老年

満69歳になった。間違いなく老年であるが諦めがつかない。

ロシア民話 ”プーシキン: 死んだ王女と7人の勇士” つづき4

2006-07-08 23:31:46 | Weblog

 

月日は飛ぶように過ぎる
若い王女は
森の中でも退屈を感じない
7人の勇士の家では
夜明け前に親しい群れとなって
兄弟たちは馬で出かける
灰色のかもを射ち
右手を楽しませ
サラセン人を馬から引きずり落とし
タタール人の広き肩から
頭を切り落とす
あるいはピャチゴルスクのチェルケス人を
森から掃きだす。
王女は主婦のごとく
ひとり屋敷で
片づけをし、食事をつくる
娘は男たちに口答えしない
男たちは娘の言うことを拒否しない
こんな具合に月日は流れる。
兄弟たちはかわいい娘を
愛した。娘の部屋に
あるとき夜明けに
7人すべてが入ってきた。
仲間のボスは言った 《娘さん、
あんたはおれたちすべての妹、
おれたち7人全部は、あんたを
愛している、あんたを
みなが嫁にできたら、嬉しいだろう
でもそれはできない、お願いだから
どうにかして仲たがいしないように
ひとりの男の嫁になってくれ
ほかのものにはいとしい妹。
なんで頭を横に振るのかい?
おれたちがいやなのかい?
貴重品とでも言うのかい?》
《ああ、あなたたち、いい人たちね
わたしたちは血を分けた兄妹よ、 ―
王女は話す ―
もし嘘なら、神に命じさせなさい
わたしが誓うように。
どうしようもない、わたしひとの嫁なのよ
わたしにとってあなたたちはみんな同じ
みんな勇ましく、賢いわ
わたし、みんなを心から愛している
だけど別な人に、永久に
あげたの。わたしにはだれよりもいとしい
エリセイ王子に》

兄弟たちは黙って立ちすくんだ
そして頭を掻くのだった。
《これは罪じゃない、許しておくれ、 ―
仲間のボスはお辞儀をしながら言った、 ―
そうなら、もう言いださないよ
そのことを》 ― 《わたし怒らない ―
小さい声で娘は言った ―
わたしがことわったのは悪くないわね》
求婚者たちは王女に頭をさげて
そっと離れて行った、
そしてふたたび仲むつまじく
毎日を暮らしていくのだ。

<つづく>



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