【ネタバレ】
◎「エゴイスト」
「愛は身勝手。」
2023年2月10日(金)公開、監督は松永大司、脚本は松永大司と狗飼恭子、原作は高山真、R15+、120分。
鈴木亮平(斉藤浩輔の役)、宮沢氷魚(中村龍太)、阿川佐和子(中村妙子。龍太の母、シングルマザー)のほか、中村優子(斉藤しず子。浩輔の母、故人)、柄本明(斉藤義夫。浩輔の父)、ドリアン・ロロブリジーダ(浩輔の友達でゲイ)など。
総合評価は、上中下で上くらい。
テアトル新宿にて。
○龍太を演じる宮沢氷魚さんのたたずまいが特に良かったです。
・手持ちカメラなのでしょう、画面が終始少し揺れています。ドキュメントタッチな印象を受けます。浩輔の気持ちの揺れでもあるのかも知れません。
アップが多いです。特に顔のアップが多いです。浩輔の主観ということかも知れませんし、浩輔の視野の狭さかも知れません。
○浩輔は愛するということがどういうことか分からないと妙子に言いましたが、妙子は、それは愛しているということだという意味のことを言っています。
互いに一目惚れな様子だったこと、直ぐにHをしたこと、それは見ようによっては互いに互いをHな目つきで見ていたとも取れる描き方だったことから、序盤は体目当ての関係の可能性を残しつつ見ていましたが、少なくとも中盤からはそうとは思えない関係でした。
浩輔の気持ちや態度は愛だと思うんですけど。
○Hですが、最初から何回目かまでは龍太が浩輔を攻めるシーンでしたし、それは外見のイメージからは逆でした。そこに不思議さを感じましたが、描いていないだけで、同じ回で浩輔が龍太を攻めてもいるのだろうと思っていました。
やがて浩輔が龍太を攻めるシーンも出てきました。
浩輔も、龍太のHは丁寧すぎるみたいなことを友達に話し、不思議に思っていました。
とか思っていたら、龍太は男性相手の売春をしていて、でも浩輔には本気になったということでした。だから慣れた手つきだったということでした。
○別れたいと去った龍太を見つけた浩輔。龍太は浩輔の希望を受け入れて男性相手の売春をやめて、昼も夜もバイトをするとともに、浩輔が強く言ったこともあって浩輔から毎月10万円をもらっていました(母の治療費もかかるので、それなりに稼がないといけない。)。
それで過労死したということでしょう。
妙子は龍太は幸せだった旨を言って浩輔を責めませんでしたが、自分のせいだという思いが抜けないので妙子にも10万円の支援をしたいと申し出て、押し問答の末に受け取ることにした妙子。
結果として妙子のためにはなるものの、浩輔は自分のために妙子を支援していることは明らかなシーンでした。
妙子と定期的に会って話しをしたり、入院して死期が近くなった妙子の看病も仲が良い家族のようにしていました。
そこまでしないと自責の念に押しつぶされそうな浩輔でした。
○さて、ゲイの友達が居酒屋に集まって気さくに会話をしていましたが(パンフによると、きっちりとした台本での台詞ではなく、かなりフリーに会話をしたもの。)、ガチガチのではなく軽いものですがいわゆるオネエ言葉を使う人もいて、浩輔も軽いオネエ言葉を使っていたのですが、本作以外でも、これってなんなのだろうと思います。
実は女性になりたいということなのか、いわゆる女性の役割になりたいということなのか。少なくとも本作ではゲイですから、実は女性になりたいということではないでしょう。ゲイだと気持ちがいわゆる女性っぽくなることが多いということなのかも知れませんし、気持ちが女性っぽくなると言動もいわゆる女性っぽくなるということなのかも知れませんが、よく分かりません。
10年以上前、会社の先輩に連れられて新宿のゲイバー(ゲイではない人もOKな店。)に行ったことはありますが、ほとんどのゲイがいわゆるオネエ言葉(本作よりはガチ寄りなものの、ガチガチというものではない。)で話していました。この場合は、接客業ですから、世間の一般的なイメージに合わせただけという可能性もあるかも知れないとは思っています。でも、ある程度女性っぽい化粧もしていましたし、何で女性っぽく見えるような化粧をするのだろうとは思いました。
ゲイの男性としてゲイの男性を好きになるというだけなら、女性っぽい話し方や女性っぽい化粧(や服装)をする必要はないのでは、ということです。ゲイの男性としてゲイか異性愛者か分からない男性に好かれるには女性っぽくした方が良いと考えた、ということなのかもしれませんが、謎です。
○公式HPから。
「14歳で⺟を失い、⽥舎町でゲイである⾃分を隠して鬱屈とした思春期を過ごした浩輔。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、仕事が終われば気の置けない友人たちと気ままな時間を過ごしている。そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである⺟を⽀えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太。
自分を守る鎧のようにハイブランドの服に身を包み、気ままながらもどこか虚勢を張って生きている浩輔と、最初は戸惑いながらも浩輔から差し伸べられた救いの手をとった、自分の美しさに無頓着で健気な龍太。惹かれ合った2人は、時に龍太の⺟も交えながら満ち⾜りた時間を重ねていく。亡き⺟への想いを抱えた浩輔にとって、⺟に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし彼らの前に突然、思いもよらない運命が押し寄せる――。」
【shin】