物に向かっていった。剣で斬りつけたが、斬りつけてできた切口がどろりと溶けていってすぐに塞がってしまった。
「剣の攻撃が効かないか・・・」
「それなら火でやってみます」
ミミは言って、火吹き芸で炎を吹き付けてみたが、余計に焦げただけでダメージは与えられていないようだ。
「やっぱり火力が無いとダメみたい・・・」
「ではまた距離を置いて魔法使いに転職してメラガイアーといくか」
二人はダッシュで再び魔物から距離を置き、ダーマのさとりで魔法使いに転職して、メラガイアーを放った!魔物の体は焦げて表面がパラパラと碎けて落ちていったが、やはり魔物は叫びながら向かってきた。
『食ベテヨォォォ!』
これはもうホラーな状態である。常人なら恐怖で逃げ出すところだが、ミミとイザヤールは幸か不幸か境遇に培われた並大抵ではない精神力だったので、怖がるよりまず冷静に対処の算段を始めた。
「どうやら炭化していくだけで動けるみたい・・・」
「徹底的に炭化させてもいいが、それでは時間がかかるな・・・」
「ハンマーで砕いてみるってどうでしょう?」
「よさそうだな、ではメラガイアーとハンマーの攻撃を交互にというのはどうだ」
「はいっ」
メラガイアーで表面が焦げたおかげで、奇妙な匂いは焦げ臭い程度まで落ち着いたこともあって、二人はこの相談を身をかわしながらすることができた。後は打ち合わせ通り、メラガイアーを放ってはハンマーで打つ、という攻撃を繰り返す。
MPがそろそろ尽きるかという頃、魔物の足が一本折れて崩れ落ちた。一ヶ所が崩れた途端に、バランスを失ったことで腕や足の繋ぎ目が崩れていき、魔物は焦げの破片の山のようになってしまった。しかしそれでも、残った頭だけで『食ベテヨ・・・』と呟いていた。
ミミは、魔物の目の辺りを見つめた。すると、不思議なことに、水晶玉を覗いているかのように、何やら映像が次々と映った。
まだ幼い女の子から、新妻とおぼしき者まで、様々な年齢の女性が映ったが、みんな手作りチョコレートを作っているらしいということと、手順を全く聞かずに勘で適当にやっていることは共通していた。入れてはいけない恐ろしい物を悪気なく「おいしくなりそうだから」と、放り込む者が少なくなかった。
そして、出来上がった物は、誰かに食べさせてお腹を壊されたり、一口かじった物を吐き出されたり、食べる前に断られたり、食べるふりをしてこっそり捨てられたりと、いずれにせよ食べ物として悲しい運命をたどっていた。
「イザヤール様、この映像って・・・」
「おまえも見えるか。・・・もしかしたら、食べてもらえるチョコレートになりそびれたカカオの怨念が集まって魔物になった、ということなのだろうか」
「それとも、心を込めた手作りチョコを食べてもらえなかった女の子の悲しみの集まりとか?・・・どちらにしても切ないの・・・。いずれにしても、食べたら怨念は浄化されるのかな?ひとかけ、食べてみようかな・・・。超ばんのうぐすりもあるし・・・」
どう考えても危険な行為のミミを、イザヤールは慌てて止めた。
「やめろミミ、気の毒だがこれはもはや食品ではない、さすがに無理だ」それからイザヤールは、ゴーレム風の頭に向かっていった。「食べられないとはいえ、ムダにはしない。約束する」
ミミも、悲しげに言った。
「食べてあげられなくてごめんなさい。でも、これから少しでも、あなたみたいな無駄になるチョコレートが出ないように、努力するから!」
すると、頭の部分も、納得したかのようにさらさらと崩れていき、後には炭化した「たぶん手作りチョコ」の残骸だけが残った。
ミミとイザヤールは約束通りその残骸を集めて、適当な量に分けて包んだそれを、強力な目潰しとして使うことにした。後日使ったところ効果は抜群で、なんと宝の地図の洞窟のボスたちにも効いて悶絶させるレベルだったという。
戻ってきたミミとイザヤールの話を聞いたリッカたちは、リッカとルイーダはチョコレート作り教室をバレンタイン前に開催して料理初心者だけど手作りチョコに燃えがちな乙女たちを特訓することに決め、ロクサーヌは手作りチョコに見える商品の仕入れ強化を決定した。
ルイーダに情報を寄せた少年は、話を聞いて言った。
「なっ、やっぱりチョコの化け物だっただろ?・・・まさか、オレの元カノのムダにしたチョコも混じってたんじゃねえだろな・・・。とにかくありがとな!」
少年はささやかだがお礼だと、「戦士の盾」をくれた!
こうして事件は解決したが、ミミとイザヤールが天の箱舟内に入ると、サンディが「友チョコの失敗作の残り」をアギロに無理やり押し付けているところだった。怨念のチョコレートゴーレムは、まだまだ生まれるかもしれない・・・。〈了〉
バレンタインシーズンも終わり、多忙をきわめていたリッカの宿屋もようやく少し落ち着いた。甘いチョコレートはあげなかったが甘い甘いバレンタインを過ごすことができたミミは、幸せそのものな様子で、やはり同じように幸せそのものな様子のイザヤールと一緒に、冒険に人助けにと勤しんでいた。
しかし、サンディがホクホクするほど各地で星のオーラが大量発生していた一方で、そうそううまくいかなかった者たちの悲哀も大量発生しているのがこのシーズンである。その悲哀が、恐ろしい事件を巻き起こすとは、バレンタインデー当日までは誰も知る由も無かった。
バレンタインデーから数日後、仕入れに出かけていたロクサーヌが、彼女には珍しく心配そうな顔で帰って来て、厨房に居たミミのところに駆け込んで来て言った。
「ミミ様、たいへんですわ!新種の魔物が現れて、人々を襲っているらしいとのことですのよ!」
その報せを受けた時、ミミは愛らしいエプロン姿で宿屋スタッフのまかないを作っているところだったが、そんな平和な姿にもかかわらず緊迫した表情になって、手にした木べらを思わず武器のように握りしめて尋ねた。
「それはたいへん、どんな魔物なのか、ロクサーヌさんは聞いたの?」
「ええ、それが、遭遇した方たちは、最初ゴーレムかと思ったそうですのよ。ただ、色がちょっと違っていると思ったら、攻撃してみると恐ろしく硬くて、かなり腕の立つ冒険者たちも勝てなくて、撤退するしかなかったそうですわ」
「色が違って硬いってもしかして、ゴーレムみたいな姿をしたメタル系モンスターとか?」
「いえ、それが、黒に近い焦げ茶色だったそうで、しかも、何だか異様な匂いがしたそうですわ。甘いような、苦いような、スパイシーなような、焦げ臭いような、とにかく正体不明の匂いで、近くに居ただけで気分が悪くなったと」
「毒の息とかなのかな・・・。確かにたいへんかも・・・」
そんなやりとりをしながらも料理を作り終え、お昼ごはんよとリッカたちを呼びに行くと(非公式にラヴィエルも)、ルイーダと戦士系の冒険者の少年が深刻そうな顔で話し合っていた。話題はやはり、その新種の魔物のことだった。
「絶対アレはチョコの化け物だ!間違いねえ!」
少年は力説した。
「どうしてそんなことがわかるのよ?得体の知れない匂いだってみんな言ってるんでしょ?」
「オレの元カノがくれた手作りチョコと全くおんなじ匂いだったんだよ!ガマンして食べたけど、死ぬかと思ったし腹壊したし・・・」
「それが原因で別れたの?」
ルイーダは今それ聞くかーなことを尋ねたが、少年は素直に答えた。
「ちげーよ!目玉焼きにはソースかケチャップかでケンカになって別れた」
「そんなことより」ルイーダは自分で聞いておいて話題を変えた。「その魔物、どこで見たの?」
「んーと、関所の先の方」
ルイーダと少年のやりとりを聞いていたミミは、その言葉ではっと目を見開き呟いた。
「じゃあベクセリアの手前・・・!イザヤール様が、今ちょうどベクセリアに古文書を返しに行っているところなの。遭遇しちゃうかもしれないから、応援に行かなきゃ!」
「まあそうですの!」ロクサーヌも驚きの表情になったが、すぐに笑顔になって言った。「でもミミ様、イザヤール様でしたらそんな魔物もあっさり撃退できるのではございません?」
「でも、ヒドイ匂いするって言うし、どんな攻撃してくるかわからないし・・・。とにかく行ってきます!みんな、お昼ごはんは厨房のテーブルの上にあるからね!」
ミミはエプロンを外して、クエスト「チョコレートゴーレムの逆襲」を引き受けた!
ルイーダたちは、一人で行くなんてみずくさいと言ったが、作ったまかないがパスタなのでのびてしまうとミミは言い張り(イザヤールの分は帰ってきてから改めて作るつもりだったのだ)、夕方になっても戻らなかったら様子を見に来てと言い残し、装備を戦闘モードに変えてとりあえず外に出た。歩いて関所を越えるかベクセリアまでルーラで行くか迷ったが、イザヤールがまだベクセリアの町に居るかもと考えて、ルーラでベクセリアに飛んだ。
ベクセリアの町に着くと、ミミは町長の家まで階段を一気に走った。イザヤールが返しに行ったのは、町長の家から借りた古文書なのだ。町長の娘婿ルーフィンが授業をしている時間と思われたので、そっと覗くと、イザヤールがちょうど新しい古文書を借りて帰ろうとしているところだった。
「おやミミさん?こんにちは」
「ミミ?どうした、何かあったか?」
イザヤールは、思いがけずミミが来て嬉しそうだったが、用事を終えたらすぐに帰る予定の自分をミミがわざわざ迎えに来たということは何かが起きたのだとすぐに覚ったらしい。ミミは手短に事情を説明した。
「新種の魔物だと?!それはすぐに手を打たないとな」
イザヤールは言ったが、モンスター図鑑に加えられるかもしれないとどこかわくわくしている様子だった。
「ミミさん、イザヤールさん、お願いできますか?僕も父に報せてきます」とルーフィン。
謎のゴーレム風魔物は、ベクセリアの町に来るかもしるないし、関所に向かうかもしれない。どちらにせよ、被害者をこれ以上増やすわけにはいかない。ミミとイザヤールは道を急いだ。
しばらくすると、程なく巨大な影が見えてきて、怯えて逃げ回る近隣のモンスターたちがこちらに向かって大移動してきていた。逃げ惑うテンツクやもみじこぞうたちの後ろから現れたのは、確かに焦げ茶色という点を除けば、ゴーレムにそっくりだった。
『チョコ・・・食ベテヨ・・・チョコォォォオ!』
ゴーレム風の魔物はそう言いながらテンツクたちを追い回している。ミミとイザヤールは魔物の前に立ち塞がった。
『チョコ食ベテヨォォォ!』
叫びながら魔物は拳を振り上げ突き出してきた。ミミとイザヤールはすばやく身をかわした!しばらく二人は攻撃を避け続けていたが、やがて魔物が殴ってきているというより、口に向けて拳を突き付けてきていることに気付いた。
それにしても、焦げ臭さが目立つが様々な匂いが複合した酷い匂いで、それが動く度に起こる風で匂いが辺りに広がっていって堪らない。なるべく吸い込まないようにしても、なかなか防げるものではないし、息を止めれば動きが鈍くなる。バンダナで鼻と口元を覆っても気休め程度だ。
二人は風上に移動して距離を置き、一息ついた。
「イザヤール様、大丈夫?」
「ああ、おまえこそ。しかし酷い匂いだな。昔ウォルロ村で、料理下手な娘が手作りチョコに失敗したときの災害クラスの匂いを思い出す」
「やっぱり、本当にチョコが化けた魔物なのかな・・・」
「かもしれないな。とにかく、動きを止めなくては」
反撃に転じることにして、ミミとイザヤールはしっかり鼻と口元を覆ってから魔物に向かっていった。剣で斬りつけたが、斬りつけてできた切口がどろりと溶けていってすぐに塞がってしまった。
「剣の攻撃が効かないか・・・」
「それなら火でやってみます」
ミミは言って、火吹き芸で炎を吹き付けてみたが、余計に焦げただけでダメージは与えられていないようだ。
「やっぱり火力が無いとダメみたい・・・」
「ではまた距離を置いて魔法使いに転職してメラガイアーといくか」
二人はダッシュで再び魔物から距離を置き、ダーマのさとりで魔法使いに転職して、メラガイアーを放った!魔物の体は焦げて表面がパラパラと碎けて落ちていったが、やはり魔物は叫びながら向かってきた。
『食ベテヨォォォ!』
これはもうホラーな状態である。常人なら恐怖で逃げ出すところだが、ミミとイザヤールは幸か不幸か境遇に培われた並大抵ではない精神力だったので、怖がるよりまず冷静に対処の算段を始めた。
「どうやら炭化していくだけで動けるみたい・・・」
「徹底的に炭化させてもいいが、それでは時間がかかるな・・・」
「ハンマーで砕いてみるってどうでしょう?」
「よさそうだな、ではメラガイアーとハンマーの攻撃を交互にというのはどうだ」
「はいっ」
メラガイアーで表面が焦げたおかげで、奇妙な匂いは焦げ臭い程度まで落ち着いたこともあって、二人はこの相談を身をかわしながらすることができた。後は打ち合わせ通り、メラガイアーを放ってはハンマーで打つ、という攻撃を繰り返す。
MPがそろそろ尽きるかという頃、魔物の足が一本折れて崩れ落ちた。一ヶ所が崩れた途端に、バランスを失ったことで腕や足の繋ぎ目が崩れていき、魔物は焦げの破片の山のようになってしまった。しかしそれでも、残った頭だけで『食ベテヨ・・・』と呟いていた。
ミミは、魔物の目の辺りを見つめた。すると、不思議なことに、水晶玉を覗いているかのように、何やら映像が次々と映った。
まだ幼い女の子から、新妻とおぼしき者まで、様々な年齢の女性が映ったが、みんな手作りチョコレートを作っているらしいということと、手順を全く聞かずに勘で適当にやっていることは共通していた。入れてはいけない恐ろしい物を悪気なく「おいしくなりそうだから」と、放り込む者が少なくなかった。
そして、出来上がった物は、誰かに食べさせてお腹を壊されたり、一口かじった物を吐き出されたり、食べる前に断られたり、食べるふりをしてこっそり捨てられたりと、いずれにせよ食べ物として悲しい運命をたどっていた。
「イザヤール様、この映像って・・・」
「おまえも見えるか。・・・もしかしたら、食べてもらえるチョコレートになりそびれたカカオの怨念が集まって魔物になった、ということなのだろうか」
「それとも、心を込めた手作りチョコを食べてもらえなかった女の子の悲しみの集まりとか?・・・どちらにしても切ないの・・・。いずれにしても、食べたら怨念は浄化されるのかな?ひとかけ、食べてみようかな・・・。超ばんのうぐすりもあるし・・・」
どう考えても危険な行為のミミを、イザヤールは慌てて止めた。
「やめろミミ、気の毒だがこれはもはや食品ではない、さすがに無理だ」それからイザヤールは、ゴーレム風の頭に向かっていった。「食べられないとはいえ、ムダにはしない。約束する」
ミミも、悲しげに言った。
「食べてあげられなくてごめんなさい。でも、これから少しでも、あなたみたいな無駄になるチョコレートが出ないように、努力するから!」
すると、頭の部分も、納得したかのようにさらさらと崩れていき、後には炭化した「たぶん手作りチョコ」の残骸だけが残った。
ミミとイザヤールは約束通りその残骸を集めて、適当な量に分けて包んだそれを、強力な目潰しとして使うことにした。後日使ったところ効果は抜群で、なんと宝の地図の洞窟のボスたちにも効いて悶絶させるレベルだったという。
戻ってきたミミとイザヤールの話を聞いたリッカたちは、リッカとルイーダはチョコレート作り教室をバレンタイン前に開催して料理初心者だけど手作りチョコに燃えがちな乙女たちを特訓することに決め、ロクサーヌは手作りチョコに見える商品の仕入れ強化を決定した。
ルイーダに情報を寄せた少年は、話を聞いて言った。
「なっ、やっぱりチョコの化け物だっただろ?・・・まさか、オレの元カノのムダにしたチョコも混じってたんじゃねえだろな・・・。とにかくありがとな!」
少年はささやかだがお礼だと、「戦士の盾」をくれた!
こうして事件は解決したが、ミミとイザヤールが天の箱舟内に入ると、サンディが「友チョコの失敗作の残り」をアギロに無理やり押し付けているところだった。怨念のチョコレートゴーレムは、まだまだ生まれるかもしれない・・・。〈了〉
災害クラスの匂いのチョコ…
料理初心者の方はくれぐれもレシピどおりに作りましょう!
ご察しの通り、チョコレートのゴーレム、
チョコゴーレムはDQ10のバレンタインの女性キャラ人気ランキングでイベントに登場していました。チョコゴーレムなどチョコレートでできた魔物達を倒すと投票券が手に入りそれでお好きな女性キャラに投票していたのですが
アストルティアの冒険者達に容赦なく切り刻まれ、黒炭にされ、粉砕されたせいか姿を見なくなりました(まぁ厳密に言うと投票ポイントの集め方が変わったからなのですが)
まぁ当然推しの女性キャラを優勝させるために
さっさとくたばれ!とか投票券寄越せ!
とミミちゃんのように切なさを感じる人はいないでしょうね。今回のお話のようにドラマがあるわけではないですし
ってミミちゃん?まさか一人だったら食べたりしないよね?まぁそれで帰り道にイザヤール様が発見して看病とお説教にならないお説教と
いう展開もありですがww
シェルル「えっ?何これ?」
リリン「バレンタインでしょ」
シェ「食べるのが勿体無いからとっておくね」
リリ「そっちの方が勿体無いわ!」
シェ「食べたらなくなるだろ!勿体無い!
ククール「どうしたんだよ?朝から騒いで
リリ「ククール、今日バレンタインでしょ?
だからこれ」
クク「ありがとう。一つ食って良い?」
シェ「えー食べちゃうの?勿体無いなぁ
クク「…?食わない方が勿体無いだろ」
リリ「口に合うかしら?
クク「凄く美味いよ。ほら」グイッ!
リリ「え?…んぅっ///」
シェルルは石化した!
クク「後は部屋でじっくりと味わう事か」
レレン「シェルル君チョコ食べないなら私が食べるね。パクパクもぐもぐ…ごちそう様♪」
シェルルの息の根を止めた!
その頃イザやんはリリン特製の超特大チョコケーキに押し潰されていた!
イザやん「く…くるしぃ〜」
いらっしゃいませ、またもやコメント通知が作動しなかったようで、お返事遅れてしまいたいへん失礼致しました!
おおお、チョコレートゴーレム、10に本当に居たんですね!・・・しかしまさかの握手券、じゃなかった投票券としか見られていないんですか!本当に切ない存在のモンスターだったとは泣けてきます。
さすがに危険物は当サイト女主も食べない?筈です。万が一食べたらたぶん甘い雰囲気どころじゃない救急治療状態の看病になりそうです(汗)
あああこちらのパーティの皆様のバレンタインは悲喜こもごもというか、なんというか!
彼氏さん、もったいない気持ちはわからなくないですが、やはりチョコレートは食べてもらった方が嬉しいに決まってると思いますよ?そして目の前でまさかの衝撃的光景&更なる追加ダメージ(涙)
そして師匠の方は愛が重かったのですね・・・。どれだけの材料を使ってどうやって作ったのかちょっと気になりますwそしてお味は(汗)