セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

鏡よ開け

2018年01月13日 10時06分06秒 | クエスト184以降
結局HPが尽きて朝更新かーい!の追加クエストもどき。こらアカン、もはやゾンビ化・・・。鏡開きをすっかり忘れこけていたので翌日鏡ネタにしてみようと思ったのですが更に一日過ぎてしまったがな。今回登場する鏡の魔物の姿は、DQ6に登場のあくまのカガミ系モンスターを思い浮かべてくだされば幸いです。人間ある程度のうぬぼれ心、つまり自己肯定力も必要、ですがね・・・。

 リッカの宿屋に、見聞を広げる為に旅をしているという若者たち一行が宿泊した。いわゆる金持ちのどら息子とそのお付きたちのようで、ロイヤルルームに連泊を希望した。しかしそんな彼らでさえも、この宿屋の行き届いたもてなしに満足したらしく、彼らが滞在を始めてから数日は平和だった。
 この若者は、荷物の中に大きな姿見らしき物を運ばせていて、ロイヤルルームの目立つ位置にそれをでん、と置いていた。楕円形の上部に悪魔の骨格を象った飾りが着いている変わったデザインで、ちょうどタンスのような観音開きの戸に表面が被われている。食事や茶菓を運ぶメイドたちが、その戸を開いて映る自分の姿にみとれる若者をしょっちゅう目撃していたので、それが姿見だと知れたのだった。
 騒ぎは、ある朝唐突に起こった。
「僕の・・・僕ちゃんの鏡が、壊れたあ〜っ!」
 若者の絶叫が、ロイヤルルームに響き渡った。幸いロイヤルルームは防音対策もばっちりで他の部屋に影響は無かったが、ちょうど給仕に現れ朝食のワゴンを押していたメイドたちが動揺して危うくスープをこぼすところだった。メイドたちは客の一大事をすぐさま宿屋の女主人リッカに伝え、そしてリッカは朝食を終えて食器を下げる手伝いをしてくれていた為にたまたまその場に居たミミとイザヤールを連れてロイヤルルームに向かった。
「どうなさいましたか、お客様」
 リッカが尋ねると、半ばパニックになっているらしい若者は、指し示す指をぶんぶん振りながら言った。
「僕の鏡が、開かないんだー!この鏡は、僕ちゃんの真実の美貌を映す一番お気に入りの魔法の鏡なのにー!」
 従業員たちからこの変わったデザインの姿見のことは聞いていたので、リッカは失礼しますと声をかけてから姿見の戸を開けてみようとした。やはりびくともしない。
「今私の職業が魔法使いだからかな?ミミ、試してみてくれる?」
 今日は旅芸人のミミも試してみたが、戸はやはり頑なに開こうとしない。
「じゃあ、イザヤールさん、お願い」
 リッカが言うと、今日もバトルマスターのイザヤールはメタルグラブをはめた手をバキバキと鳴らし、言った。
「本当にいいのか?力任せにすると、戸を壊してしまう可能性が高いぞ」
 すると、それはダメと誰かが言う前に姿見は一瞬慌てたようにバッと開いた・・・が、また慌てたように固く閉じた。
「何これ?この鏡、まるで意志があるみたい・・・」
 ミミが呟くと、姿見の持ち主である若者は、得意そうに言った。
「魔法の鏡だって言ったでしょ!この鏡はね、自分で開閉するだけじゃなくて喋るんだよ!『鏡よ鏡、世界中で一番カッコよくてイケてて最高な男はだーれ?』と聞くと、ちゃーんと『それはあなた様です』って言ってくれるんだからね!」
 この若者が世界一カッコいいかどうかはさておき、確かに魔法の鏡っぽくはあるアクションだ。だが、先ほどのイザヤールの言動に怯えたような動きは、どちらかというと生き物っぽさを連想させるのだった。
 一瞬開いたことで、リッカたちならなんとかできると判断したのか、若者は言った。
「じゃあ僕ちゃんは朝ごはん食べてるから、直しておくんだぞ!もちろん壊したりしたら許さないんだからね!」
 若者が朝食を食べに食卓の用意がされている隣室に行ってしまうと、リッカは困り顔で呟いた。
「どうしよう、ミミ、イザヤールさん。魔法の鏡を直すなんてできるかなあ?」
「とにかく、できるだけのことはやってみようよ」
 ミミたちはクエスト「鏡よ開け」を引き受けた!

 さてどう直すかと、三人は暫し考え込んだ。
「自分の私物だったら、戸を壊してでも強引に開けてから、改めて戸を修理するのだが、リスクが大きいだろうな」
 イザヤールは言って、姿見の方を見て腕組みをすると、姿見は気のせいか一瞬ぶるっと震えたように見えた。
「お客様には快適に過ごしてほしいのになあ・・・。お願い、開いてよ〜」
「鏡さん、お願い」
 リッカが可愛い顔を曇らせ、ミミも愛らしい顔に悲しげな表情を浮かべて姿見を見つめると、それは突然バッと開き、声がした。
『こんなカワイコちゃんたちのお願いなら、聞いちゃう聞いちゃう〜!あ〜あ、毎日毎回、こんな可愛い子たちを映せるんならいいのに〜』
 開いた戸の中はやはり鏡で、声が聞こえて驚いた顔のミミとリッカが映っている。だが、二人の後ろに居る筈のイザヤールは映っていなかったので、彼ははっと目を見開き、二人をかばうように前に出た。
「離れろっ、こいつは魔法の鏡なんかじゃない、おそらく魔物だ!昔聞いたことがある、異世界には鏡の姿をした魔物が居ると!」
 ミミもリッカも急いで構えたが、あいにく宿屋内のことで、武器は無かった。素手スキルで充分と言えたが。すると、姿見は飛び上がり、じたばたして叫んだ。
『わー!待って待って!確かにオイラは鏡の魔物だけど、いきなり壊す前に話を聞いてー!』
 元々いきなり壊す気は無かったので、三人は構えを解いて姿見の話を聞く態勢に入った。
『オイラは、鏡に映った人間たちのうぬぼれ心をエサにしている魔物で、その点、アイツはたっぷりとエサを提供してくれたんだけど・・・』姿見は、隣室の方にちらりと向いてから、げっちょりした声を出した。『アイツのうぬぼれ心を増長させる為に褒めまくっておだてまくったんだけど、いい加減飽きたー!だいたいあんなブサイクな顔一日に何回も見なきゃなんないなんて苦痛にも程があるしー!もうイヤだー!・・・でもそんなこと口にしたら、アイツのお供連中に叩き割られそうだし〜』
「それで開くの拒否したのね・・・」
「何故逃げ出さなかったんだ?」
『だってアイツ、一日に何回もオイラに映りにくるし、お付き連中は見張ってるし〜。隙が無かったんだよ!・・・そーだ!今逃して〜お願い!』
「そういう事情なら逃してあげたいけど・・・でも、こっそり逃がすなんてことしたらお客様の信用が無くなるから、私がきちんと事情をお話しして、あなたを自由にしてもらうよう頼んでみるわ」
 リッカが言うと、姿見はまたぶるぶると震えた。
『ブサイク面を映すのもうイヤだって鏡が言ったからお暇をやってくれって言うのか?そしたらオイラ絶対壊されちゃう〜』
「そ、そんな言い方しないよ!だいたい失礼だし!」
『・・・ていうか、オイラの故郷に帰りたい・・・』姿見はしょんぼりとうなだれた。『・・・でも、帰れないんだ・・・。宝の地図の洞窟の澄みきった氷でないと、オイラがこの世界にやってきた旅の扉は作れないし・・・。あ〜あ、異世界のうぬぼれ心も食べたいなんて気まぐれ、起こさなければよかった・・・』
「氷タイプの宝の地図の洞窟?そっちの方は、あなたがお暇をもらうことができれば、なんとかしてあげられそうよ」
 ミミが言うと、姿見はうなだれたまま答えた。
『でも、アイツがオイラを手放すなんて思えないし〜・・・』
「ではひと芝居打つってどう?」
 ミミは言い、一同はひそひそと相談を始めた。

 若者が極上のオムレツを食べ終えて、そろそろ食後のコーヒーにしようかと考えた頃、隣室・・・つまり姿見の置いてある寝室の扉がバンと開き、緊迫した声と騒ぎが聞こえてきた。
「危ないっ、離れろ!」
「リッカ、お客様を連れて逃げて!」
 ミミのその声と同時に、リッカが若者のところに駆け込んできて、言った。
「お客様!皆さんを連れて、すぐに階下に避難致しましょう!」
「な・・・何?何の騒ぎ?」
「あの鏡は、人を映して虜にする魔物だったんです!さあ、早く!」
「魔物ぉ?そんなバカな・・・」
 若者が呟いて隣室を覗き込むと、ミミが姿見にメラを放って跳ね返されたり、イザヤールが姿見の枠から生えている骨状の尻尾で足元を払われていたりするのが見えた。姿見の上に載っている悪魔の頭蓋骨の形をした骨は、牙の生えた下顎をカクカクとさせながら、言った。
『ええい、口惜しや・・・。もう少しであの男の魂を、奪えたものを、邪魔しおって!』
 頭蓋骨の虚ろな眼窩が赤く光る。若者は悲鳴を上げた。
「ひいー!僕ちゃんの鏡は、化け物だったのかー!」
 そりゃ喋ったり、外観からして怪しい鏡、フツーは使う前からそう思うだろう・・・という内心のツッコミをおくびにも出さず、イザヤールはベッドからシーツを剥ぎ取ると、それで姿見をぐるぐる巻きにして取り押さえた。
「危険ですから、町の外に持ち出して処分します。よろしいですね」
 イザヤールと一緒にぐるぐる巻きになった鏡を押さえながらミミが言うと、若者はガタガタ震えながら何度も頷いた。
「わかったわかった!さっさと持って行ってくれ!」
 ミミとイザヤールが姿見を持って行ってしまうと、若者はよろよろと食卓に戻ってコーヒーを一気飲みし、呟いた。
「ああ、まさか魔物に僕の美しい顔を映し続けていたなんて・・・はっ!そうか、僕が今まで無事でいられたのは、僕ちゃんの顔のあまりの美しさに、魔物も魅了されていたからか!それにしても、さすが世界一の宿屋だね、密かに忍び込んでいた魔物までスマートに片付けてくれるなんて!」
 勝手に納得して頷いている若者に、リッカはやや複雑な顔で「ありがとうございます」と言ってから、通常業務に戻るべく部屋を辞したのだった。

 一方姿見を連れ出したミミとイザヤールは、装備を調えてから氷タイプの宝の地図の洞窟に向かった。人間が足を踏み入れない下層の方ほど氷は澄んで、旅の扉は作りやすいという。基本ステルスを使って魔物たちを避けていけるミミたちだが、どうしても避けられない敵は、姿見が眩しい光を放って目を眩ませてくれたので、二人はさほど苦労せずに最下層の手前フロアに着くことができた。
 さすがに宝の地図のボスが居るところでは旅の扉を作るのは難しいらしいので、姿見はこのフロアで旅の扉を作った。
『おお、うまくいった!ありがとう、これでオイラ帰れるよ!もう人間のうぬぼれ心をエサにするのはやめて、魔物のカワイコちゃんたちを映して褒めまくって喜んでもらうことにする!』
 もう人間のうぬぼれ心にはすっかり食傷したらしい。いずれにせよ、しばらくは悪いことはしないしできないだろう。逃してくれたお礼にと、姿見はミミに「かがみ石」を三つくれた!そして自分の世界へ帰っていき、姿見が消えると同時に旅の扉も消えた。

 リッカの宿屋に戻ると、例の若者は、備え付けの姿見を見ながらブツブツ言っているとのことだった。
「う〜ん、やっぱりイケメンだけど、褒め言葉が無いといまいちテンション上がらないなあ〜。魔法の鏡、また探させるか〜」
 若者たち一行は、新たな魔法の鏡を探しに旅立っていった。それを後で聞いたロクサーヌは、ちょっと残念そうに言った。
「あら、魔法の鏡をお探しでしたの?言ってくだされば、心当たりに声をかけてみましたのに〜」
 ロクサーヌさんなら本当に用意しちゃったかも・・・そう思ったミミとリッカだった。〈了〉
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2 コメント

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開け〜鏡! (神々麗夜)
2018-01-16 00:04:55
ちょっと欲張って異世界の自惚れ心を頂きに来たらとんでもないブサイクナルシーに捕まってしまった…
ミミちゃんとリッカのお願いにはあっさりと開くww
イザヤール様を映さなかったのは、鏡がミミちゃんとリッカばかりに目が行っていたからか、壊す発言で怖がられたか、単に男は嫌だー!だったのか…

DQ10にて先日、課金ですが『身支度の仕草』が実装されました。手鏡を観ながら髪を整えたりどの角度からが可愛い、カッコいいかとかやっています。ちなみに男女でモーションが異なるのですが、なぜかプクちゃんだけ女の子でも男と同じモーションになってましたw


シェルル「まぁ自業自得だね」
リリン「勘違い自惚れブサイクより、私みたいな可愛い女の子を映したいわよね
ククール「俺の美貌を拝めないとは可哀想な鏡だな…ってあいつ今後、男は映すのか?
シェ「あはは…二人とも凄い自信
レレン「でも鏡さん、ちゃんとご飯もらえてたんだよね?
シェ「レレンちゃんだって、嫌いな人参やピーマンばかり出されたら嫌だろ?」
レレ「うぷ…やだ…お野菜嫌い」
シェ「だろ?っていうかまだ?僕、寝癖なおしたいのに〜」
リリ「もうちょっと待って」
シェ「さっきそう言ってばかり
クク「レディは身支度に時間がかかるものさ
一方その頃
イザやん「鏡の前でカッコいいキメポーズ開発してたら腰、捻った…ガクッ
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可愛い女の子なら開く開く! (津久井大海)
2018-01-16 12:50:47
神々麗夜様

いらっしゃいませこんにちは☆グルメ?探求心の代償は存外に大きかったというお話でした(笑)

女子二人だけ映していたのは、「もうカワイイ女の子しか映したくなかったから」だと思われます。たぶんこの鏡はオスで、メスの鏡だったらイケメンだけ映したことでしょう。

おお、歴代ドラクエシリーズで鏡を調べると文章で示されるしぐさが実際に見られるのですね!でもやっぱり課金かあ〜世知辛い。プクちゃんはやはり顔以外男女差が判りづらい、からでしょうか?

そちらのパーティの皆様、すごい自信☆上記の理由でおそらく女主さんしか映さないと思われますが(笑)姿見『なんでモテモテイケメンなんか映さなきゃなんねーんだ!悔しいっ!』
師匠ポージングで体を傷めるなんて(泣)お大事に・・・。
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