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お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

コーイチ物語 「秘密のノート」 38

2022年08月31日 | コーイチ物語 1 5) 部長・吉田吉吉  
 やっぱり課長に何かあったんだ! あぁぁぁ、あのノートのせいだ! 書き込んだボクのせいだ! 
 コーイチには吉田課長が無表情のままこちらに手を振りながら次第に半透明になりさらに薄くなり終いにはすーっと消えて行く様子が見えていた。それに連れてコーイチの意識もすーっと消えて行きそうだった。
「わかった!」
 清水が突然叫んだ。
「課長、川村静世ちゃんといけない事をして、奥さんにばれちゃったんだ! それで奥さんにボコボコニされて全治六ヶ月の入院になったんでしょ?」
「課長の奥さん、柔道五段だったよなぁ……」
 林谷が感慨深げに言った。
「全然、違う!」
 岡島がいらだたしげに怒鳴った。
「じゃあ、これだ」
 印旛沼が赤いハンカチを一振りして黄色のハンカチに変えながら言った。
「会社ぐるみの脱税事件か汚職事件があって警察側にばれたんだ。そこで、すべての責任を一身に被せられ、今は留置場内って感じかな?」
「課長、社内じゃ貧乏くじばかり引いているとこぼしてたからなぁ……」
 林谷がまた感慨深げに言った。
「ふざけている場合じゃないぞ!」
 岡島が地団太を踏みながら叫んだ。
「あのぅ……」
 コーイチが恐る恐る言った。
「なんだ?」
 岡島が急に偉そうに胸を張って聞いた。
「ひょっとして、撃たれた、斬られた、連れ去られたなんて事には関係ないよな」
「ふん!」
 岡島はそれに答えず鼻を鳴らしただけだった。
「なになに、そんな予知夢でも見たのかしら?」
「どこかの組織の話かい?」
 清水と林谷がわくわくした表情で同時にコーイチに聞いた。
「いえ、人には言えないっす……」
 コーイチはおろおろしながらも誤魔化した。
「ならば、何があったって言うんだ。勿体つけてないで言ったらどうだ」
 西川がさらに前に一歩出た。反射的に岡島は一歩下がる。
「じ、実は……」
 岡島が口ごもった。その時、エレベーターが開き、営業三課の北口課長が飛び出てきた。ロビーに固まっているコーイチたちを見つけると駆け寄ってきた。
「おいおい君たち! 何してんだ! さっきから、今日は全員無断欠勤かって怒鳴りながら待ってるぞ!」
「吉田課長が、ですか?」
 西川が聞いた。北口は両手を左右に振り否定する仕草をした。
「吉田部長だ!」

       つづく


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