骨のあるヒューマンドラマを観た。
小さな下町の診療所で働く若い女医がヒロイン。
ある日、診療時間が終わって1時間以上過ぎた午後8時に黒人の少女がインターフォンを鳴らす。
切羽詰まった様相がモニター越しに映るが、すでに1時間も過ぎているからとそれを女医は無視する。
「急患ならもっとチャイム鳴らすでしょ!」
一緒にいた若い男性研修医に「あなた患者に寄り添い過ぎよ!」と高圧的な態度で指摘する。
目の前の患者をたまたま見て見ぬふりをした。
この行為が、彼女の医師としての職責に大きな後悔と罪悪感に苛まされる原因となる。
海外映画祭の賞男「少年と自転車」「サンドラの週末」などを手掛けたダルデンヌ兄弟監督による作品ということと
多くの方たちが賞賛している映画なので期待に胸膨らまして観に行ったのだが・・・
ただ展開があまりにも淡々として退屈な映画だった。
もちろん題材として、そしてその表現として秀逸には違いないのだがプロローグからエンドロールまで、
一切音楽を排除して、カメラワークも女医の表情のみを追いかけるだけような手法。
そしてそのヒロインがあまりにも無表情で表現に乏しさを感じたのだが、
彼女が最初から最後までまとっていた何の変哲もないダークな色をしたグレンチェックの厚手のツイードコート。
中に着こんでいる面白くもなんともない単色のセーター。モノトーンのようなどんよりした光と背景・・・
余分なものを排除し主題のみを追いかけた監督の意図が伝わったような気がする。
この映画の英語のタイトルが『The unknown girl』「名もなき少女」とでも訳せばいいのか?
思わず頷いてしまいそうなタイトルだ。
この映画は、あの巨匠ケン・ローチ監督の『わたしはダニエル・ブレイク』でも見られるような
現代ヨーロッパの移民問題や貧困にも触れている。
ヒロインの自責を通して、医師としてというより人間としての誠実さや生真面目さを思い知らされた。
医療人として最も守らなくてはならない「守秘義務」を重んじてた彼女の姿勢にもそれは如実に表されている。
非常に退屈な映画でしたが、いい映画にはちがいない。