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資料紹介 「中華人民共和国人民武装警察法」について 

2017-03-17 23:54:39 | 中国軍事
写真は「高考」(中国版センター試験のようなもの)会場警備する武警と民警


・はじめに

以前書いた「中国人民武装警察部隊について」の末尾で、武装警察の法的な立ち位置について紹介する。といってましたので、ここでは以下の資料を紹介いたします。

海保大研究報告第55巻1号(2010年11月) 「中華人民共和国人民武装警察法」について越智 均 四元 吾朗
http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/jcga/metadata/11832

武装警察という名前から、重武装の「警察官」のような印象を受ける武警ですが、実際の所違うようです。

公安と合同で警備を行う武警。このように民警部隊と合同で警備活動を行うことも少なくはない。

・中華人民共和国武装警察法について

中国人民武装警察部隊について」で紹介してきた通り武警の内部構造は複雑であり、その任務も多岐に渡ります。しかし、09年以前に制定されていた武警関係の法律はあくまでも、武警の内部規定だけであり外部組織(公安や解放軍)との関係が、法的に制度化されていなかった。また、武警に捜査権はあるのか?あったとしてそれは公安とはどう違うのか?といった問題が存在した。
こうした中で、09年に制定された「中華人民共和国人民武装警察法」により、武警はようやくその任務や性格が法律で規定された。
なお制定以前の武装警察は、下にあげた個別の法律等を根拠に、任務を執行していた。

武装警察関連法律(中国安全保障レポート2014より)

この「中華人民共和国武装警察法」は、全七章三十八条からなる。この中で、「公安との法的関係」を見るために、第七条、第十条、第十一条、第十四条を、見ていく。

武警法第七条 人民共和国武装警察部隊は次に掲げる安全保障任務を遂行する

(一) 国家が定める警衛の対象、目標、及び重大な活動の武装警衛

(二) 国家経済と人民の生活に関する重要な公共施設、企業、倉庫、水源地、水利施設、電力施設及び通信中枢の重要部分にかかる武装守衛

(三) 主要交通幹線の重要地点に位置する橋梁、トンネルの武装防御

(四) 監獄及び看守所周囲の武装警戒

(五) 直轄市及び周辺自治区の人民政府の所在する市その他の重要都市における重要区画、特別時期の武装巡回

(六) 公安機関、国家安全機関、司法機関、検察機関、及び審判機関の法に基づく逮捕、追跡、及び護送の任務への協力、他の関係機関の重要な護送任務執行への協力

(七) 暴動、騒乱、深刻な暴力犯罪事件、テロ襲撃その他社会安全に係る事件処理への参加

(八) 国家が付与するその他安全防衛任務


武警法第十条 人民武装警察部隊が県級以上の人民政府公安機関の配置に基づき安全保障任務を執行するときは以下の処置をとることが出来る

(一) 警戒区域を出入りする人員、物品及び交通手段に対して検査を行い、規定に基づき出入りを許可されないものを阻止すること。出入りを強行する者に対しては必要な処置を講じて阻止すること。

(二) 武装巡回中、現地の指揮官の同意を得て、違法または犯罪の嫌疑のあるも人員に対して現場尋問及び書類検査を行い、疑わしい物品及び交通手段に対して検査を行うこと。

(三) 道路交通管制又は現場管制の執行に協力すること

(四) 社会秩序又は任務執行の対象に安全に集団で危害を与えるものに対し必要な処置を講じもってこれを制止し又は排除(解散)すること。

(五) 任務執行の必要に応じて、関係する組織又は人員から関係状況を聴取し又は現場において必要な偵察を実施すること。

武警法第十一条 人武装警察が安全保障任務を執行する場合において、以下の情状を有する人員を発見した時は、現場指揮官の同意を得て、速やかに制圧するとともに、公安機関、国家安全機関その他管轄権を有する機関へ引き継がなければならない

(一) 犯罪を行っている者

(二) 指名手配されている者

(三) 公共の安全に危害を及ぼす物品を違法に携行している者

(四) 任務執行の対象の安全に危害を与える行為を行っている者

武警法第十四条 人民武装警察部隊が公安機関又は国家安全機関等任務執行に協力するときは、協力する機関の決定に基づき犯罪被疑者、被告人又は犯罪者の身体及び居所並びに犯罪被疑者、被告人犯罪者又は違法な物品を隠匿した疑いのある場所、交通手段等の操作に協力するものとする。

これらの条文で、書かれているように仮に違法行為や犯罪行為を現視し、一義的には当該行為を制止したとしても、武装警察は速やかに管轄機関へ引き継がなければならない旨を規定している。このことはこの法律が人民武装警察部隊へ「司法警察権」を与えていないことをはっきりと示しているのである。

・中華人民共和国武装警察法の問題点

「中華人民共和国武装警察法」により、人民武装警察部隊には司法警察権がない事が確認された。しかし、ここで問題になるのは、人民武装警察部隊の中の公安機関部隊の職権である。
人民武装警察部隊には、公安部の指導を受ける公安現役部隊が存在している。
彼らは公安部指揮の下で、各々が自らの職権の範囲内で主体的に法執行をしているという現実がある。この事は、「人民武装警察部隊」を「人民警察(民警)」とは一線を画す特別な存在と規定している中で、人民武装警察部隊として公安現役部隊が、公安部の指揮下で法執行を行っていることに、なってしまい法的配慮に欠けているという現状が浮かび上がってしまう。
このことは、「人民警察法」の定義する「人民警察」に公安現役部隊を含まれていると解するか、「中華人民共和国武装警察法」にいう「武装警察」に公安現役部隊が含まれていないと解するのどちらかが必要になってしまう。

・感想と見解
「武装警察」という名前から、欧州の国家憲兵のような物を想像してしまいますが、あくまでも公安機関を実力で補佐する部隊。わかりやすく言えば国営警備会社、のような感じのようです。
国境警備を担当する公安現役部隊である公安辺防は、現在、麻薬とテロリストの流入という問題に直面しています。これらの問題の矢面に立っている彼らの、職権の動向を、見ていくのも中国の安全保障を見ていくうえで一見の価値があるでしょう。

広東辺防支隊の押収した700kg以上の覚せい剤。中国国内での麻薬問題は深刻化しており武警や公安に多数の犠牲者が出ている。


検問訓練を行う新疆辺防部隊。不安定な地域を国境に抱える西部地域での警察官の国境警備は重要だ。

1 コメント

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Si go i (***)
2017-11-04 08:06:03
作为一个中国人,我竟然还没有你爱中国军队,我很惭愧.LOL
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