「女」と呼ばれる女がいる。
僕は、それが誰だか知らない。誰だか知らないけれども、確かに、そこにいるのだ。
もうこの家に帰ってきて1年ほど経つが、一度も見たことがない謎の女なのである。
僕がフルートを吹き鳴らしていると、ふすま一枚隣の部屋から声が聞こえてくる。
僕が風呂に入っていると、廊下をパタパタと走り去っていく。
食卓に謎の料理が置いてあるので、これはいったい何なのか、誰が作ったものなのかと聞くと「女」と一言だけ返ってくるのである。得体の知れないものなので、もちろん僕は、食べない。
ところが先日、事態は急展開を迎えた。
階段を上ったところで、ふと前を見ると、誰かがこっちを見ていた、そしておもむろに話しかけてきたのであつた。
女、だった。
女はしばらく話し続けた。僕はわけがわからなかったので、暗い階段を上ったところに突っ立っていたのだが、女はようやく人違いだと気づいて、わーと声を上げたのだった。
女は、僕の予想に反して、綺麗なおね~さんだった。
だが、僕はまだその素性を知らない。分かっているのは、それが「女」と呼ばれる女であり、綺麗なおね~さんだった、ということだけだ。
つづく
僕は、それが誰だか知らない。誰だか知らないけれども、確かに、そこにいるのだ。
もうこの家に帰ってきて1年ほど経つが、一度も見たことがない謎の女なのである。
僕がフルートを吹き鳴らしていると、ふすま一枚隣の部屋から声が聞こえてくる。
僕が風呂に入っていると、廊下をパタパタと走り去っていく。
食卓に謎の料理が置いてあるので、これはいったい何なのか、誰が作ったものなのかと聞くと「女」と一言だけ返ってくるのである。得体の知れないものなので、もちろん僕は、食べない。
ところが先日、事態は急展開を迎えた。
階段を上ったところで、ふと前を見ると、誰かがこっちを見ていた、そしておもむろに話しかけてきたのであつた。
女、だった。
女はしばらく話し続けた。僕はわけがわからなかったので、暗い階段を上ったところに突っ立っていたのだが、女はようやく人違いだと気づいて、わーと声を上げたのだった。
女は、僕の予想に反して、綺麗なおね~さんだった。
だが、僕はまだその素性を知らない。分かっているのは、それが「女」と呼ばれる女であり、綺麗なおね~さんだった、ということだけだ。
つづく