瞳を開くと、隼人はしばらく寝たままの姿勢を続けた。この日の朝の冷え込みはこの冬
一番で体は起きることを嫌がっている。
ただ、体を起こさない理由はそれとは違った。隼人はこれまでに自分に起こった記憶を
昔のものから引き出せるだけ引き出していく。福治美月との思い出、進士真奈美との思い
出、そして福岡結愛との思い出。基本的には思うような人生ではなかったが、彼女たちと
の時間は楽しいものだった。
壊したくない思い出は山ほどある、それでも決断は迫られている。真奈美か結愛、どち
らかを選択しなければならない。どうしたいかは決まっている、それによって失うものも
分かっている。
それに変えても守りたいもの、それを守るんだ。
「ノーベルマン」HP
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