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茨城県南を中心に活動しているジャズビックバンドです

12/23曲目解説⑨

2006年12月22日 10時26分55秒 | ライブのお知らせ
【Black Orpheus】

1959年の映画「Black Orpheus」(黒いオルフェ)の中の「Manha de Carnaval(マニャ・ド・カルナヴァル)」(カルナバルの朝)という音楽です。映画は、大変有名ですね。その年のカンヌ映画祭グランプリ、アカデミー賞外国映画賞を獲得しました。マルセル・カミュというフランスの監督。

この映画は、ギリシャ神話の悲劇「オルフェウスとユリディウス」を下敷きとし、舞台を南米リオデジャネイロのカーニバルに持ってきて、登場人物のすべてを黒人としたものです。ブラジルの詩人ヴィニシウス・ジ・モライスの戯曲です。

ギリシャ神話のパスティーシュですね。西洋の作品は、だいたいギリシャ神話か聖書が下敷きになっているものですが。

下敷きとなったギリシャ神話の物語ですが・・

「オルフェウスは、太陽神アポロンの息子。彼は、父から1つの竪琴をもらい、奏でる技を教わり、その音楽に並ぶモノはいないようになりました。その後、オルフェウスはユリディウスと結婚。間もなく、ユリディウスが散歩をしていた時、アリスタイオスという牧者は彼女の美しさに心を打たれ、彼女をめがけて進んで来ました。彼女は逃げ、草の中で蛇に足を噛まれて死にました。オルフェウスは悲しみ、死の領へ行って妻を探そうと決心。黄泉の国へ行きました。オルフェウスの竪琴の歌に心を打たれた冥界の王ハデスは、彼の願いを聞き入れ、ユリディウスを連れて帰ってもよいと許しました。しかし『2人が地上に帰りつくまで、彼女を振り向いてはならない』という条件がついていました。  とうとう地上の世界の出口へ着くばかりになりましたが、オルペウスはつい約束を忘れて、彼女がまだついてきているかどうかと一目振り返りました。するとたちまち彼女は冥界へ連れ戻されました。オルフェウスも、まもなく殺されてしました。」        
というものです。どこかで聞いたようなお話ですね。
日本神話のイザナギとイザナミの物語に似ています。日本を作った神様夫婦、伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)。イザナミは火の神・軻遇突智(カグツチ)を出産したことで火傷を負い、亡くなってしまいます。イザナギは悲しみ、カグツチを斬殺(怖いですね・・)、イザナミを追って黄泉の国へ行きます。イザナミは帰ることが出来るかどうかを黄泉の神に相談しに行き、イザナギには「姿を見ないように。待っているように。」告げます。しかし、イザナギは待っていることができず覗いてしまいます。するとそこには変わり果てたイザナミの姿。イザナミは怒って追いかけます。イザナギは逃げます。逃げ切ったイザナギは黄泉比良坂で離縁します。そのあと、イザナギが汚れた身体を
洗うと、アマテラス・ツクヨミ・スサノオという日本の中心となる神々が産まれたのでした。

世界の神話には、結構共通点が色々あります。面白いですね。あんまり書くと長くなるので・・・。

この我慢できずに覗いてしまって・・というモチーフは、「鶴の恩返し」やギリシャ神話の「エロスとプシケ」などにも登場しますね。

日本人にもなじみのあるお話ですね。

映画「Black Orpheus」のお話ですが・・

「舞台は、ブラジル・リオデジャネイロ。カーニバルを翌日に控え、街は熱狂的な賑わい。ユリディウスが、地方から従姉のセラフィナの所へやってきます。ストーカーのように彼女を追い回す男から逃げるためでした。市電の運転手オルフェは、街でユリディウスと出会い、婚約者ミラがいるにもかかわらず、一目でユリディウスに心を奪われます。ユリディウスの方も、オルフェに惹かれ、彼らは愛し合うようになります。子供たちから「太陽」と慕われ、ギターの弾き語りの名手でもあるオルフェは、ユリディウスのために歌います。カーニバル当日、オルフェはユリディウスと一緒に踊り、幸福な一時を送ります。しかし、ユリディウスを追いかけて来た男が死神の衣装をまとって現れ、ユリディスは必死で暗闇の中を逃げます。電線にぶら下がり、「死神」から隠れていたユリディウス。ユリディウスと助けようと駆け付けたオルフェですが、暗闇で見えないために電気をつけてしまい、ユリディスは感電死してしまいます。言いようもない喪失感のオルフェは、翌朝、ユリディウスの亡骸を抱きかかえ、美しい丘に登ります。嫉妬のために錯乱状態となっていた、オルフェの婚約者ミラは、オルフェを見ると、石を投げつけ、オルフェは崖から転落死してしまいます。」

というお話・・本当に悲劇ですね。悲劇が、カーニバルの熱狂によってさらに印象づけられる作品です。

この曲は、オルフェがユリディウスのために、カーニバルの朝に、音楽を奏でるシーンに使用される曲です。オルフェが「果てしなく幸せははかない 朝つゆの玉のように」という歌詞を歌います。この曲は、日本でもヒット。日本で初めて紹介されたボサノバ曲なんだそうです。

ちなみに、映画の出演者のほとんどがオーディションで一般から選ばれたそうです。オルフェ役のブレノ・メロはサッカー選手、ユリディス役のマルペッサ・ドーンは歌とバレエの練習をしていた人だそうです。謎のストーカー役は、ブラジルが世界に誇る三段跳びの名プレイヤー。それでカンヌとアカデミー賞受賞とは・・・。ロケもオールブラジルロケだそうです。

監督のマルセル・カミュは、この作品の映画化を、リオのカーニバルを見に行ったときに、決心したのだそうです。カミュは、カーニバルを見て「リオの貧しい人々は町を見下ろすモロ(丘)の上に閉じこもって、金持ちがもたらす文明を拒否していた。私は映画の主人公をこのモロの人々にしようと決心した。彼らは迫害されてきた悲しみと苦しみをカーニヴァルにぶちまける。私はそうした悲哀にギリシャ神話のオルフェを重ね合わせたとき、芸術的な興奮に震えた」と語ったのだそうです。カミュの監督人生は短いものでしたが、南米や東南アジアと西洋を組み合わせたエキゾティズム溢れる作品を作り続けたのだそうです。

この「オルフェウス(オルペウス)とユリディウス(エウリュディケ)」の物語は、色々な分野でモチーフとして使われています。ジャンコクトーの戯曲、西洋絵画等々・・。
それだけ、人の心を打つ悲劇なのでしょうね。

ちなみに、歌詞の一例です。色んな歌詞が存在するそうですが・・

I'll sing to the sun in the sky
I'll sing till the sun rises high
Carnival time is here, magical time of year
And as the time drows near
Dreams leap my heart
I'll sing as I play my guitar
I'll cling to a dream from a far
Will love come my way
This carnival day,and stay hear in my heart

Will true love come my way
On this carnival day, or will I be alone
With my dreams


------------------------------------
Manha, tao bonita manha
na vida uma nova cancao
cantando so teus olhos
teu riso, tuas maos
pois ha de haver um dia
em que viras.

Das cordas do meu violao
que so teu amor procurou
vem uma voz
fala dos beijos perdidos
nos labios teus.

Canta o meu coracao
a alegria voltou
tao feliz na manha deste amor

空の太陽に向かって歌う
その太陽が高く昇ってゆくまで
カーニバルの朝、魔法のようなこのとき
そして夢で私の心が踊る時はすぐそこにある

ギターの音色に合わせて歌う
ずっと前から夢こがれていた
このカーニバルの日に
愛が私のところにやってくるのを
そしてその愛が私の心にいつまでもとどまっていることを

カーニバルの日に本当の愛が私の元に
やってこなければ私はひとり
夢を抱いて




朝 こんなに素敵な朝
人生には新しい歌
ただあなたの瞳を歌う
あなたの笑い声 あなたの手を
だって必ずその日が来るはず
あなたがやってくる日が

ただあなたの愛だけ捜し求めた
私のギターの弦から
流れ出るひとつの声
あなたの唇で失われた
口づけのことを物語る

私の心は歌う
喜びが戻ってきた
こんなに幸せ
この愛の夜明けに







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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2006-12-30 10:24:42
Googleで歌詞を検索して貴殿のページを拝見させていただきました。

Janet SeidelのThe Way You Wear Your Hatに収められているManha de Carnivalが私のお気に入りです。
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