■清水巖の紹介記事
・「<人>「ひょうご消費者ネット」理事長・清水巖さん」『神戸新聞』2008年6月24日
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<人>「ひょうご消費者ネット」理事長・清水巖さん
不当な契約を結ばせようとする業者に、差し止めを請求できる消費者団体訴訟制度。特定非営利活動法人(NPO法人)「ひょうご消費者ネット」が先月、団体訴権を持つ「適格消費者団体」に認定された。県内初、全国では六例目。「本格スタートの基礎が整った」
九州大学大学院教授で、専攻は消費者法。学生だった一九六〇年代半ば、消費者を保護する法的基盤は皆無。果汁100%をうたった飲料のテレビCMが、実際とは異なっていても規制できる法律がなかった。「消費者の権利が不十分な社会は不公平だ」。先進的な米国をモデルに、消費者の権利保護を研究した。
現場での実践を重んじる。起案からかかわった一九七四年の「神戸市民のくらしをまもる条例」は、クレジット取引での消費者保護を当時の法律よりも先んじさせた。八四年の割賦販売法改正では、国に強く働きかけた結果、商品に欠陥があれば、購入者が信販会社に支払わなくてもいい「抗弁権」が盛り込まれた。
兵庫県内で消費者相談にあたる担当者の勉強会で二十八年間、講師を務める。「現場の事例を取り上げ、研究成果を地域に生かしたい」。全国各地の研修会にも二千回以上足を延ばす。ひょうご消費者ネットには二〇〇五年の設立時に参加した。
適格消費者団体は来春以降、誇大広告や虚偽広告も請求できる。地方自治体の消費者行政が縮小傾向が続く中で「市民の立場に立って、幅広く活動したい」と誓う。六十二歳。神戸市中央区在住。(吉本晃司)
(6/24 09:46)
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■清水巖関連記事
・「不当契約にNO! 消費者団体が差し止め請求可能に」『神戸新聞』2008年6月3日
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くらし
不当契約にNO! 消費者団体が差し止め請求可能に
悪質な契約で被害にあった消費者に代わり、国が認定した「適格消費者団体」が事業者に不当行為の差し止めを請求できる消費者団体訴訟制度。このほど、特定非営利活動法人(NPO法人)ひょうご消費者ネット(神戸市)が認定された。この制度で消費者はどこまで保護されるのか、課題の積み残しは。同ネット理事の上田孝治弁護士に聞いた。(吉本晃司)
上田弁護士によると、同制度のメリットは大きく二つ。以前なら泣き寝入りしていた消費者が声を上げやすくなった点と、訴訟によって不当な契約の抑止効果が期待できる点だ。
■提訴前でも効果
例えば、英会話学校に二年分の受講料を前払いしたが、事情で受講できなくなり、残り期間の返金を求めたところ、約款を理由に返金を拒まれた場合。制度発足以前なら、返金を求めて受講者自身が提訴する以外、対策は見当たらなかった。
「約款が不当でも、金額が少ないと訴訟費用の方がかさむため、実際には訴訟には至らないのが大半。問題が表面化せず、不当な契約が存続した。英会話大手NOVAの解約金訴訟はその典型例」
適格消費者団体が勝訴した場合、業者はその契約手法が使えなくなり、新たな被害を未然に防げる。すでに被害があった人については救済できないが、判決を参考にすることで、交渉を有利に進められる。
これまでに六つの適格消費者団体が認定された。上田弁護士によると、差し止め請求は二件にとどまるが、提訴前の申し入れで、大半の業者が約款の改善に応じているという。
この制度では内閣府と国民生活センターが判決を公表することが決まっている。「悪質業者には改善をより強く促せる」
契約問題に取り組む同ネットがこれまでに手掛けた事例でも、自主改善する業者が多い。資格試験予備校は中途解約制限を緩和し、生保業界はクーリングオフの除外規定を撤廃した。
「同業者の場合、類似の約款を使っていることが多く、一つの改善で業界全体を変えられる」と話す。
■賠償請求権なし
ただし改正消費者契約法が同団体に認めているのは契約の差し止め請求まで。個々の被害の賠償請求は消費者個人が行動に移すしかない。
また、通常の民事訴訟と異なり、同じ差し止め請求を別の適格消費者団体が起こすことはできない。例えば、ある契約手法をめぐる差し止め請求で東京の団体が敗訴した場合、他府県にもその判例が適用される。
「訴えの乱用防止という趣旨は理解できるが、争点が異なることもある。『同じ』と判断する基準が不明確。敗訴の影響も大きく、他団体と情報交換しながら対応する必要がある」
相談料は不要だが、手弁当で運営する団体が多く、活動基盤は万全ではない。消費者保護の枠組みは整いつつあるが、不当な勧誘や約款を改善させるには消費者の決断が欠かせない。
「おかしいと思うことはどんどん情報提供してほしい」と上田弁護士は話している。ひょうご消費者ネットTEL078・361・7201
消費者団体訴訟制度 消費者利益を保護し、事業者の不当行為を防ぐため、内閣総理大臣が認定した「適格消費者団体」が差し止めを請求できる。2007年6月の改正消費者契約法で導入された。訴訟を起こしにくい少額被害についても、適格消費者団体であれば被害の有無にかかわらず提訴が可能で、被害拡大を抑止できる。適格消費者団体は今年5月現在、東京の2団体、大阪、京都、広島の各1団体が認定済み。
(6/3 10:08)
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■ 清水巖関連記事
「おサイフケータイ 関西ではまだ低調」『神戸新聞』2006/03/31
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おサイフケータイ 関西ではまだ低調
2006/03/31
小銭やクレジットカード、定期券、店のポイントカードなど財布の中身を携帯電話一台に収められる「おサイフケータイ」が注目されている。非接触型のICチップを埋め込んだ携帯電話を、読み取り機にかざすだけで料金の支払いやポイント加算ができるほか、場合によってはマンションの鍵としても使える優れものだ。ただ、近畿では首都圏より普及が遅れており、セキュリティー面の課題も多い。兵庫県立神戸生活創造センター(神戸市中央区)で、このほど開かれた商品・サービス研究会で、携帯電話会社の担当者らに話を聞いた。(坂口紘美)
保障制度など課題
おサイフケータイを読み取り機にかざす。シャリーンという音がしたら支払い完了=神戸市中央区、兵庫県立神戸生活創造センター
参加した会社は、NTTドコモ関西、KDDI、ボーダフォンの三社。おサイフケータイは二〇〇四年七月にNTTドコモが他社に先駆けて販売を開始。翌年、ほかの二社が追随した。基本的な機能はどこも一緒で、これまでに発売された対応機種は三社で計二十八種類。〇六年二月末の合計販売台数は全国で約千二百万台。近畿圏での販売は全体の15%ほどにとどまっている。
首都圏での浸透が先行する理由について、NTTドコモ関西は「関東は利用できる店が多く、一月からはJR東日本のICカード乗車券スイカの機能を携帯電話に入れることで、携帯をかざせば自動改札機を通れるサービスも始まった」と説明した。このサービスはJR西日本のイコカでは利用できない。
一方、おサイフケータイが使える店舗は全国に約三万店。am/pmやサークルK、サンクス、マツモトキヨシなど全国チェーン店がそろうが、本部がある関東に比べると関西における店舗数は少ない。兵庫県内では神戸空港、北野異人館、元町商店街、南京町などの観光地で比較的、導入が進んでいる。
◇ ◇
ところで、おサイフケータイの利用法はとても簡単。対応機種を購入したらまず、内蔵しているプリペイド型の電子マネー「Edy」の初期設定を行う。完了すれば、対応店で最大五万円まで入金できるほか、買い物の支払い、携帯画面での残高照会などが可能。クレジット機能などほかのサービスを追加したい場合は、必要なアプリケーションソフトをダウンロードして設定すればよい。
では、セキュリティー面の課題とは何か。九州大学大学院法学研究院の清水巖教授は「消費者を守るシステムが整っておらず、現状では損害はすべて自己責任になる」と指摘。そのうえで次のような課題を挙げる。
残高があるおサイフケータイが盗難、紛失しても残金は返還されない▽故障した場合、電子マネー「Edy」を提供する会社が設ける有料のサービス「Edyレスキューサービス」に事前に登録していないと残金は返還されない▽機種変更をした場合、古い機種のICチップ内のデータを消去しなければ、おサイフ機能はそのまま使えるため、不正使用される恐れがある。
さらに、おサイフケータイは基本的に第三者でも自由に使えるため、盗難や紛失時の対策は不可欠。機種によっては暗証番号を入力しないと利用できない機能が付いていたり、あらかじめ登録してある自宅などの電話から「一分間に三回」などの設定通りに電話をかければ、自動的におサイフ機能に鍵がかかる「遠隔ロック」システムもある。だが、遠隔ロックシステムは圏外や電源がオフの状態では使えない。クレジット機能をダウンロードしている場合、不正使用で全財産を失うリスクもある。
アフタフォローが整わない理由の一つは、多くの事業者がかかわって提供するサービスであること。それぞれの問題に縦割りで対応しようとしているため、利用者に分かりづらく、責任の所在があいまいになる危険性もある、という。
清水教授は「利用者の立場に立った保障制度が整わないと、より普及するのは難しいだろう」と話した。
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・「<人>「ひょうご消費者ネット」理事長・清水巖さん」『神戸新聞』2008年6月24日
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<人>「ひょうご消費者ネット」理事長・清水巖さん
不当な契約を結ばせようとする業者に、差し止めを請求できる消費者団体訴訟制度。特定非営利活動法人(NPO法人)「ひょうご消費者ネット」が先月、団体訴権を持つ「適格消費者団体」に認定された。県内初、全国では六例目。「本格スタートの基礎が整った」
九州大学大学院教授で、専攻は消費者法。学生だった一九六〇年代半ば、消費者を保護する法的基盤は皆無。果汁100%をうたった飲料のテレビCMが、実際とは異なっていても規制できる法律がなかった。「消費者の権利が不十分な社会は不公平だ」。先進的な米国をモデルに、消費者の権利保護を研究した。
現場での実践を重んじる。起案からかかわった一九七四年の「神戸市民のくらしをまもる条例」は、クレジット取引での消費者保護を当時の法律よりも先んじさせた。八四年の割賦販売法改正では、国に強く働きかけた結果、商品に欠陥があれば、購入者が信販会社に支払わなくてもいい「抗弁権」が盛り込まれた。
兵庫県内で消費者相談にあたる担当者の勉強会で二十八年間、講師を務める。「現場の事例を取り上げ、研究成果を地域に生かしたい」。全国各地の研修会にも二千回以上足を延ばす。ひょうご消費者ネットには二〇〇五年の設立時に参加した。
適格消費者団体は来春以降、誇大広告や虚偽広告も請求できる。地方自治体の消費者行政が縮小傾向が続く中で「市民の立場に立って、幅広く活動したい」と誓う。六十二歳。神戸市中央区在住。(吉本晃司)
(6/24 09:46)
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・「不当契約にNO! 消費者団体が差し止め請求可能に」『神戸新聞』2008年6月3日
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くらし
不当契約にNO! 消費者団体が差し止め請求可能に
悪質な契約で被害にあった消費者に代わり、国が認定した「適格消費者団体」が事業者に不当行為の差し止めを請求できる消費者団体訴訟制度。このほど、特定非営利活動法人(NPO法人)ひょうご消費者ネット(神戸市)が認定された。この制度で消費者はどこまで保護されるのか、課題の積み残しは。同ネット理事の上田孝治弁護士に聞いた。(吉本晃司)
上田弁護士によると、同制度のメリットは大きく二つ。以前なら泣き寝入りしていた消費者が声を上げやすくなった点と、訴訟によって不当な契約の抑止効果が期待できる点だ。
■提訴前でも効果
例えば、英会話学校に二年分の受講料を前払いしたが、事情で受講できなくなり、残り期間の返金を求めたところ、約款を理由に返金を拒まれた場合。制度発足以前なら、返金を求めて受講者自身が提訴する以外、対策は見当たらなかった。
「約款が不当でも、金額が少ないと訴訟費用の方がかさむため、実際には訴訟には至らないのが大半。問題が表面化せず、不当な契約が存続した。英会話大手NOVAの解約金訴訟はその典型例」
適格消費者団体が勝訴した場合、業者はその契約手法が使えなくなり、新たな被害を未然に防げる。すでに被害があった人については救済できないが、判決を参考にすることで、交渉を有利に進められる。
これまでに六つの適格消費者団体が認定された。上田弁護士によると、差し止め請求は二件にとどまるが、提訴前の申し入れで、大半の業者が約款の改善に応じているという。
この制度では内閣府と国民生活センターが判決を公表することが決まっている。「悪質業者には改善をより強く促せる」
契約問題に取り組む同ネットがこれまでに手掛けた事例でも、自主改善する業者が多い。資格試験予備校は中途解約制限を緩和し、生保業界はクーリングオフの除外規定を撤廃した。
「同業者の場合、類似の約款を使っていることが多く、一つの改善で業界全体を変えられる」と話す。
■賠償請求権なし
ただし改正消費者契約法が同団体に認めているのは契約の差し止め請求まで。個々の被害の賠償請求は消費者個人が行動に移すしかない。
また、通常の民事訴訟と異なり、同じ差し止め請求を別の適格消費者団体が起こすことはできない。例えば、ある契約手法をめぐる差し止め請求で東京の団体が敗訴した場合、他府県にもその判例が適用される。
「訴えの乱用防止という趣旨は理解できるが、争点が異なることもある。『同じ』と判断する基準が不明確。敗訴の影響も大きく、他団体と情報交換しながら対応する必要がある」
相談料は不要だが、手弁当で運営する団体が多く、活動基盤は万全ではない。消費者保護の枠組みは整いつつあるが、不当な勧誘や約款を改善させるには消費者の決断が欠かせない。
「おかしいと思うことはどんどん情報提供してほしい」と上田弁護士は話している。ひょうご消費者ネットTEL078・361・7201
消費者団体訴訟制度 消費者利益を保護し、事業者の不当行為を防ぐため、内閣総理大臣が認定した「適格消費者団体」が差し止めを請求できる。2007年6月の改正消費者契約法で導入された。訴訟を起こしにくい少額被害についても、適格消費者団体であれば被害の有無にかかわらず提訴が可能で、被害拡大を抑止できる。適格消費者団体は今年5月現在、東京の2団体、大阪、京都、広島の各1団体が認定済み。
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■ 清水巖関連記事
「おサイフケータイ 関西ではまだ低調」『神戸新聞』2006/03/31
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おサイフケータイ 関西ではまだ低調
2006/03/31
小銭やクレジットカード、定期券、店のポイントカードなど財布の中身を携帯電話一台に収められる「おサイフケータイ」が注目されている。非接触型のICチップを埋め込んだ携帯電話を、読み取り機にかざすだけで料金の支払いやポイント加算ができるほか、場合によってはマンションの鍵としても使える優れものだ。ただ、近畿では首都圏より普及が遅れており、セキュリティー面の課題も多い。兵庫県立神戸生活創造センター(神戸市中央区)で、このほど開かれた商品・サービス研究会で、携帯電話会社の担当者らに話を聞いた。(坂口紘美)
保障制度など課題
おサイフケータイを読み取り機にかざす。シャリーンという音がしたら支払い完了=神戸市中央区、兵庫県立神戸生活創造センター
参加した会社は、NTTドコモ関西、KDDI、ボーダフォンの三社。おサイフケータイは二〇〇四年七月にNTTドコモが他社に先駆けて販売を開始。翌年、ほかの二社が追随した。基本的な機能はどこも一緒で、これまでに発売された対応機種は三社で計二十八種類。〇六年二月末の合計販売台数は全国で約千二百万台。近畿圏での販売は全体の15%ほどにとどまっている。
首都圏での浸透が先行する理由について、NTTドコモ関西は「関東は利用できる店が多く、一月からはJR東日本のICカード乗車券スイカの機能を携帯電話に入れることで、携帯をかざせば自動改札機を通れるサービスも始まった」と説明した。このサービスはJR西日本のイコカでは利用できない。
一方、おサイフケータイが使える店舗は全国に約三万店。am/pmやサークルK、サンクス、マツモトキヨシなど全国チェーン店がそろうが、本部がある関東に比べると関西における店舗数は少ない。兵庫県内では神戸空港、北野異人館、元町商店街、南京町などの観光地で比較的、導入が進んでいる。
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ところで、おサイフケータイの利用法はとても簡単。対応機種を購入したらまず、内蔵しているプリペイド型の電子マネー「Edy」の初期設定を行う。完了すれば、対応店で最大五万円まで入金できるほか、買い物の支払い、携帯画面での残高照会などが可能。クレジット機能などほかのサービスを追加したい場合は、必要なアプリケーションソフトをダウンロードして設定すればよい。
では、セキュリティー面の課題とは何か。九州大学大学院法学研究院の清水巖教授は「消費者を守るシステムが整っておらず、現状では損害はすべて自己責任になる」と指摘。そのうえで次のような課題を挙げる。
残高があるおサイフケータイが盗難、紛失しても残金は返還されない▽故障した場合、電子マネー「Edy」を提供する会社が設ける有料のサービス「Edyレスキューサービス」に事前に登録していないと残金は返還されない▽機種変更をした場合、古い機種のICチップ内のデータを消去しなければ、おサイフ機能はそのまま使えるため、不正使用される恐れがある。
さらに、おサイフケータイは基本的に第三者でも自由に使えるため、盗難や紛失時の対策は不可欠。機種によっては暗証番号を入力しないと利用できない機能が付いていたり、あらかじめ登録してある自宅などの電話から「一分間に三回」などの設定通りに電話をかければ、自動的におサイフ機能に鍵がかかる「遠隔ロック」システムもある。だが、遠隔ロックシステムは圏外や電源がオフの状態では使えない。クレジット機能をダウンロードしている場合、不正使用で全財産を失うリスクもある。
アフタフォローが整わない理由の一つは、多くの事業者がかかわって提供するサービスであること。それぞれの問題に縦割りで対応しようとしているため、利用者に分かりづらく、責任の所在があいまいになる危険性もある、という。
清水教授は「利用者の立場に立った保障制度が整わないと、より普及するのは難しいだろう」と話した。
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