京急杉田駅から少し富岡方面に行ったところに、「YAKURO」というダイニングバーがある。その2軒隣の「美好」では、時々、いなり寿司を買っていたのだが、ある日曜日のこと、この「YAKURO」のドアが開いていることに気がついた。
店頭にはランチメニューの他に、カレーやチリのテイクアウトができる、というような表示も出ている。思い切って中に入ると、カウンターは5~6席、奥にテーブル席という構造であることが分かった。聞けば平日は夜のみだが、土曜と日曜にランチを提供しているとのこと。
この日は時間もなかったので、店内では食べずにチリライスをテイクアウトしてきた。500円ながらなかなか美味しい。これなら次回は店内で食べてみようと思っていたところ、やっとその機会がやってきた。
この日注文したのは本日のスパゲッティ。サラダとドリンクがついて890円だ。カウンターの中で調理をしているのは若い女性。店主はお店のお客さんらで結成した野球チームと一緒に試合に行っているという。
料理を作りながらいろいろお話をしていると、杉田劇場とのかかわりがたくさんあることが分かってきた。
彼女の子どもが小学生で、先日、杉田劇場で行われたコンクールに出演したこと、また、彼女の母親がフルートをやっており、ときどき杉田劇場でも演奏していることなどを聞いた。
さらに、店主はギターの奏者で、お店のバンドを持っているという。
店内奥にはこのようなテーブル席があり、楽器がいくつか置かれている。たまにここでライブをやったりするという話だった。
そんなことを話していると、野球の試合を終えたメンバーが続々と帰ってきた。そこで気になっていたことを店主に聞く。
この写真のことだ。それと「YAKURO」という不思議な店名。
聞けばYAKUROとは店主の高祖父(祖父の祖父)のお名前で、本名は斉藤弥九郎。写真に写っているのがその人だという。江戸時代に練兵館という剣道場をつくった剣の達人だったらしい。
店主がカウンターからこんな本を取り出し、見せてくれた。斉藤弥九郎は練兵館をつくり、桂小五郎、高杉晋作、永倉新八らに剣術を指南していたという。
こんな剣術家がいたなんて、初めて知った。そこで調べてみると、インターネット上に多くの情報が溢れていたのである。国立国会図書館にも彼に関する書籍が保存されている。
それは、大正7年に発行された『幕末偉人斎藤弥九郎伝』。漢文交じりの硬い文章であるが、スゴイ人だったことがなんとなく理解できる。
帰りがけに「ご主人は剣道をやらないのですか?」と訊ねると、こんな答えが返ってきた。
「子供のころは剣道を習っていましたが、それもやめてしまいました。今は竹刀の代わりにバットを振っています」
なかなか面白いことを言う人だ。今度は、土日のランチだけではなく、夜の部にも行ってみたいと思った。
参考ページ:YAKURO
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