素晴らしき日々

一切の生命が幸せでありますように。

『いいひと、辞めました』ふかわりょう著を読んで。

2024年04月21日 | 読書

正直なところ、個人的にあまりテレビを見ないので、ふかわりょうさんが、どんな見かけでどんな芸をするのかも全く知りませんでした。

では、なぜ本を買ったのかといえば、私は賛否両論ある苫米地英人さんが好きで、ある日ネット検索していたら、苫米地さんが出演しているバラ色ダンディというテレビ番組を知ったのです。あの、個性的で頭の回転が速くて強烈な苫米地さんに対して、微妙なちから加減で相手をする、このMCは誰だ?あ、この人がふかわりょうなのか、と知ったのです。まるで太極拳でもしているようなこのMC、とても興味深い人だと思ったのです。

それをきっかけに何冊かふかわりょうさんのエッセイを読みましたが、その中に、『I'll Remember April』という作品があり、その中で使われるメタファーが上手く、読後のふわーと無意識に触れる感じがとてもよかったので、この方が小説を書いたら面白いだろうなあと期待していたので買いました。

『いいひと、辞めました』の第一印象は、文体が水野敬也さんに似ているな、でした。何かに悩み、真剣に自分に向き合って変えようと取り組む男性主人公という設定が、両氏の作品同士に出てくる登場人物の共通点ゆえに、文体が似たように感じるのかもしれません。慶応卒で年齢が近いのは偶然でしょうか。

あくまでも個人的な意見ですが、いいひと、には二種類あると思います。ひとつは相対的ないいひと、もうひとつは絶対的ないいひとです。そして、残念だけど、絶対的ないいひと、というのはおそらくこの地球上にはいないのではないかと思っています。絶対的ないい人は、この弱肉強食の食物連鎖世界では生き残るのがほぼ無理だろうと推測するからです。もし、絶対的ないい人がいるとしたら、ヒマラヤの奥地か沖縄の屋根がなくても暮らしていけるような場所で、落ちた木の実や熟れたくだものだけを食べて、ひっそりと誰にもかかわらずに暮らしていると思います。

相対的ないいひとは、ある特定の場所において、その環境で、その共同体に受入られるベストな行動がとれる人でしょう。つまり、空気が読める人。これは本来の性格が極悪だとしても、それをいったん脇に置いて、その場その場で臨機応変に、善行為が出来る人のことです。

いい人がモテないという論点が、ふかわさんの新刊に出て来ます。これはうなずけます。人間は、業が深いといいますか、自分にとって悪いものほど好み、止めにくく、自分にとって良いもの・ことほど行いにくいからです。これは毎日身に染みてわかります。身体にいい手作りご飯を食べようとしても、ジャンクを食べてしまうような、悪いと分かってるものほど惹かれる。人間の業ですよね。

だから、当然いい人はモテません。また、他人の悪事ほど、より責めたくなるのは、自分のなかの業がチャラになるような気がするからかもしません。「あいつよりは、自分のほうがマシだ」という、他人を叱責することによる代償行為、すり替えが起きるからかもしれません。

達磨大師が、瞑想の修行をしすぎて自分の足が腐ったことに気が付かなったという逸話があります。事実かどうかわかりませんが、あれは「厳しくし過ぎるなよ」っていうメタファーなのかもしれないと思うことがあります。よりよい自分、よりよい社会にしたい。でも、出来ない自分も、出来ない人がいても、責めるなよ。足が腐っても気が付かないほど、追い求めるなよ、と。いい加減(よい加減)、中道を大事にしようよ、というメッセージなのかもしれない、と思うのです。

それから、いいひと及びいいひとになろうと日夜努力している方は「豚に真珠」に気をつけましょう。「豚に真珠」の意味は一般的に、豚に真珠を見せても、その真珠の良さが分からない、というように理解されていることが多いです。が、本来は仏教から来ています。世の中には人の良さに付け込んで私腹を肥やす豚がいる、という意味です。善行為に励む、善い人になろうと努める人を利用して自分はいい思いをしようとする人のことを指します。そのような豚人間からは一目散に逃げましょう。そのような豚人間には、真珠(智慧)の良さが分からないのです。また、自分も豚人間にならないようにしようと気をつけています。

一切の生命が幸せでありますように。

それぞれがそれぞれの場所で、最高に幸せでありますように。



ふかわりょう『I'll Remember April』

この曲と出会ったのは 20歳の頃。 『日曜のほとり』の帰り道に、 出会った一枚の葉。 I'll Remember April 今日も楠…

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