その言葉が初めてぼくに対して使われたのは、高校1年の夏休みだった。ちょうど横須賀の叔父の家に遊びに行っていた時のことだ。
当時叔父の家には風呂がなかった。そのため、叔父の家に滞在中は毎日銭湯に通っていた。そういうある日のことだった。
その日は叔母といっしょに銭湯に行っていた。先にぼくが風呂から上がったようで、外に出てもまだ叔母の姿はなかった。そこで叔母が上がってくるのを待っていたのだが、その時女湯の出入り口からから2,3歳の小さな女の子が出てきた。
出入り口の奥から「○○ちゃん、待ちなさい」という声が聞こえた。その声の持ち主は、おそらくその子の母親のものだったろう。しかし、女の子は言うことを聞かず、とことこと通りに向かって歩き出した。
ちょうどぼくの前にさしかかった時だった。
女の子はぼくの存在に気づいたようで、そこで立ち止まった。そしてぼくのほうを見て、満面の笑みを浮かべ、こう言った。
「おじちゃん」
高校1年とはいえ、誕生日が来ていなかったので、ぼくはまだ15歳だった。いくら言葉の意味のわからない女の子が言ったとはいえ、その時のショックは大きかった。「おにいちゃんやろ」と言おうとしたのだが、そのせいで口が開かなかったくらいだ。
その後は「おじちゃん」などという忌まわしい言葉で呼ばれることは、あまりなくなった。それは、頭が真っ白になった今でもそうだ。
まあ、「おじちゃん」と呼ぶ人が、まったくいないわけではない。しかし、そういう人たちは、ぼくのことを何と呼んでいいかわからずに、とりあえず「おじちゃん」と言っているだけで、愛称として「おじちゃん」と呼でいるわけではない。
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