セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

日が短い日は星が早く来る

2013年12月22日 23時58分43秒 | クエスト163以降
今日冬至だったらしいのでとても短い冬至イザ女主話。タイトルは長いですが。やはり単にイチャ(笑)ドラクエ世界に柚子があるかどうか怪しいですが、ぜひあってほしいものです。

 船着き場の桟橋の上で、ミミとイザヤールは海に沈んでいく夕日を眺めていた。今日は一年で一番日が短い日なのだと、ツォの浜からついでに船に乗せてきてくれた漁師が、教えてくれた。そう言われて、冬至だったのだと、二人は思い出した。ここ数日アユルダーマ島にあったダンジョン探検をしていて、行事のことをほとんど忘れていた。
 長い時間昼夜の区別の無いダンジョンに居ると、時間経過の感覚が危うくなる。時間の流れが地上と異なる、文字通り異空間なダンジョンすらある。暦を気にかけていることは、その感覚を正常に保つのにも有益なのだと、改めて思う。
 年で一番短い滞在の太陽は、夕日を与える時間も短い。どこか酔いしれているような甘い紅は、驚くほどの速さで海へと吸い込まれていく。日の光が短いということは、魔物が力を増す闇の時間が長くなるということでもある。だからこの日は、禊や魔除けの象徴的儀式を行う伝統があるのだろう。
「もう、暗くなっちゃった」
 あっという間に夕闇に包まれる桟橋で、ミミは僅かに心細そげに呟き、傍らの愛しい男に無意識に身を寄せた。
「大丈夫だ、その分早く星が出る」
 そう囁いてイザヤールは、彼女の体に腕を回して引き寄せた。ああそうだったとミミは安堵の息を吐いて、自分の体に回された腕をきゅうと抱きしめた。触れ合った互いの手が探るようにゆっくり動いて、やがてしっかりと握り合う。星は、人間たちを守る天使だから。日が沈んでも、大丈夫。
「そういえば、冬至の日はフルーツ風呂にするから絶対帰ってきてねってリッカが言ってたっけ」
 ふと思い出してミミが呟いた。嬉しそうな、しかしほんの少し複雑な表情になった。
「どうした?」
 目敏くその表情に気付いたイザヤールが首を傾げると、彼女はクスっと笑って答えた。
「フルーツの浮いたお風呂を見ると今でも、グビアナで女神の果実を輪切りにされてお風呂に浮かべられちゃったことを思い出すの」
「なるほど」それを聞いてイザヤールも苦笑する。「まあ女神の果実風呂は絶対無いだろう。そろそろ、帰るか」
「はい」
 桟橋で、ルーラを唱える。ほとんど光も薄れた黄昏の中、瞬く間に恋人たちの姿は消えた。
 それから数時間後。柑橘系のいい香りをほのかにさせて、二人は暖炉の前に座っていた。柑橘系の果物風呂は確かに禊や魔除けに良さそうだが、今互いに香る体は、禊と言うにはどこか艶かしい。唇もレモンの香りがすると、緩やかなキスをしながら二人は思った。〈了〉
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