私小説 新・ファミリーストーリー(4)
(病気をつきとめよ!)
(登場人物・場所などはすべて架空です)
病気をつきとめよ(第3話:検便)
昭和生まれの人なら経験があると思うが、小学生の頃、定期的に寄生卵検査があって学校にマッチ箱に”便”を入れて持って行った・・その日は教室が臭かった覚えがある。各県に「寄生虫予防協会」があって、児童・生徒の寄生虫卵の検査が行われていた。それほど寄生虫感染が多かったのは、当時の農業肥料として”糞尿”が使われていたからで、寄生虫症として最も多かったのが ”回虫” や ”12指腸虫” などであり、国民病と言われたほどである。もちろん大人だって同じで、川魚(鮎など)を生食する人に多かったのが“横川吸虫”や “肝吸虫” などであった。また、子供では “蟯虫(ぎょう虫)” が多く、最近(2015年まで)“蟯虫卵”検査が学校で行われていた。
(蟯虫卵)
当時の環境衛生事情は ”不潔” だったけど、”清潔” になるにつれてアトピー性疾患、例えば、スギ花粉症などが増えて来た。すなわち、免疫抗体である血中IgE が高くなっってアレルギー性疾患が寄生虫(回虫)などにとって代わった様だ。
ある時、
眼科の医師から僕(三名金作)にすぐ来てほしいとの連絡があった・・、駆けとけると患者の左目の写真を見せられ・・、
眼科医:
左目の眼球が真っ白で・・、ブドウ膜炎にかかっています。これからステロイドを眼球に注射しようと思いますが、原因が何かを知りたいので血液検査を至急してお願いしたいので、ご相談方々来てもらいました。
三名(僕):
何かの抗体検査でしょうか・・?
眼科医:
一応、通常の血液検査に”HIV” や ”梅毒”などの検査に加えて、「トキソプラウマ抗体」を大至急お願いしたいのですが如何でしょうか?
三名(僕):
一般のルーチン検査や ”HIV、梅毒” なら1時間ほどで結果を出せますが、「トキソプラズマ抗体」は、どんなに急いでも2日はかかります。
眼科医:
患者には、しばらく通院してもらう必要がありますので、なるべく早く検査結果が分かれば助かります。
この患者は、数日前に動物園に行ったとき、野良ネコが多くいて砂埃がしていたそうで、翌日、風邪の様な症状があって、夜中に左目に違和感を感じ目を開けたら周りが真っ白だったと言う。 そして、当院の眼科に駆け付けたと言うことらしい。
翌々日、検査結果が出た、眼科医の診立ての通り「トキソプラズマ抗体」だけが異常に高く、「トキソプラズマによるブドウ膜炎」と診断された。
ここで、この寄生虫 “トキソプラズ症”の話題のペーパー(論文)を以下に紹介しておこ。
***
Fatal attraction in rats infected with Toxoplasma gondii.(M. Berdoy, etc.)
直訳すると、
「Toxoplasma gondiiに感染したラットの致死的誘引(危険な魅力)」
一部を紹介すると、
Here we report that, although rats have evolved anti-predator avoidance of areas with signs of cat presen
T. gondii's manipulation appears to alter the rat's perception of cat predation risk, in some cases turning
their innate aversion into an imprudent attraction.
つまり、
ネズミは猫を避けるべきなのに、トキソプラズマに感染したネズミは猫に誘因・・、恐れなくなる?・・ってことらしい。
要するに、
ネズミは猫を避けるべきなのに、トキソプラズマに感染したネズミは猫に誘因・・、恐れなくなる?・・ってことらしい。どう言う事かって・・、ネズミに寄生したトキソプラズマはシストのまま・・・、成虫になるには猫に感染しなければならない。そこで、トキソプラズマは猫を恐れなくコントロールするって訳だ。そう・・、トキソプラズマに支配されたネズミは猫に恋して、その身を捧げる危険な情事に落ち入るのだ。
多くの人間もトキソプラズマ抗体を持っているようで、特に、"あおり運転"など、ハンドルを握ると人格が変わってヤバクなる人にトキソプラズマ感染者が多いと言う「潜在性トキソプラズマ症の被験者における交通事故のリスク増加:遡及的症例対照試験」がある。
「注意」:あくまでも一論文の知見でり、この患者の場合、砂埃の中に野良猫の糞便が混じっていて、偶然、この患者の左目に入ったのかも知れない、多くのブドウ膜炎は原因不明のようである。ペットとして飼っている猫のすべてが危険と言うわけではない。
次回に続く(第4話:LE 細胞)
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