いいアニメ、いい小説、いい映画など、いいものはまた見たくなりますし、数回見ても飽きないものです。
ミステリーだろうが何だろうが、犯人が分かっていても、また見たくなりますし、また見ても楽しめます。
また見ると、新たな発見もあります。
ミステリーでもあり、青春ものでもある「氷菓」も、そんなアニメです。
(千反田のキャラ、そして、何よりも、その声を担当している佐藤聡美さんの声が良く合っていることも大きいとは思いますが)
ここでは、少し引っかかるところを書きます。思ったより長くなりましたが、分けるのもあれなので。
基本的に些細なことなので、本筋にはほとんど影響はなく、良いアニメであることに違いはありませんが。
○ 奉太郎の姉の役回りについては最初から思わせぶりですが、そこは、何かあればアニメの最後の方で種明かしされるでしょうから、詳しくはその時に、何か書きます。
偶然と言うには不自然ですし、計画的と言うにも、ちょっとうまくやり過ぎ。出来過ぎ。奉太郎が姉に事情を聞かないのも不思議。
文化祭3日目に「夕べには骸に」を持参したことは、後輩から十文字事件のことを聞いて、それに書いてある「クドリャフカの順番」が関係しそうだと思ったからでしょうけれど、1日目の出掛ける奉太郎に壊れた万年筆をあげた理由は、良く分からないところ。
本編のように、なるほど!という物語を期待していいのかなあ。
○ 万年筆が「わらしべ長者」の始まりになりましたが、料理大会で困っている摩耶花に奉太郎が小麦粉をあげて終わりかと思ったら、奉太郎は摩耶花に小麦粉の代わりを請求して続きました。
摩耶花は古典部としての活動で小麦粉を使ったので不思議に思いましたが、互いに遠慮のない関係であることから、奉太郎は、わらしべ長者は面白いと思い、取り敢えず請求したのでしょう。
摩耶花は、わらしべ長者と聞いて、なるほどと言って手鏡を渡しました。
普段と異なり、摩耶花がやけに素直に渡した気がしますが、これは、いろいろあって文化祭では少し弱気になっていたこと、小麦粉が凄く有り難かったと思っていることを表したものなのかなあ。
○ 鏡音レン(双子の男子の方)にコスプレした女子漫研部員の松代の役(同級生かも知れないけれど、多分、摩耶花の1つ上)の悠木碧さん、摩耶花に、「実は大したこと無い漫画を見せるのが急に怖くなったんじゃないの」と、嫌味な言い方で言っています(15話後半)。
その言い方、悠木さん、凄く嫌味ったらしくて、怖くて、いいです。
○ 奉太郎は、園芸部員と物々交換した拳銃型の水鉄砲を一目見てスラスラと拳銃の名前を言いましたが(13話前半)、多分、拳銃に書いてあったのでしょう。
一方、園芸部員が持っていた水鉄砲のAK47が「ロシア製の突撃銃だ」と言ったこと。AK47は世界的に超有名なアサルトライフルですが、「突撃銃」という日本的な呼び方をしたこと(15話前半)。これは、奉太郎は銃に詳しいのではと推測されます。
何事にも入れ込まない奉太郎が、銃というかなりマニアックなものに詳しいことに、ちょっと違和感。
親が自衛隊とか、そんな設定があるのかな?
今後に繋がるのかな?
園芸部員が自分から「AK」だと言っていたので(ロシア製とは言っていない)(13話前半)、奉太郎が銃に疎くても盗まれたのはAKだと推測できることになり、十文字事件の解決に影響はなかったはずですけれど。
○ 考えが煮詰まってきたところだから相談しながら考えを進めたい、しかしやろうとしていることを千反田が知ったら反対されるからと、奉太郎が里志だけに十文字事件のことを相談しようとしたところ、千反田も知りたいと言うのを振り切るために、もの凄くヒワイな話だからと言って振り切り、2人だけで話したところ。
2人の話は、まだミステリーの核心には触れておらず、考えや現状を整理するだけで、田名辺の名前も、田名辺を恐喝する話(恐喝とヤラセが、千反田が反対するであろうことのはず)も出ていませんし、奉太郎は、犯人がどうということではなく考えをまとめたいと言っています(16話後半。16話前半からすると、文化祭3日目の午前10時以降で12時より前の出来事)。
里志は、奉太郎の考えと事件の真相をその後に、奉太郎と田名辺委員長が2人だけで話しているのを盗み聞きして知ったので(17話後半。文化祭3日目で時間不明だが、午前中でしょう)、描かれなかったところで話していたわけではありません。
よって、奉太郎が里志だけに相談しようとした理由は何か。
前述のように、この時点で恐喝とかをしようとしていたから、奉太郎が十文字事件の謎を解いたかのようなことを千反田らに知られたくなかった、知られると更に問いただされ、恐喝のことを言わざるを得なくなることを恐れたということなのでしょうけれど、であれば、2人だけで話したときに頭の整理みたいなことにとどまった理由、恐喝の話が出なかった理由は何か。
(同人誌「夕べには骸に」とその後書きに記述された「クドリャフカの順番」というキーワードからして、文化祭で起こっている「十文字事件」と「クドリャフカの順番」が関係していることは推理できますし、であれば、「夕べには骸に」の作者が50音順に起こる「十文字事件」の犯人であるとも推理できます。
それに、犯行声明が文化祭のパンフの特定ページにはさまれていることからして、どこが狙われるかも推理できます。
また、この時点では、作画と原作の2人の氏名と、更に後書きを書いた(背景も手伝った)別の者がいることが判明しています。
奉太郎であれば、犯人を特定できたのは、不思議ではないどころか、自然です。)
その方が謎解きが後回しになってアニメとして面白いということでしょうし、奉太郎が1人で恐喝して解決できると踏んでいたので、良くないことだから話さないで済むなら里志と言えども話さないでおこうと思ったのでしょうけれども。
結局、十文字事件を完遂させ、「氷菓46号」を売るために里志に協力してもらうことになりますが。
○ 印刷しすぎた「氷菓46号」を売るためとは言え、田名辺委員長を恐喝して30部を総務委員会として購入・通販させ、更に、犯人が古典部を襲うからとして多くの人に監視をかねて来てもらい、ついでに「氷菓」を買ってもらうとか、奉太郎は、何故にそこまでして「氷菓」を売りたいと思ったのか。
その時点では、200部のうち売れそうに無いのは100部位の見込みだったでしょうか。1部200円で販売なので2万円。2万円の売り上げは既にありますが、その利益が仮にゼロとしても、2万円の損です。古典部4人いれば、バイトでも、小遣いでも、どうにでもなる金額と思いますが。
発注ミスをして困っている摩耶花のため?
それもあるでしょうけれど。
主として、摩耶花が気にすると千反田も気にする(12話前半で奉太郎が摩耶花に言っている)、売り込みで千反田が苦労している、そんなところでしょうか。
(摩耶花に気にするなと言ったのも、千反田が気にするからというのが第一の理由でしょうし。第一に千反田のことを気にしたことは、奉太郎はまだ無自覚でしょうけれど。)
だとしても、衆人監視の中でナトリウムを仕込んだ校了原稿に田名辺に水鉄砲で水をかけさせて化学反応を起させて燃やすなんて、ちょっとリスクが大きい気が。
スマホの着信音程度で校了原稿から全員が目を離すことはあり得るとしても、それは一瞬でしょう。小さな拳銃型の水鉄砲の引き金を1~2回引く程度ならまだしも、校了原稿が置いてあった机の上に残っていた水の量からして、相当に撃っていますが、そんなに時間があったものかどうか。あるという前提で計画を立てるには、リスクが大きい気が。
何より、奉太郎が言っているとおり、恐喝がバレたら千反田が反対します。2人はギクシャクするでしょう。
それは摩耶花も同じ。特に摩耶花は、自分のミスで誤発注したのに、それを恐喝で完売したなんて、傷付きます。
本当に、そこまでのリスクをとる必要があったのかどうか。疑問です。
今後の描き方次第ですが、ある正義の実現のためにどうにかしようとして必死になるあまり、別の正義や別のより大きな正義を見失ったり無視してしまい、全体的に見た場合により大きな正義の実現を妨げてしまうという、青春にありがちなことを表現した、と考えることにしましょう。
これは大人になっても、国家という単位になってもあることですが、青春期や青年期に多いことです。
○ 摩耶花はコスプレを嫌がっているのに、自宅からコスプレして通学することもないだろうに。学校で着替えればいいものを。
初音ミク、巡音ルカとか、それで外は歩けないだろう、東京でも普通の街中を出歩くのは恥ずかしいのではないか、という格好の漫研部員もいたので、彼女らは学校で着替えているはずですが。
しかも、3日とも同じコスプレの部員がいる中、摩耶花は3日とも違うコスプレをしています。本当に嫌なのか、ちょっと疑問です。
好きだけど人前では恥ずかしいということと、やる以上はとことんやるという摩耶花の性格を表現したものなのかな。
○ 千反田が遠垣内(とおがいと)先輩にお願いをしたとき、最後に遠垣内に古典部のことを壁新聞に書くように念押ししなかったこと(15話前半)。
千反田は、念押しすることは遠垣内を疑うことになると言っていますが、気になることには何かと食い下がる千反田なので、奉太郎とか古典部員に対してなら念押ししていたような気がします。
それは、千反田と古典部員との距離感と、千反田と遠垣内との距離感の差でしょうか。先輩だからでしょうか。
少なくとも、慣れないことをして千反田が疲れていたからとは思えませんけれど。
千反田、自らのその距離感の差に気付いたのでしょうか。
気付いた気がしないなあ。天然の千反田だから。
○ 17話最後で、文化祭が終わり、千反田の家で打ち上げをしようという古典部。摩耶花が、「憂さ晴らしだ!今日は飲むわよ!主にウーロン茶!」と。
未成年だから、いくら深夜アニメとは言え、酒を飲むと堂々とは言えない世の中になりましたからねえ。。。。。
漫研で打ち上げがあったとして少しは顔を出したでしょうけれど、摩耶花は古典部の打ち上げを主に選ぶのでしょう。
古典部が、摩耶花が安らげる場所であるようで、何より。
千反田にとっても、奉太郎にとっても。
里志にとってどうかは、保留しておきます。
少なくとも、里志の成長には欠かせなくなってきているようですが(奉太郎にとっても、ですが)。
以下、エンディングについての余談です。
千反田と摩耶花が歌う11話までの落ち着いたエンディング「まどろみの約束」の歌詞に、「今夜 恋に変わる 幸せな夢で会おう きっと ねえ 見つけてね まどろみの約束」とあり、これは女子が片思いしている男子に気付いてほしいという歌でしょう。
絵は、2人が誰かを思っているような雰囲気でまどろむ、落ち着いたもの。
同じく2人が歌う12話からのエンディング「君にまつわるミステリー」はアップテンポで、女子が、男子の気持ちを知りたい、気になる、惹かれていく、という歌でしょう。
絵は、探偵の2人が泥棒の2人、千反田が奉太郎を、摩耶花が里志を逮捕したが逃げられ、また追っかけるという、コミカルなもの。
告白したけど振られた摩耶花の里志に対する気持ちには概ね合いますが、まだ無自覚と思われる千反田の気持ちには合わないところ。
奉太郎は既に千反田を意識していると思われるので、恋に落ちるのは奉太郎の方が先だろうと思うのですけれど、モジモジなり告白なりを描くのは、描くとしたら、千反田を中心に描くということなのでしょうか。
オープニングやエンディングと本編の内容が合うとは限りませんけれども。
それにしても、奉太郎と摩耶花が付き合った方が面白いと思うものの、そのストーリーの余地は予想通り最初からまるでないし、摩耶花が可哀想になってきたので、摩耶花と里志が付き合うことでいいや。
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shin
涼
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