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What a wonderful day !

日々の感動を綴った記録です。
自作スピーカや、自然農法などにも興味があります。

★SPLの軸外、並びに1/3oct smoothingによる周波数特性★ 3インチユニットを用いたバックロードホーンBLH-PL-lineの製作〈その8〉

2023-12-19 10:34:00 | 自作スピーカたち
吸音材最適化後のユニット軸上30cmの軸上、及び軸外15°、及び30°でのSPL周波数特性を示します。


〈最終的なユニット軸上、及び軸外(15°、30°)のSPL周波数特性、1/12oct smoothing〉

200Hz近傍の深いディップ 、10kHz近傍のブレイクアップピークが目に付きますが、当初の目標に近いSPL周波数特性が得られています。ユニット軸外特性は、30°では10kHz以上で急激に悪化しますが、 15°では軸上特性と殆ど変わりません。

以上のSPLの周波数測定では、スムージングは1/12oct を使いました。人の聴覚分解能に近い1/3octの場合ではどうでしょう。


〈ユニット軸上30cm、100cmでの1/3oct smoothing でのSPL周波数特性〉

ユニット軸上30cmでは、1/3oct smoothingによって鋭いピークやディブは丸められて、より平坦な特性になっています。ユニット軸上100cmでは、測定環境のためか1/12oct smoothingでは特性が暴れてしまいますが、1/3 oct smoothingではキチンと評価できているようです。ユニット軸上のマイクがユニットから離れるほど、マイクから見た開口部とユニットとの距離の差は縮まります。このため、相対的に開口部からの音圧が高まり、低音域では2dB程度高くなっています。また、200Hz近傍のディップ は浅く幅は小さくなり、更に10kHz近傍のブレイクアップピークは4dB程度小さくなっています。このため、全体的にフラットな傾向になっています。

このユニット軸上 100cmでの1/3 oct smoothingの周波数特性が、実際のリスニング状況に一番近いものと思われます。

〈続く〉

★吸音材によるユニット軸上30cmでの SPLの周波数特性の変化★ 3インチユニットを用いたバックロードホーンBLH-PL-lineの製作〈その7〉

2023-12-17 14:45:00 | 自作スピーカたち
吸音材の配置によって、開口部からの音圧特性が大きく変わりました。この時のユニット軸上30cmでのSPL の周波数特性の変化を調べました。


〈吸音材の配置の違いによるユニット軸上30cmでの SPL周波数特性〉

開口部からの音圧を反映した周波数特性変化が見られました。
1)音道の中間部に吸音材を入れると、基音並びに4倍音、6倍音、、、ではピークが小さくなっています。2倍音は全く変わりません。200Hz近傍の大きなディプの形状も殆ど変わりません。
2) 更に、空気室にも吸音材を入れると、基音並びに2倍音、4倍音の共鳴ピークは殆ど変化しませんが、200Hz近傍の大きなディプでは、開口部での2倍音ピークの低周波数側へのシフトを反映して低周波数側にずれ、形状にも変化が見られます。
3) 更に、スロート部に吸音材を追加すると、最低音域の再生に重要な基音と2倍音の共鳴ピークは2dB以上低下して、4倍音以上の高次共鳴ピークも減少しています。200Hzのディプは浅くなりますが、ディプ幅が広がっています。
スロート部への追加前に比べて、全体的にSPL特性が悪化していますが、吸音材の量が多すぎるようです。

以上の吸音材の配置を基にして、更に吸音材の微調整を行いました。調整方針としては、最低音域の再生に重要な基音と2倍音の共鳴ピークは出来るだけ低下させずに、200Hz近傍のディップをできるだけ浅く、狭くなるようにすることです。

音道の中間部の吸音材はそのままにして、空気室とスロート部の吸音材の種類と量を調整しました。最終調整前後でのユニット軸上30cmでのSPL の周波数特性を示します。


〈吸音材の最適化によるユニット軸上30cmでの SPL周波数特性〉

200Hz近傍のディップ は少し深くなりましたが、幅は狭くなり、また、2倍音、4倍音の共鳴ピークは2dBほど高くなりました。
吸音材の最適化により、より平坦な音圧特性に近づきました。

参考までに、吸音材の無い場合と比較して、この吸音材の最適化後の開口部とユニットのNear  Field特性を示します。


〈吸音材の最適化による開口部でのNear  Field特性の違い〉

〈続く〉



★吸音材による高次共鳴ピークの抑制★ 3インチユニットを用いたバックロードホーンBLH PL-lineの製作〈その6〉

2023-12-13 12:58:00 | 自作スピーカたち

開口部でのNear  Field特性に見られた非常に強い高次共鳴ピークを抑制するために、吸音材の配置を検討しました。主な配置場所としては、1)音道の中間部、2)空気室、3)スロート部、並びに4)開口部、です。

これらの場所に吸音材を配置して、開口部でのNear  Field特性の違いを調べました。


〈吸音材の配置による開口部でのNear  Field特性の違い〉

1) 音道の中間部
破線は、音道の中間部に吸音材を配置した場合です。青色で示した吸音材の無い場合に比べて、全ての共鳴ピークは低周波数側に移動しています。ただ、2倍音での変化は少ないです。この吸音材によるピーク周波数の低下は、通常のエンクロージャーと同じです。
一方、共鳴ピークの強度をみると、最低音域の再生に重要な基音と2倍音ピークへの影響は1dB程度と小さいですが、それ以降の高次の倍音ピークは、4〜6dBと大きく低下しています。1260〜1800Hzに見られる一連の定在波でも、10〜18dBと劇的に低下しています。
このように、音道中間部に吸音材を配置すると、高次共鳴ピークや定在波の抑制に非常に効果的な事が分かります。

もう少し詳しく共鳴ピークの変化を見ると、基音と4倍音、さらに高次の偶数次ピークに比べて、2倍音では、低周波数側へのシフトや音圧低下は殆どありません。これは、2倍音、6倍音など、(2n)、n=1, 3, 5•••、で表記される倍音では、音道の中間部は、 空気の振動が生じない節に当たりますが、次数が増えるに連れて節と腹が近接します。2倍音での間隔は60cmですが、6倍音では20cmしかありません。このため、音道の中間部に配置した吸音材で、偶数次倍音であっても、2倍音以外では、空気の振動が抑制されて共鳴ピークが大きく低下するものと考えられます。

2)空気室
茶色で示した特性は、音道の中間部と空気室とに吸音材を配置した場合です。基音のピーク位置は殆ど変わりません。2倍音では、音圧変化はありませんが、低周波数側に5Hz程度大きくシフトしています。この他の共鳴ピークでは主に音圧が、1〜3dB程度低下しています。
このように、空気室内部への吸音材の配置は、音道の中間部への配置に比べると効果は少ない印象ですが、基音には全く影響を与えずに、2倍音のピークのシフトだけに影響を与える、ことが大きな特徴です。
3)スロート部
空気室と繋がるスロート内部に吸音材を入れると、共鳴ピークの低下度合は、2倍音>4倍音>基音≒高次偶数次ピーク、となりました。
スロート部への吸音材の配置は、最低音域の再生に重要な、基音と2倍音の共鳴ピークにも大きく影響を与えるので、吸音材の量や種類を慎重に検討する必要があります。
4)開口部
開口部に吸音材を入れると、その量と種類にもよりますが、全体的にSPLが大きく低下する場合がありしました。

以上の検討から、最低音域の再生に重要な基音と2倍音の共鳴ピークは出来るだけ低下させずに高次の共鳴ピークを減衰させには、吸音材を「音道の中間部」、「空気室内部」や「スロート部」に適切に配置することがポイントになりそうです。

なお、吸音材の検討に当たり、バッフル板を取り外しできるようにしたのは、大正解でした。

〈続く〉



★ Near Field特性 ★ 3インチユニットを用いたバックロードホーンBLH PL-lineの製作〈その5〉

2023-12-09 11:01:00 | 自作スピーカたち

吸音材を入れない状態で、ユニットと開口部でのNear  Field特性を測定をしてみました。


〈ユニットと開口部でのNear  Field特性; 吸音材無し〉

ユニットのNear  Field特性では、ホーンの共鳴周波数に対応したディップが、約73, 170, 270Hzに見られました。(インピーダンスの谷に対応)

また、開口部でのNear  Field特性では、これまで見られた基音、2倍音、4倍音に相当する73Hz、180Hz、及び10dBを超える 290Hzでの共鳴ピークの他に、更に多数の非常に強い高次ピークが見られます。これらは全て、基本音の偶数倍の周波数でした。なお、1260-1800Hzに見られる一連の応答の主体は、音道内部で発生した定在波によるものと推察しています。

ここで今回のバックロードホーンの共鳴挙動について考えてみます。
一端が開いた閉管(共鳴管)では、閉端が空気振動の節に開口部が腹になるので、基本波長は1/4λです。管の長さをLとすると、その周波数fは、f=344/4Lとなります。今回のホーン長は約121cmなので、閉管と仮定すれば、基音の周波数はf=71Hzで、今回のバックロードホーンの基音73Hzとほぼ一致しています。
一方、基音の倍音である、2倍音、4倍音などの偶数次の周波数は、344/4L*(2n)、n=1, 2, 3•••で、両端が開いた開管の振動モードです。スロート部と開口部は空気振動の自由端なので、振動の腹になるのでしょう。
このように、今回のバックロードホーンでは、基音は、一端が閉じた閉管(共鳴管)の周波数で、その倍音は、両端が開いた開管と同じ偶数倍の周波数になっています。倍音が、基音の奇数倍である共鳴管とは全く違う振動様式です。

吸音材を配置しない状態で、馴染みのモーツァルトのピアノ協奏曲などを聴いてみると、周波数特性から受ける荒々しいイメージとは異なり、マイルドでワイドレンジな印象を受けました。男性、女性の声もクリアに聞こえます。ただ、300Hz付近に代表される強い共鳴ピークのホーン的な響が気になりました。

今回のバックロードホーンの設計では、クロスオーバー周波数を188Hzに設計しましたが、この周波数を超えて発生する高次共鳴ピークは音質の妨げになるので出来るだけ抑制したいところです。
〈続く〉


★BLH PL-lineスピーカの製作と初期特性★ 3インチユニットを用いたバックロードホーンBLH PL-lineの製作〈その4〉

2023-12-07 12:19:00 | 自作スピーカたち

エンクロージャー材料としては、12mmのMDFボードを使用しました。

何とか、ほぼ予定した通りに製作することができました。組み立て後の外観画像を示します。塗装は周波数特性評価を行なってから行なう予定です。


〈製作したバックロードホーン〉

早速、作製したばかりのBLH PL-lineの特性を測定してみました。吸音材は入れていません。

まずは、ユニット軸上30cmでのSPL の周波数特性、及びインピーダンスの周波数特性を調べました。


〈SPLとインピーダンスの周波数特性; 吸音材無し; 1/12oct smoothing〉

SPLの周波数変化は、吸音材を入れていませんが、シミュレーションと概ね類似していました。SPLレベルは少し下振れ傾向にはありますが比較的平坦で、また約200Hzや450Hzでのディップの位置や深さも大凡合っています。しかし、最低音域でのSPLは70Hz近傍から急速に小さくなっており、シミュレーションの55Hzとは約15Hz程の違いがありました。このように、実際とは違う所もありますが、シミュレーションはバックロードホーンの設計には欠かせない手段だと感じました。

なお、スピーカユニットPM-M0841CKの欠点と思われた11kHzでの音圧ピークは、このユニットでは比較的低く抑えられています。ユニットによって少し個体差があるようです。

一方、インピーダンス変化を見ると、インピーダンスの谷は、約76、165、281Hzの所にあり、多少のズレはありますが、それぞれ基音、2倍音、4倍音の共鳴に相当していると思われます。今回のパラボリック形状であっても、典型的なバックロードホーンの共鳴特性になっているようです。

次回以降、もう少し詳細にホーン挙動を検討したいと思っています。

〈続く〉