吹く風ネット

終業式の日に

 終業式の日にもらうものの一つに、通信簿というやっかいなものがあった。中には互いに見せ合っている者もいたが、ぼくの場合、自慢できるような点数をもらっているわけでもなく、また、先生の寸評が誰のよりも手厳しかったので、誰にも見せたくないし、見られたくもなかった。

 家に帰ってから、その誰にも見せたくない見られたくない通信簿を、一番見せたくない見られたくない親に見せなければならず、それが憂鬱だった。
 父兄面談で親はすでに見ているので
「今学期は通信簿はなかった」
 などという嘘をつくわけにもいかぬ。通信簿を見せると、決まって小一時間は詰められる。その時間は必ず正座をさせられ、言い訳は一切許されず
「勉強します」
 と約束するまで解放されない。
 解放されたあとも、テレビを見ていると
「さっきの約束はどうなったと?」
 と言われ、マンガを読んでいると
「夏休みはどこにも連れて行かん」
 と言われ、想像するだけでウキウキワクワクするおよそ40日間に、暗いフィルターがかかってしまう。

 しかし、父兄面談ですでに見ているのなら、何でその日にそのことを言ってくれないんだ。と、いつも親を恨んでいたものだ。

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