早速、私たちは並んでいる郵便受けを端から順番に見ていった。
本当はリンと手分けしたいところだけど、今は出来ない。手を離すと身体の粒子がバラバラになるかもしれないということだった。今改めてそのことを思い出し、思わずリンとつないだ手に少しだけ力が入る。
7階建てのマンションで、各フロアに10部屋ほどある中規模のマンションだったので、それほど時間をかけずに私たちはアサダさんの部屋を突き止めること . . . 本文を読む
次元移行をしてクッキーに連れられ移動してきた私たち。
眼下にはアサダさんがいると思われる白いマンション。
どれくらいの時間がかかったのか、私には不思議と掴みかねた。
次元移行中は、どうやら時間の感覚も普通の世界のものとは少し違うのかもしれない。
私は少しずつ、このふわふわとした感覚を伴って空中に浮かんでいるこの状態にも馴れてきたようだった。
「よし、このまま下に降りよう」
私 . . . 本文を読む
私はアサダさんの家を知らなかった。勿論リンも。
でも、リンはだからクッキーを連れてきたのだと言っていた。
クッキーが私の家にあったアサダさんの写真から、アサダさんの“匂い”ならぬ“磁気”を嗅ぎ取り、それを辿ることでアサダさんの居る場所まで行けるということだった。
ここからは、クッキーの出番だ。
「頼んだぞ!」と私が白いクッキーの顔を見て言うと、「ワン!」と応えてくれた。
「じ . . . 本文を読む
夢中に走りながら橋爪部長の元を駆けながら離れていく私たち。
隣で走る、成長したリン。握っていた小さなリンの手も、少しだけ大きくなっている。
リンと橋爪部長が見せてくれた親と子の絆の奇跡。
それを目の当たりにした私は、何か得体の知れない大きな力を与えられたような気持ちになった。
いや、正しくは、思い出したと言った方が良いのかもしれない。
自分にとっての純粋な親への感情、子どもの頃の . . . 本文を読む