セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

神壊し(後編)

2013年11月17日 23時59分34秒 | クエスト184以降
今週の追加クエストもどき完結編。前回のあらすじ、生け贄の娘の身代わりとなって「神」の所に潜入したミミ。文字通り丸腰で対面した「神」は、意外にも美しい少女の姿をしていた・・・。戦闘シーン楽しかった~。実は女主脱いでるし(爆)長くなりましたが読んでくださりありがとうございました☆

 姿を現した「神」の意外な姿にミミは驚いたが、見た目に騙されてはならないと、濃い紫の瞳の陰影を更に増して、扉の奥に立つ美少女を見つめた。そして、彼女の後ろに何気なく視線を走らせて、はっと目を見開いた。
 大きすぎて、一瞬巨大な岩か山肌と思って気付かなかった。少女の後ろに、小山のように大きな怪物が・・・一匹なのに複数の頭を持つ大蛇の魔物が、微動だにしないで何本もの鎌首をもたげていた。少女は、ミミが大蛇に気付いたのを見て、甲高い笑い声を上げた。
「そなたは幸せなおなごよ。わらわの真の姿を見てから、死ねるのだからな」
「真の姿?!では、あなたのその体は・・・」
「そうか、そなたはよそ者だからわからぬのだな。わらわのこの体は、前回の祭りの生け贄。わらわの魂の器よ」しかし、ここで笑っていた少女の顔が、怒りで醜く歪んだ。「なのに、早くも朽ちてきておる、役立たずの器よ。だから次の体が必要なのだ。わらわの魂の器に相応しい、若く美しく丈夫な肉体が・・・」
 少女の顔はまた笑顔になり、ゆっくりと泉の中のミミに歩み寄ってきた。水の中に居ては動きが圧倒的に不利になる。ミミは素早く泉から飛び出し、文字通り無防備な体を一時しのぎに「まもりの霧」で覆った。
 少女の言葉から察すると、後ろの大蛇が本体で、少女の体は前回の生け贄の娘で、大蛇の魂が乗り移っているということになる。それではうかつに傷つけられないと、ミミは唇を噛んだ。しかし、「朽ちてきている」という言葉が、少々引っかかった。
 ともかく、相手が何をしてこようとまもりの霧で一回は防げる。か弱い少女の体ならとりあえず当て身か何かで気絶させようと、ミミは先制攻撃することに決めた。手加減した、それでもミミの華奢な拳には似合わない重いパンチが、相手のみぞおちに入った。
 ひっ、と少女の口から小さく悲鳴が漏れたが、ミミはそれよりも自分の拳がめり込んだ感触の異様さに戸惑った。これでは、まるで・・・乾いた土壁か何かを、殴り付けたような・・・。ぱらぱらと、何かが砕けて落ちる音がする。少女の顔を見ると、腹から首まで上がってきたらしいひび割れが、顎にまで伝っていた。だが、そんな異様な姿のままで、少女は笑った。
「そなた、見た目によらず剛なおなごよ・・・。だがしょせん人の子、わらわの真の姿には勝てぬ」
 その言葉と同時に、少女から、黒い影のようなものが溢れだし、大蛇の方へと吸い込まれていった。それが抜けていくにつれて、少女の体はバラバラと崩れていく。間もなくがしゃりと小さな音を立てて少女の体は完全に崩れ落ち、砕けた白い骨の塊となった。それとほぼ同時に、大蛇のそれぞれの頭の目が赤く光り・・・口を大きく開いて咆哮して、毒牙を剥き出しにした。
『そなたが気絶したときが、その体がわらわのものになる時ぞ。さあ、いつまで持ちこたえられる?』
 やまたのおろちが現れた!

 いくつもの長い鎌首が、ミミに向かってゆっくり伸びてきて、そのうちの一本が、ふいに素早く動いて彼女を巻き取ろうとした。それはなんとかかわしたが、どこに逃げても大蛇の鎌首がある。間合いを取りながら、ミミは何とか冷静さを保とうと呼吸を調えた。
(この魔物は、私の体を必要としている。ということは、手酷い傷は付けたくない筈。恐怖に負けなければ、しばらく持ちこたえられる、きっと)
 とはいえ大蛇の咆哮は凄まじく、様々な魔王と戦ってきたミミでも、ぞっとするものだった。この声も、そして大蛇の複数の頭も、おそらく村からでも聞こえたり見えたりすることだろう。今頃村人たちは、恐怖に怯えているのだろうかとミミは思った。村には近付けさせない、絶対。
 大蛇の首たちの動きから、敵はミミを捕えて締め付け、気絶させようとしているのだと予測できた。それぞれの首から距離をある程度保って避け続けるミミだったが、逃げるばかりではいつかこちらの体力に限界が来る。輿の中でオールマイティーに呪文が使える賢者に転職していたミミだが、大蛇は複数の首を容赦なく使って、こちらに呪文で反撃する間さえ与えてくれない。
(大丈夫、イザヤール様が来てくれるまで頑張れば・・・)
 だが、大蛇は予想外の攻撃をしてきた。ミミの体になるべく傷を付けたくない筈なのに、頭のうちの一つが、燃え盛る火炎を吐いてきた!さすがにそれは避けきれず、ミミのまもりの霧がたちまち消え失せる。これでいよいよ、避け続けるしか本当に手はなくなった。
 大蛇は今度は二方向から火を吹いてきた。しかし、これを避けたら。刹那にミミの思考はめまぐるしく動いた。大蛇の残りの首に、完全に捕まる位置に飛び込むことになる。いくら高レベルでも装備の無い華奢な生身の体が、大木のような蛇の胴体に絞められたら、何秒耐えられるか。せめてわざと焼かれて相手の思惑を潰す方が得策かもしれないが、元来痛みが人一倍苦手な性質は、それを思うだけで怯みそうになる。
 結局その恐怖を抑えつけて、わざと炎を受ける覚悟を彼女は決めた。燃え盛る火炎なら、気絶はしない程度の火傷で済むと言い聞かせて。装備が無いことが、つくづく悔やまれた。
 だが、炎はミミには届かなかった。あわやのところでイザヤールがミミの前に仁王立ちし、かばってくれた。とはいえ彼も、天井裏に身を潜めたり追跡を最優先する為に装備は軽装で、しかもここまで来る間にスネークロードの群れだけでなくビュアール等の他の蛇の魔物たちにも邪魔をされ、傷を負ってボロボロになっていた。それでも彼は、ミミを安心させるかのように不敵な笑みを浮かべて言った。
「遅くなってすまん。・・・今は少々取り込み中のようだから、おまえのその艶姿の理由は後でゆっくり聞こう」
 言葉と同時に素早く外したマントをミミに被せると、イザヤールは地面を蹴って高く跳び上がり、剣を振るって大蛇の首を一本落とした。ミミはそんな彼にベホイムをかけてから、貸してもらったマントで体をくるみ、身構えた。
 首を一つ落とされて大蛇は叫んだが、残った首は相変わらず炎を吐き、牙を剥き、激しく蠢いた。
『お・・・のれ、おのれェ!まさか貴様、わらわのしもべの蛇たちを、全滅させてきたというのか!』
「生憎、ビュアールとの戦闘には馴れているからな」
 ミミからの回復魔法ですっかり傷が癒えたイザヤールは、そう呟いてかすかな笑みを浮かべ、動きを更に軽やかにして大蛇を翻弄した。ミミは自分たち二人にスクルトをかけてから、大蛇の一番真ん中にある一際大きく禍々しい頭に向かって、ドルマドンを放った。すると、どの首も苦しみ、喚いた。これは、とミミとイザヤールは顔を見合わせて頷いた。
「ミミ、私は周りの頭を片付ける、おまえは真ん中のを頼む!」
 そう言ってから更にイザヤールは、ウロボロスの盾の装備を外し、代わりに背中にもう一本背負っていた剣を抜いた。利き手には愛用のすいせいの剣、反対側にははやぶさの剣改。
「これで、一度に三本、首が落とせる」
 呟いて、イザヤールは両手にそれぞれ剣を構えた。
「イザヤール様、私も負けません、お手伝いします」ミミも呟き、魔力を左右の手それぞれに集中させた。「右手にドルマドン・・・左手にイオグランデ・・・合体魔法、ドルグランデ!」
 闇の爆炎と化した魔力が大蛇の真ん中の頭に直撃し、周りの首も弱らせた。すかさずイザヤールは大蛇に突進して、先ほどの言葉通り、一回で三本の首を斬り落とした。そして残り一本となった真ん中の首に、ミミはマダンテを唱え、魔力の全てを解き放った。大蛇は、断末魔の叫びを上げた。
『ばか・・・な、わらわの負け・・・だと・・・』マダンテの大爆発で炭化した首が、がくりと地面にのびた。『口惜しや・・・せっかく、生き永らえてきた、も、の、を・・・つまらぬニンゲンの小娘どもの命で、わらわという神を永遠にできていたと・・・い、う、に・・・』
 それきり、やまたのおろちは、動かなくなった。

 大蛇の・・・やまたのおろちの屍を見つめながら、ミミは呟いた。
「イザヤール様、この魔物は、どうやら生け贄の体に魂だけ憑依させて、本体の寿命を延ばしていたみたい・・・」
「なるほど、奴なりの不老不死に近い術を見つけたという訳か。・・・しかし、魂の転移の繰り返しは、憑依した体に負担をかける。生け贄の要求頻度が増えたのも、とり憑いた肉体の劣化が段々早まっていたからだろう」
「はい、そんなことを言ってました。早くも朽ちてきた、と。・・・村の人たちは、どう思うのかな・・・生け贄は、大蛇の魔物が、長生きする為だけに犠牲になったって知ったら・・・」
 みんなみんな、怖かっただろうに。家族の為に我慢したり、逃げたくても逃げられなかったりして、死んじゃったんだ・・・。それを思ったらミミは涙が溢れてきて、嗚咽で小さく肩を震わせた。イザヤールは、そんなミミを固く抱きしめた。
 そこへ、依頼人である若者と、その恋人が、走ってやってきた。そして、自分たちの「神」が、複数の首を持つおぞましい大蛇の魔物だったことを知った。
「ありがとな。・・・こんなヤツの為に、俺の姉ちゃんは・・・」
 呟いて、彼は唇を噛み、うつむいた。
「あたし、本当は、本当に、生け贄になることが怖かった・・・。助けてくださって、ありがとうございました。あたしたちの為に危ない目に遭わせてしまって、ごめんなさい」
 生け贄になる筈だった若者の恋人は、そう言って深々と頭を下げた。
「やっぱり化け物だったんだな、俺たちの神様は。村の連中だって、この屍を見れば目が醒めるよ。あんたたちにみんな感謝すると思う」
 そうだろうか、ミミは思った。長いこと否応なしに信じていたものを突然失って、自分たちが間違いを犯していたと思い知らされるのは、かなり辛いことではないだろうか。いずれにしても、この若者がよそ者を手引きして、正体が化け物だったとはいえ彼らの神を殺させたと知ったら、村人たちがそれを許すかどうか、心許なかった。だから。
「あなたたちは、何も知らなかったということにした方がいいと思う」ミミは言った。「たまたま来ちゃった冒険者が、ほんとは大蛇の魔物だったあなたたちの神様を倒しちゃったの。そういうことにして。ね?でないと、もしかしたらあなたたちは、ものすごく叱られてしまうかも。そうじゃない?」
「そんな、でも・・・」
 若者と娘がためらっていると、イザヤールは若者の肩をぽんと叩いて言った。
「これから君たちは、『神』の力を抜きで生きていかねばならない。これまで魔物に治水を全て任せきりにしていた分、豊かな恵みを得ることはこの先困難になるだろう。たとえ魔物の支配で生け贄を取られてても、豊かな暮らしの方がよかった、そんなことを言う者も出てくるかもしれない。君たちは、そんな人々の考えを前向きに変えていくという重要な役目がある、我々はそう思っている」
 それでは元気で、そう告げて歩き出すミミとイザヤールに、若者は駆け寄って、ポケットから何か取り出した。
「じゃあせめてこれを持っていってくれ。家の代々伝わる宝なんだ」
 ミミは「パープルオーブ」を手に入れた!
 若者と娘はミミたちの姿が見えなくなるまで手を振っていた。船に向けて歩こうとするミミを、そう言えばおまえは裸足だったとイザヤールは抱き上げた。頬を染めながらも、愛しい腕の上で、安堵の吐息をする。
「ここの『神様』が居なくなって、いい方に変わるといいですね」
「ああ、そうだな」
 きっとそうだと信じて、二人は微笑んで頷いた。〈了〉
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2 コメント

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お久しぶりです (神々麗夜)
2013-11-18 21:50:11
お久しぶりです。今回の追加クエストは神話の大蛇退治やドラクエ3のジパングでのストーリーがモチーフでしょうか?神話で八岐大蛇を退治したスサノオも違いはあれど故郷から離れなくてはならなかったという点はミミちゃんやイザヤール様と共通している気がします。
モチーフの影響か、村も何処か日本風なイメージがしますね。服装も着物の様な気が。

それにしても、人身御供を要求する神って大抵、実は禍々しい化け物というパターンって多いですよね。やはり本当のしあわせは誰かの犠牲の上に成り立つもので無く、一人一人が力を合わせる事で成り立つという意味なんでしょうね。
せめてかつての生贄になってしまった娘達の魂が安らかに眠りにつけますように。
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ありがとうございます☆ (津久井大海)
2013-11-19 00:30:58
神々麗夜様

いらっしゃいませこんばんは☆後書きもどき記事をアップしてからコメント頂いたことに気付きまして、おおっ、補足記事でも更に書き落としたことをコメントでおっしゃってくださった、ありがたや!と感謝真っ最中の津久井です☆

そうなんです、ジパングイベントが元で、閉塞的な地でのクエストにしてみたかったのでそういう意味でもジパング的かなと。神々様のスサノオとの比較の着眼点には思わず唸りました、なるほど~!

確かに実は化け物だった話多いですよね。それはもしかしたら、価値観の変化による神への視点の変化の表れかも、と津久井は勝手に思ってるんですが、これまた後書きもどきで書き落としてましたダメじゃん津久井(笑)

お話の中とはいえ犠牲はやはり悲しいものなので、娘たちを優しく悼んでくださってありがとうございます。たぶん大蛇を倒したことで彼女たちもようやく自由になれたのではないかと思います。
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