堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて。
「生きねば。」
宮崎駿監督・脚本、スタジオジブリ、2013年7月公開、126分。2015年2月20日にTVで放送していたので。
放送時間の長さからしてノーカットなのかなあ、そういう前提にしておきます。
確か大ヒットしたんですよねえ・・・
物語だけで見れば、全体としては普通でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/5c/86091d84959372760a30334c9795998c.jpg)
○ 純粋に飛行機好きで飛行機が作りたい技術者の堀越二郎(cv庵野秀明)と友人の本庄(cv西島秀俊)、時はアジア・太平洋戦争のアメリカとの太平洋戦争突入前、戦闘機作りに没頭しつつ、堀越二郎と結核の里見菜穂子(cv瀧本美織)との恋と結婚と別れが少しの物語。
純粋であることの恐ろしさ、純粋ゆえの恐ろしさも描いた物語。
○ 他の声優は、というかみんな俳優なのではと思いますが、黒川(cv西村雅彦)、カストルプ(cvスティーブン・アルパート)、里見(cv風間杜夫)、二郎の母(cv竹下景子)、堀越加代(cv志田未来)、服部(cv國村隼)、黒川夫人(cv大竹しのぶ)、カプローニ(cv野村萬斎)。
普通にうまい人もいれば、気にならない程度の人もいて、まあ、この辺は気にしないことにしましょう(全員のことは分かりませんがドラマとかでは上手い俳優ばかりですが、体も使った演技と声だけの演技は違うということで、どちらが凄いとかの話ではありません。)。
ただ、アニメ監督の庵野さんだけが下手。気にしないようにしても気になってしまうくらいに下手。
声優の演技は普通以上であればほぼOKで多少下手でも声質が気に入ればOKな私ですが、何故に宮崎監督が起用したのかも、何故に庵野さんがOKしたのかも意味不明。これまでのジブリアニメを全て見ているわけではありませんが、ここまで下手なのは無かったです。「ハウルの動く城」(2004年)も特にダメでしたが、ここまででは無かったですし。
公開前のCMだったかで庵野さんが台詞を一言話していましたが、それだけで下手と分かりましたが、全体で見ても下手。
庵野監督ということで、普段ジブリアニメを見ないアニメオタクに見てもらうという効果だけは、あったのかも知れません(笑)。
その結果として、宮崎監督とジブリの評価をますます下げたのですが。
○ 物語としては普通。堀越二郎は戦争とか関係なく飛行機を作りたいだけ、空に憧れただけ、という純粋さは分かりましたし(実在した本物の堀越二郎がそうなのかは知る由もありませんが。)、仮に堀越二郎らが日本が世界と戦えるだけの戦闘機(ゼロ戦)を作らなければ太平洋戦争は始まらなかったでしょうし(別の誰かが作ったかも知れませんが。また、誰も作れなかったとしてもアジア戦争は始まり、続いていたでしょうが。)、そういう意味では、日本の軍国主義を倒すためにアメリカとの戦争を始める一因を作って日本が負ける一因を作った、ということになります。
堀越二郎の妄想の世界とアニメ内での現実世界を時々交差させながらというのも、堀越二郎の純粋さを上手く表していましたし、それゆえの危うさも上手く表していましたし。
○ 菜穂子は結核なのに高原の隔離された病院を出て2人で暮らすところ(結核は空気感染しますし、当時は不治の病みたいなものだったのですけどね・・・純粋に、堀越二郎と一緒にいたいということ。)、
2人の見つめ合う姿、
堀越二郎が菜穂子の前で菜穂子にも勧められてタバコを吸うシーンは、死ぬことが分かっているからその程度では何ら影響はありませんし、堀越二郎が好きなことをさせたいという愛ですし、好きなことをしている堀越二郎が好きな菜穂子という菜穂子の愛ですし(妻は夫に付いていくという状況は当時なら当たり前ですし、現代でも特に日本ではその傾向は残っていますし。)、
いよいよ死期が間近になって黙って高原の隔離された病院に戻る菜穂子(純粋に、やつれていく姿を堀越二郎に見せたくなかったということ。)、
堀越二郎は純粋に菜穂子を愛していたのだろうな、菜穂子もそうなのだろうな、と思いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/a8/319e7a09daf0d6546e071092a1c9f7dc.jpg)
その純粋さゆえに、戦闘機を作ればどうなるかを分かっていながら、飛行機が作りたいだけと言い聞かせながら、子供のときからの夢である飛行機が作りたいだけと言い訳しながら、一所懸命に飛行機を作っていたのでしょう。
このアニメがアジア・太平洋戦争を肯定しているとも反戦とまでも思いませんが、戦争の悲惨さや情報統制や気に入らない人を冤罪で逮捕・拷問していたことのごく一端は描かれていて戦争に否定的な印象は受けましたが、その描き方自体には何の問題もありませんが、つらつらと書いてきたように、そんなことを思いました。
それより、純粋であること自体はときに美徳でもあり、ときに欠点でもありますが、別のアニメの感想の中でも書きましたが、大人にせよ子供にせよ、純粋って、とても恐ろしいことでもあるんですよ。純粋ゆえに平気で人を殺すとか。
【shin】