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主としてメディア系で新規事業を考えるときのヒント。基本的には竹田茂のメモ帳。

会話は2人が基本

2005年12月29日 | Weblog
数人でお酒を飲みながらとか、大勢の人との会議など、コミュニケーションのタイプは数多くあるが、たとえそういう場だったとしても、日常交わされている会話で最も多いものは「2人で喋る」というタイプのものであることに異論がある人はいないだろう。2人以上が同時に喋っても聞き取れないのだから、あたりまえなのである。

2人が基本、その他はバリエーションだとすれば、ネット上でのコミュニケーションツールとして基本になるものはメーラー以外はあり得ない。そのコミュニケーションを特定のグループのみで利用しやすくするのがグループウエアというオプションだ、という考え方が非常に重要だ。

我々のコミュニケーションは、「その内容にリーチできる範囲をコントロールする」ということと常にパッケージになっている。

・親密な2人だけで共有するここだけの話
・大学時代の同級生でないと意味がわからない会話
・事業開発リスクを共有するプロジェクトメンバー内での会話
・誰に聞かれてもまったく問題のないセミナーでの講演(かなりの確率で面白くない)

つまりネット上のメッセージングに求められる機能はたったひとつ。「そのメッセージの公開範囲を、人間関係に応じて自由にセグメントできること」に尽きる。普段のメールでのやりとりは「その公開範囲を送った人と送られた人の2人に限定します」というメッセージである。で、それを少し広げると、ccやbcc(これはちょっと微妙)を利用したり、メーリングリストを立ち上げたりすることになる。そこにもっと付加価値(スケジュールやToDoリストの共有、プレゼンス、タイムカード、会議室予約、購買予約、ワークフロー管理、プロジェクト管理、回覧板・掲示板、メモ、インフォメーション機能、文書管理・キャビネット、アラート、などなど)をつけたものを「グループウエア」と呼んで、まったく別のカテゴリーの商品のように呼んでいるが、本来、ツールを別にすることで便利になることなど何一つない。

しかし、「メーラー」と言った時に、3ペイン・デザインのoutlookを想像してしまう我々は恐らく勘違いしている。SNSこそがメーラーのユーザーインタフェースに相応しいのである。但し、現在のSNSの致命的な欠点は「ユーザーが関係性をコントロールする主体になりにくい」という点にある。前述のとおり、ここが自由に設定できないとメーラーにはなり得ない。

コンテナの性能

2005年12月25日 | Weblog
さて、文脈や状況が分かったところで、コンテンツをどういうコンテナで(に)届けるかを検討する。コンテナとはコンテンツを再生する仕組みや機械だと簡単に割り切っておく。

・電源を必要とするか
・片手で利用できるか。ポータビリティ(可搬性)を持っているか
・手に馴染むか(柔軟性)。あるいは姿勢への寛容度が高いか
・ランダムアクセスできるか
・ブックマークが簡単にできるか
・それ自体に書き込むことができるか
・クリッピングが容易か
・保存が簡単か(情報の定着性)
・検索は容易か
・ボリュームが把握できるか(情報を収集するときに想定される必要な時間がイメージしやすいか)
・ディスプレイサイズとその解像度
・重さ、薄さなど
・ディスポーザブルか(気軽に捨てられるか)
・単位情報あたりのコスト
・耐久性
・時間をコントロールできるか
・他のユーザに転送・伝送が容易か
・立ち上がりスピードと情報へのアクセシビリティ
・ザッピングできるか

それぞれの項目で既存メディアを比較してみてほしい。新聞や雑誌などの、紙という物性に依存度の高いメディアは極めて優れたコンテナであることがよくわかる。逆に、パソコンなどはコンテナとしては極めて不完全な発展途上の機械だと言えるだろう。

ギフトと文脈

2005年12月24日 | Weblog
すべてのコミュニケーションはギフトに置き換えることができる。慌しい年末の街中を走り回る宅配便のトラックから運び出される数々のダンボール箱を眺めていて、ふとそんな気がした。

そもそもプレゼントやギフトは想いやメッセージを形にしたものだが、目に見えない形のギフトがたくさんあるのはみなさんご存知のとおり。もっとも多く交換されているギフトは「言葉」だろう。朝の「おはよう」という挨拶はみんなが気持ちよく過ごせるように送られるギフトとしてのコミュニケーションだし、尊敬できる先輩からの叱咤激励はそのままエネルギーになるのを実感できる。これに色や形、重さ、ラッピングなどが加わると可視化されたコミュニケーションとしてのプレゼントになる。

クリスマスプレゼントに専用のラッピング用紙が利用される、というのは、内容物よりはコンテナあるいはコンテクストがメッセージの主役になるというわかりやすいサンプルかもしれない。さて、状況や文脈はどのような要素から構成されるだろう。

a)時刻
b)緯度経度(位置情報)
c)季節や気温、湿度
d)空間(床と壁と天井の状況)
e)地域性や風土、視覚的印象
f)体調、気分、体性感覚や五感
g)年齢(経験)や性別
h)記憶や記録
i)状況を構成する人間関係(ひとりか、グループか、不特定多数の1人か......)
j)所得などの経済的状況(可処分所得、あるいは財布にいくら入っているか、など)
k)趣味嗜好あるいはそれを裏付ける(購入などの)実績
l)(主として他人の)評価

これらがパラメータとなって文脈は構成される。我々は、上記の要素を感覚的・総合的に判断してメッセージやギフトをを受け取ったり差し出したり、という相当複雑な作業を行なっていることになる。しかし、効率を重視したビジネスモデル構築という観点から利用可能な要素になり得るのは、個人を特定することなく比較的厳密に観測できるa)とb)だけかもしれない(しかし、a)とb)だけでも相当なことはわかる、とも言える)。その他の要素は本人からの曖昧な申請に頼らざるを得ず、あまり信用できない。