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名言を愛でる余裕が、人には必要だと思うので

名言、名台詞に接した瞬間に備忘するためのページ。主観たっぷりで。

グロテスク 桐野夏生

2008-06-01 | 桐野夏生
大人になっていないわたしたちは、傷付けられるのを何かで防御し、さらには攻撃に転じなくてはならないのです。やられっ放しではつまらないし、屈辱を抱えたままでは、この先、長い人生を生きていけなくなってしまうかもしれない。だから、わたしは悪意を、ミツルは頭脳を磨くのです。そして、ユリコは幸か不幸か、最初から怪物的な美貌を与えられました。でも、和恵は何もないし、磨かない。ええ、わたしは和恵に同情なんかしたことはありません。和恵はどう言ったらいいのか、つまり、この厳しい現実というものに対して、無知で無神経で無防備で無策なのです。どうして気付かないのでしょう。グロテスク

「グロテスク」 桐野夏生

2008-06-01 | 桐野夏生
「そうそう、いつも言ってるんですよ。お前、男の子なんか大学に行けばいくらでも付き合えるぞって。Q大生なんだから、よりどりみどりだぞってね」
さあ、どうかしら。わたしは大学生になった和恵の不恰好さ、不器用さを想像して笑い出しそうになりました。努力を信じる種族は、なぜにこうも、楽しいことを先へ先へと延ばすのでしょうか。手遅れかもしれないのに。そして、どうして他人の言葉をいとも簡単に信じてしまうのでしょう。グロテスク

OUT 桐野夏生

2006-12-11 | 桐野夏生
「一人で出て行ってしまうから。自由になりたいから。」「一人になることが自由になることでしょうか」「今はそう思ってる」「寂しすぎます。可哀相」「でも」「私は可哀相じゃない。私はじゆうになりたかったから。これでいいOUT 上 講談社文庫 き 32-3

OUT 桐野夏生

2006-12-06 | 桐野夏生
おめえ、足立の中学出てゾク入って、それだけではぐれてんじゃねえか。今、おめえは街金なんかやってる。俺はヤクザだ。はぐれっぱなしじゃねえか。ていうより、もうオヤジたちからすぽいるされきってんのよ。でもな、そういうはぐれた奴は、村上龍とか女子高生と同じなんだよ。かっこいいんだよ。わかるか、これ。OUT 上 講談社文庫 き 32-3

天使に見捨てられた夜 桐野夏生

2006-12-05 | 桐野夏生
冷たく乾いた風とともに、3丁目のデパートの方向からクリスマスソングが流れてくる。毎年繰り返されるこの年中行事は、いつも、この時期には何をしていたのだろうと振り返るきっかけを作ってくれる。ちなみに、去年は北海道の父のところの客となっていた。あの年だけは年末を一人で過ごす勇気がなかったのだ。弱虫め、と自分を呪った。天使に見捨てられた夜

顔に降りかかる雨 桐野夏生

2006-11-30 | 桐野夏生
夜のドライブが好き。なんだか自分を問われる気がする。おまえは何者だ、そしてどこへ行くのだ、ってね。それを考えながら運転していると、闇の中を進むことが、まるで時間を切り裂いて行進してるような気分になってきて、だんだん元気になるの顔に降りかかる雨

水の眠り、灰の夢 桐野夏生

2006-11-26 | 桐野夏生
あなたは遅れて入って来た時、ここでは誰も信用しないぞ、という顔をしていらした。後藤さんは盟友のはずなのに、頼るという顔でもない。大概の人間は不安な時は誰か頼る人間を探そうとする。が、あなたは最初から一人でやるつもりだった。なかなかだ、と私は思ったのです。水の眠り 灰の夢

柔らかな頬 桐野夏生

2006-11-25 | 桐野夏生
手に手を取って見果てぬ夢を見る。恋愛は二人を互いの虜にし、自由にする。二人だけの世界で自由にするのだ。他の世界との軋轢や戦いがやってきた時、二人がより強靭になるためには恋愛だけでは足りなかった。もうひとつ何かが必要だった。カスミはそのために戦おうと手を差し伸べてくれたのに、石山が臆したのだ。柔らかな頬〈上〉