小説的フォールアウト３

アンカーソーを奴隷商人に引き渡し、報酬を受け取った。
取引をした男はどうやらアンカーソーに個人的な恨みを持っているようで
アンカーソーを奴隷にしたのは商売目的ではなく復讐を果たすためらしい。
つまり奴隷は酷い拷問を受けた後、殺されるのだろう。

しかし今この世界で他人のために感情を持つ余裕はなく、
今自分が生き抜くために４人目の奴隷ターゲットを探す旅に出た。

奴隷商人の情報によると４人目の奴隷ターゲットはランカスターという名前で、
ここより南にあるテンペニータワーを住み家にしているという。


コンパスだけを頼りに、とにかく南を目指した。
道中の岩だらけの道なき道、
殺人ロボットや放射能汚染により明らかに凶暴化した奇形動物との死闘で傷ついた身体が
この世界の最南端とも思える場所に辿り着いたとき
テンペニータワーはようやくその姿を現した。

しかしその姿はタワーといえるほどの高さは無く、
２０階建ての、ホテルのような外観をしている。
それを取り囲むようにして崩れた塀が立っていた。


いち早く傷を癒すため、入口を探すこともせず
崩れて低くなった塀を乗り越えて、中に入った。
タワーの住人が敵か味方かもわからないままタワーの入口へ向かうと
近くにいた門番が話し掛けてきた。
「つまらないことはするなよ。」
この世界での唯一のルールであり、同時にタワーに入る許可をもらった。
ここら一帯の見張りをする事がどれほどの疲労を伴うかは、
門番の張り詰めた表情から見て取れた。
一言だけを残し、門番はまた見張りへ戻って行った。


タワーの内部はそれなりに荒んではいたがまさしくホテルのような内装をしている。
大きなエントランスがあり、豪華なシャンデリアも吊られている。
隅々にまで置かれた装飾品の数々が、かつての栄華を物語っていた。

まずは傷を癒したかった。
タワー内の地理もわからず歩き回っているとレストランで医者に出会った。
すぐに話しかけてみると、勤務時間外だからと、最初こそ不機嫌だったが
傷の深さを目の当たりにし、すぐに治療をしてくれた。
無事に回復した体で医者に礼を言い、レストランを出た。


ランカスターを探し、エントランスや部屋、廊下にいる人に片っ端から話しかけた。
１０人目くらいだろうか。
ピンクのスカートを穿き、一際目立った姿の女性に声を掛けると、
その女性は自らランカスターだと名乗った。
警戒心の欠片もない彼女を見て心の中で嘲笑う。
ついに見つけた。