枯淡

ざっくりと素肌にカシミアセーターを着るような旅でおわりにしたい/里

『短歌』

2022-07-25 17:11:06 | 短歌
野田里子歌集『紙と鉛筆ときみ』
 
    ほどいてはまた編みすすむセーターの胸のあたりで春がちかづく
 
 新聞歌壇の投稿からスタートした作者。セーターを編み直す中で寒さが緩んできたのか。残念に思うよりもどこかで弾んだような明るさがある。
 
  束ねたるミモザをだいてあなたへとむかっています青い空です
 
 こころみに息を殺して鍵をさす表札のないわたしの居場所
 
  はずしおく指輪は楕円の影をなし死者をみおくる霜月の午後
 
 一首目のようなのびやかで明るい歌が作者の持ち味なのだろうが、その中にすっと入る影のある歌に惹かれた。誰からも遠い居場所で心を休め、日常に戻るのだろう。
 
 
(令和4年5月2日 ミューズ・コーポレーション 税込一七六〇円)
角川『短歌』2022/8月号 歌集歌書を読む 後藤由紀恵
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『紙と鉛筆ときみ』 | トップ | こんにちは赤ちゃん »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌」カテゴリの最新記事