「君を愛してる」と言いかけた時
いつも同じように、終わる君の夢
言い出せなかった、大きな悔いが
いつまでも残る。あの若い日は、
先へと進まない
いつもいつも、途切れた映画のように
後味悪い、夢のいたずら
30代前半に作った自作曲『夢のいたずら』という歌詞の一部である。
その当時、高校時代好きだった人に、潜在的な未練がまだ残っていたのか、よく彼女の夢を見たものだった。その内容はこの詞にあるとおりで、「おれ、お前のことが…」と言いかけた時に終わってしまうのだ。
頻繁にそういう夢を見るので、「もしかしたら、彼女のほうが、何かぼくに訴えたいことがあるんじゃないか」と期待したほどである。しかし、現実には何も起こらなかった。
結局、いつの間にかそういう夢は見なくなり、ぼくの描いたドラマは、はかなくも想像だけに終わってしまった。
2,
昔の人は、好きな人が夢に出てきたら、相手も自分のことを思ってくれていると判断したらしい。万葉集の防人の歌などに、そういうことが書いてあった。それを読んだ時、「ああ、そうだったのか!」と信じたものだった。
ところが、ぼくの夢には、あまりに多くの女性が夢に出てくる。その中には好きでもない人もいる。いや、好きでない人がほとんどだ。
結局、
「好きでもない人が出てくるのはおかしいし、こんなに多くの人に思われているはずもない」と思い至り、馬鹿らしくなってそういう考えを捨てることにした。
3,
小さい頃は、よく空を飛んでいる夢を見たものだ。それで、ぼくは空を飛べるものだと思ってしまった。試しに、2階の階段から飛んでみたことがある。一瞬体が宙に浮いたように思えた。が、飛べなかった。
最近は、念力を使う夢をよく見る。手も触れずに、コインを曲げたり、悪党を倒したりやっている。
夢から覚めたあと、ぼくはそういう念力を以前から使っていたように錯覚するのだ。ぼおーっとした意識の中で、手を振ったり、指をひねったりやっている。それを見ていた嫁さんが、「何しようと?」とぼくに声をかける。それでやっと目が覚める。
まあ嫁さんだからいいようなものの、これが他人だったら、その人は一生ぼくを変な目で見ることだろう。もしかしたら、こういうことも、夢のいたずらなのかもしれない。
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