まだ続く面白かったアニメの中間の感想で、長くなったので2回に分けた2つ目です。
●「氷菓」(その2)
8~11話の、文化祭で上映予定の2年生の映画が、脚本家が倒れて途中から作れなくなった話は、謎解きとしては良いのですが、入須の奉太郎と脚本家と自分への嘘、奉太郎の姉の奉太郎への嘘、嘘を付かれたことを言えない奉太郎の千反田達への嘘とが重なり、後味が悪いものになった感じ。
嘘は青春の通り道、成長の過程での通り道、そして、必要だけど、ほろ苦いものですけどね。
このアニメのCMでは、「青春は優しいだけじゃない。痛い、だけでもない。ほろ苦い青春群像劇」とのことですからね。
○8、9話
なんだろうと乗り気ではない奉太郎は、まず映画を見た方が「効率的」と入須(イリス)冬実(cvゆかな)に言われ、心動かすところは、安直だけど、まだまだ奉太郎らしさ全開で、笑い。
脚本家は延原兼さんが訳したシャーロック・ホームズを参考にしたとか。新潮文庫は、しおりの代わりに紐がついているから便利です。ホームズは全部読みましたが、面白いです。
余談ついでに、ジェレミー・ブレッドがホームズを演じたイギリスのTVドラマは、原作の雰囲気が良く出ていて、ホームズと言えばこの人以外に考えられないくらい、とても良いです。
2年の入須から、脚本担当のクラスメイトが脚本が途中なのに倒れたから代わりに犯人を推理してくれと言われて、渋々アドバイザー的に加わる奉太郎と、進んで加わる3人。
入須のクラスの3人の案を聞くものの、出来が悪く却下。
○10、11話(11話中心でときどき10話)
11話で、奉太郎が、入須から、君は特別よ、だから手伝ってくれ、君しか出来ない、最初から奉太郎が目当てだった、と頭を下げられてかなり心を動かされ、それが挙動にかなり出て、自分にしか出来ないことがあるかも知れないと、アイデンティティがかなり揺らいだと思われるシーンは、初期の奉太郎には考えにくいし、他人との関わりによりある程度変わってきたこの時期の奉太郎としても、ちょっと大袈裟ではないかなあ。
確かに、千反田の好奇心に導かれて他者では解決できなかった事件を解決してきたこともあって、自分が必要とされる人間であり、役立つ人間であり、それなりには能力があるということ、そしてそれなりに楽しかったということは、ある程度は自覚していたことでしょう(全く自覚できない程には、奉太郎は天然でも鈍感でも馬鹿でもないはず)。
千反田とも結構親しくなり、恋愛感情かどうかまでは判断が付かないものの、異性として徐々に意識している様子が少し描かれていたことと合わせ、奉太郎は、普通の青春の道、普通の高校生活の道に向けて、実は何歩か進んでいたということなのでしょう。
だとしても、大袈裟な挙動に感じました。奉太郎における他人に承認されることの欲求が、私が感じていたより強いということなのかも知れません。アニメ的には、その方が面白いのでしょうけれど。となると、この辺に書いた私の解釈はどうでも良い解釈ということになりますが。
入須が女王様風なのは、少し不自然さはあるものの、あの育ちからして、アニメ的にはあり得る範囲として良いですが、江波(エバ)倉子(cv悠木碧)が無表情に、口数と抑揚が少なく話しつつ奉太郎らを案内したり、江波のやる気のなさは奉太郎好みではあるものの、一体何なのか。
何かこの件で知っていそうな雰囲気があり、脚本家とは親友のようなので、殺人事件にできなかった脚本家の事情を知っていたのでしょう。だとすると、入須の意図に気付いていたのか、入須から知らされていたが黙っていたのか。いずれにせよ、親友である脚本家の名誉を守るために、他人には言わないでしょうけれど。
で、奉太郎は見事に推理し、入須の賛同も得て解決し、それに基づいて映画は完成したものの、実は間違っていたことが判明することになり。
完成したものを見てから、里志、摩耶花、千反田の3人とも、この脚本に納得がいかないと言い出しました。
それはそれで良い脚本だが、脚本家の意図と合わないところがある、脚本家が用意させた小道具などが使われていない等々言うのですが、それを、強い口調で奉太郎を責めるように言うところは、何なんだろう? 特に、里志と摩耶花。
奉太郎への期待が高かったから、脚本家の意図と合わない脚本であることに気付かなかった奉太郎への失望が、そのような強い口調と態度になってしまったのだと、取り敢えずは理解しましたが。
そうだとしても、普段から短気で奉太郎に悪態をついてばかりの摩耶花は未だしも、少なくとも、冷静に考えられる里志が奉太郎を強く非難したのは、やり過ぎな感じ。
これは、10話前半の半ばで、里志が奉太郎をうらやむようなこと、嫉妬を感じているようなことを言っているので、失敗をした奉太郎に対して優越感(つまり、里志の奉太郎への劣等感の裏返し)を感じたので、つい強く言ってしまったということを表したとか? 多分、私の考え過ぎで、期待の裏返しということにしておいて良いと思いますけれども。
奉太郎が里志に普段より強くというか、うろたえたように反論したのは、入須に褒められて舞い上がり、その期待に応えようとして頑張り、その結果を入須に認められ、つまり、自分が認められて新しい(薔薇色に向かう)自分(=アイデンティティ)を見つけつつあったのに、里志に奉太郎のアイデンティティを根底から崩されたように感じたとか。
ところで、そんなこと以前に、映画を再び作り始める前、かつ、奉太郎が入須に報告した後に、口数の少ない奉太郎がどう推理したかを自分から3人に言わないというのは容易に想像できますが、夏休み中とは言え、好奇心旺盛な3人が奉太郎に電話やメールで聞かないというのは想像しがたいので、そもそも完成後に生じる問題ではないはずです。
9話で千反田が自分で持ってきたウイスキーボンボンを気に入って食べ過ぎ、ほろ酔いになったり、酔って寝たり、10話で、翌日は二日酔いだったところは、千反田の可愛らしさを見せるために有効でした。
ただそれは、里志と摩耶花は所要で抜け、千反田は二日酔いでいないということにしないと、3人の誰かが奉太郎の推理に間違いがあること、しっくりしないことを指摘してしまうからが第一の理由なのでしょうが。
で、結局、脚本家が作ろうとしていた話では殺人も無いし、そもそも面白くないから、入須が奉太郎らに実質的に脚本を作らせるために、脚本家が倒れたことにして、奉太郎らに犯人捜し=脚本作りをさせたと。
奉太郎は、そもそもの脚本が面白くないという理由以外のことに気付き、怒って入須に詰め寄ると。
奉太郎を褒めたことを嘘かと問いただす奉太郎に対し、かなりの間を置いて「心からの言葉ではない。それを嘘と呼ぶのは、君の自由よ。」とほぼ表情を変えない入須。
間を置いて、「それを聞いて、安心しました。」と凄く悔しそうな奉太郎。
入須は言葉足らず過ぎ、かつ、不器用過ぎで、奉太郎は嘘つきです。
その後、入須が奉太郎を騙していたことを入須と誰かがチャットでやりとりしていて、1人は脚本家だと明白なのですが、もう1人は、奉太郎の姉でしょうね。入須が「先輩」と書いていること、地球の反対側にいること、奉太郎のことを「あのバカ」と言っていることからして。
面白いけれど、後味の悪い8~11話でした。
「ほろ苦い青春群像劇」が前面に出てきたということなのでしょう。
そういうのも、好きですけれど。
このアニメ、わたし、気になります!
以下は、余談です。
今年のお気に入りヒロイン第3位は、冬期の「あの夏で待ってる」の、素直になれない恋する乙女の谷川柑菜(cv石原夏織)だったのですが、天然系ピュアお嬢様なのに嫌みのない千反田える(cv佐藤聡美)はもっと気に入りました。
ただ、奉太郎との関係が恋愛方面に進展するとすれば、上手く描かないと、現実的な目で見られるキャラになってしまわないかが心配。今は、非現実的な天然系だけど現実感もある、両者の微妙なバランスの上にいるからこそ、非現実的なピュアさとかが可愛く見えて魅力的な千反田えるですが、変に現実感が増すと嫌みな女子になりかねないです。佐藤さんの声が良く合っているので、多少は声でカバーできると思いますが。
で、今年、その上をいくキャラはと言うと、夏期の「ゆるゆり♪♪」の杉浦綾乃(cv藤田咲)、秋期の「ひだまりスケッチ×ハニカム」のゆの(cv阿澄佳奈)。
ただ、私にとってはこれは別格。実質的な今年のお気に入りヒロイン第1位は千反田える。今年は、もうこれ以上は出ないでしょう。
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shin
ざっく
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