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One Step ~ 橋本新企画公式ブログ

179)赤羽の片隅から~無料弁当雑記9/30その1

9/30(木)

最終日の夕方。路上脱出一人目の方が店の前を通りすぎる。それを見つけたスタッフが呼び止め、私が話すことになる。

彼はアルコール依存の治療の為の通院をせず、生活保護費を酒に溶かすので、支援者が毎日1500円ずつ渡している方である。通院するよう通告されているが、拒否しているので、明日の生活保護費が支給されない予定だと話す。支援者と不動産屋には挨拶を済ませ、明日にでも路上に戻るらしい。目が充血していて、酒が入っているのは明らか。「すぐに停止されることは無いし、まだ大丈夫だ」と伝えるが、既に部屋を片付けて荷物を整理したとのこと。寄付品に、トイレ掃除用の道具は無いかと聞いてくる。無いので、100円ショップで購入し提供。トイレをキレイにして部屋を出るのだと言う。

残念だが、気が変わったら相談に来るように伝える。もう我々に会いたくないなら、どこか遠くへ行けばいい。路上で暮らし、呑み友達や見知らぬ人に物乞いをする日々に戻ってしまう。彼は毎月月末には繰り返しこの精神状態になる。ケースワーカーから通告を受け、その度に保護費を切られる不安が増大し、酒に頼る。

しばらくして共に彼をサポートしている支援者(共産党区議)が訪れる。やはり最後通告が出ているが、一度でも病院に顔を出せば明日の保護費は出る状況で、今日までに一緒に病院に行く予定だったが、拒否されたらしい。彼は学生時代にイジメにあっていた。「毎日通院して、長時間病院にいることは、学校生活を思い出し嫌だ」と話したそう。毎日1500円の生活は、酒が呑めて「天国です」とも。

彼が自ら通院するのは難しい。だが、家族では無いので強制的に入院させることもできない。皮肉な話だが、保護費が打ち切られた方が酒を買う金が無くなるので、酒量が減る可能性が高い。

明朝、素面に戻っても考えが変わらなければ……某所に寒空の下、段ボール一枚で寝ていて「屋根のあるところで寝たい」と私に助けを求めたところから始まった彼との物語は、生保申請、ムテイから脱走、アパート入居、テレビ取材、治療と弁当配達などを経て、振り出しに戻ることになる。

毎晩弁当を配達した日々、あれこれと励まし続けた日々、共に泣き共に笑い、語りあった日々は、無駄だったのか。全くそうは思わない。

「色々してもらったのに、すみません」と言う彼に対して、怒りの感情は無い。残念ですと伝え「何度でもやりなおせるんです。また困ったことがあったら立ち寄って下さい」と目を見て訴えた。酩酊している彼に理解できたかは分からない。『無料弁当は終わるけれど、門戸はいつでも開かれている』と伝えたつもりだ。



貴方がどうなりたいかは貴方次第。その気持ちに寄り添い、応援してきた日々を忘れない。努力した貴方を忘れない。区切りとなるが、まだまだ終わったわけじゃない。

貴方は金があると後先考えずに全て酒に使ってしまうという病気なだけ。

ある時期は克服しようと努力したけど、今は諦めている。ただ、それだけ。

またいつか街で見かけることがあれば挨拶して声をかける。そしてその時にできることをする。ただ、それだけ。



生きていれば何とかなる。またねと見送る。

(10/1のTweetより 一部修正)
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