清水 巌 九州大学名誉教授・元滋賀大学教授(研究と社会活動)

  
1970年以来、消費者法という新しい法分野を切り開き、消費者を守ることに努めてきました。

消費者庁設置をめぐる公聴会(国会審議 第171回国会) で意見陳述しました

2009-04-08 | 社会活動


第171回国会 消費者問題に関する特別委員会 派遣委員(国会議員)の兵庫県での公聴会における意見聴取





(正面が、岸田座長、向かって右側テーブルが派遣委員(国会議員)のみなさま、
そして左側テーブル中央が、清水です)


■ 国会議事録より、公聴会における清水巌の発言箇所を抜粋して掲載致しました。掲載分以外の質疑応答等は、割愛致しました。



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派遣委員の兵庫県における意見聴取に関する記録( ← 原文はリンクしてあります)

一、期日

   平成二十一年四月六日(月)

二、場所

   クラウンプラザ神戸

三、意見を聴取した問題

   消費者庁設置法案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者安全法案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者権利院法案(枝野幸男君外二名提出)及び消費者団体訴訟法案(小宮山洋子君外二名提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 岸田 文雄君

       鍵田忠兵衛君   亀井善太郎君

       七条  明君 とかしきなおみ君

       枝野 幸男君   小宮山洋子君

       階   猛君   園田 康博君

       田島 一成君   大口 善徳君

       吉井 英勝君   日森 文尋君

 (2) 現地参加議員

       谷  公一君

 (3) 意見陳述者

    神戸市消費者協会専務理事           妹尾美智子君

    九州大学大学院法学研究院教授         清水  巌君

    和歌山県知事      仁坂 吉伸君

    滋賀県野洲市市民健康福祉部市民課市民生活相談室主査         生水 裕美君

 (4) その他の出席者

    内閣府大臣官房審議官  堀田  繁君

     ――――◇―――――

    午後一時六分開議

○岸田座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院消費者問題に関する特別委員会派遣委員団団長の岸田文雄でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、第百七十回国会、内閣提出、消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案並びに枝野幸男君外二名提出、消費者権利院法案及び小宮山洋子君外二名提出、消費者団体訴訟法案の審査を行っているところでございます。

 本日は、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当神戸市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うこととなっております。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日の出席者を紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の七条明君、鍵田忠兵衛君、亀井善太郎君、とかしきなおみ君、民主党・無所属クラブの園田康博君、枝野幸男君、小宮山洋子君、階猛君、田島一成君、公明党の大口善徳君、日本共産党の吉井英勝君、社会民主党・市民連合の日森文尋君、以上でございます。

 なお、現地参加議員といたしまして、自由民主党の谷公一君が出席されております。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 神戸市消費者協会専務理事妹尾美智子君、九州大学大学院法学研究院教授清水巌君、和歌山県知事仁坂吉伸君、滋賀県野洲市市民健康福祉部市民課市民生活相談室主査生水裕美君、以上四名の方々でございます。

それでは、まず・・・・


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次に、清水巌君にお願いいたします。

○ 清水巌君 それでは、私は、消費者法をおよそ三十年近くにわたりまして研究し、また、適格消費者団体ひょうご消費者ネット、現在その理事長を務め、消費者運動も行ってきた立場から、私が主としてその歴史から学べることについて意見を申し述べたいと思います。

 私のレジュメが、先ほど直前につくったところ、プリンターのぐあいが大変悪く、本当に読みづらいものになってしまいまして、恐縮です。今からできるだけ言葉で補いながら御報告したいと思います。

 一つは、まず消費者庁設置法案、それから二番目が消費者安全法案について、三番目が消費者団体訴訟法案についてであります。

 まず消費者庁設置法案についてですけれども、レジュメに書きましたように、消費者の保護あるいは権利擁護の視点に立った専門的で統一的、一元的行政組織として、これまで、国民から見ますと、三十年以上期待してきたいわば悲願と言ってもいいようなものであります。

 例えば、下に書きましたが、三十年以上前に、例えばカナダとかノルウェーとかフィンランドとか、あるいはスウェーデンで消費者オンブズマンがある、そういったことが我が国に紹介されて以来、我が国でもこういう消費者庁ないし消費者省といった行政組織がないと、消費者被害に対して予防も適切にできない、被害の救済もなかなか適切にできないという実態がありましたので、そういう悲願があったわけですけれども、今国会でこうして与党、野党の議員の先生方の協力で設置に向けて本当に真剣な議論を今現在していただいているということは、研究者として見ましても、ちょっと主観的な表現になりますが、大変うれしいことであります。

 ぜひ、この国会では必ず、まずこういう組織を実現していただきたいと思います。ここで何らかの形でできなかったら、また再度エネルギーを上げるというのはこれまでの歴史から見ても大変なことなので、ぜひ今回は、これまでの消費者基本法と同じように、できれば与野党の全会派一致の新しい統一的消費者行政組織ができることを期待しております。

 これまでも数多くの総理大臣が、生活者優先、消費者中心の消費者行政に転換しなければならないということを所信表明演説でおっしゃいましたが、なかなか実現できなかった。それが今回本当に実現しそうであるという意味で、私もそういう点でも本当に大きく期待しております。

 ちょっと研究者的表現ではないんですが、これは本当はカットしたかったんですけれども、時間の関係で、私個人用のメモなんですが、組織というのは人情のある人間が動かすものであるとちょっと書いていますが、つまり機械ではなく人情のある人間が動かしています。

 また、身近により多く入ってくる情報源、それは官庁から見れば事業者側の情報が圧倒的に多いわけですけれども、それによってこれまでも行動しがちでありました。主に産業の育成、発展を支えることを使命としてきた官庁は、たとえ理論的には国民生活優先あるいは消費者の権利擁護ということが理解できていても、具体的に人間として行動する場合には、産業助成官庁の対象である産業との板挟みになって、的確な決断ができないこともあったということは御存じのとおりであると思います。

 これまでも、手心を加えたり、経営に配慮して規制を行わなかったり、基準を緩めたりする。具体的にもう裁判所で国家賠償責任が肯定されてしまったり、担当の課長が有罪判決を受けるなどもあったわけですね。そういう意味では、消費者の権利、国民の安全を第一義とする官庁があれば、このようなことは防げるのではないか。そういう意味で、消費者庁の設置については心から期待しております。

 その次に、消費者庁設置法案につきましては、関連の法令の多くが消費者庁に移管されております。これも、私がさまざまな立場でこれまで国や地方公共団体の消費者行政にかかわってきたときに、絶えず大きな壁として省庁の壁というのがあって、なかなか本来の消費者被害救済制度ないし予防制度ができなかったわけであります。

 明治以来百四十年のこの大きな縦割りの壁を今回こうして突き崩す方向で法案をつくっていただいたということは、法案の中によっては、あるいは見方によっては、もっと移すべきであるという意見もあるかもしれませんが、ここまでできたということを、私は、正直言って、過去の私自身のさまざまな縦割りの壁にぶつかった経験からしますと、本当によくここまでしていただいたということで、研究者としても評価したいというふうに思っております。

 それから、所管法を、消費者関連の法律を一部移し、また一部移さず、また共管にしているという事態もありますけれども、例えばすべてを移管してしまいますと、では、これまでの各省庁は、さまざまな政策を企画立案する場合に、消費者の権利や利益のことについては、これは消費者庁にお任せすればよい、自分たちはもう考えなくてもよいんだという意識がもし出てくれば、私は非常に危険だと。たとえ消費者庁にほとんどの権限が移ったとしても、どの省庁も常に消費者の立場は考えて企画立案してもらわなければならないと思いますので、そういう意味では、共同管轄にしているというのも、私の勘ですけれども、恐らく合理的に機能するのではないかというふうに考えます。

 それから、地方公共団体の自主性、自立性が発揮できるような制度にしていただきたい。

 これまで、消費者に関するさまざまな制度は、地方から国へという流れと、国から地方へという流れがありますが、例えば消費者啓発、苦情処理、消費生活センターの設置あるいはクレジット取引の規制などはまず地方公共団体から始まり、それが次々と国にも取り入れられたという経緯があります。また、国から地方へは、申し上げるまでもなく物すごいものがありますが、こういうふうに、消費者問題に対応する制度というのは、各地方公共団体が住民の意見を反映しながら創意工夫することによってでき上がり、それがまた国にも刺激を与え、またそれが国から全国に広まりといったこともありますので、国がほとんど抱えるのではなく、できるだけ地方自治による地方住民の意思を尊重できる制度も残しておいていただきたいというふうに考えます。

 二番目に、消費者安全法案についてでありますが、ここで主に消費者の相談ないし苦情処理の制度のあり方について、少し気になったところについて意見を申し上げます。

 これまで、消費生活センターの設置の都道府県の義務とか市町村での努力義務とか、あるいは、それ以前から、消費者保護基本法の時代から既に努力義務が規定され、さらに消費者基本法へと名称が変わってからも同じようにそういう制度ができておりまして、都道府県はすべて消費生活センターが設置されていますが、市町村については、ほとんど充実していないという問題があります。

 その実態を、なぜそうなのかということを理解していただいて、抽象的に努力義務を置くだけでは今までと同じ形になってくると思いますので、そこについてぜひ理解していただきたいというふうに思います。

 もう一つは、消費生活センターが苦情処理をする場合に、しばしば事業者の方は、一体どういう法的根拠があって自分を呼び出すのかとか、相談員さんに対して、あなたは一体どういう立場でどういう地位で一々私にこういうことを言ってくるのかとか、そういう形で事業者がなかなか信用してくれない、信頼してくれない、あるいは応じてくれないといったことが非常に多いということですので、いわば、消費生活センターや苦情処理の努力義務とか責任があるではなくて、あっせんの権限がある、あるいは調停の権限があるという権限を消費者安全法で認めていただくということが非常に重要ではないかと。単なる行政機関の義務の方ではなくて、行政機関にそういう権限があるということを明確に規定していただきたいと思います。

 それとの対応で、相談担当者の専門職としての待遇の抜本的改善、これは私もお願いしたいと思います。

 これまで相談員の方の待遇については恐らく既に何度も、ここでも議論されておりますので詳細については申し上げませんが、ぜひ相談員の方については、まず国家によってきちんとした資格制度を、さらにより明確な資格制度を設けていただいて、消費生活センターにはそういった資格を持った専門職員を一定数は必ず配置しなければならないという法律上の義務づけをしていただきたい。これは、全員がその資格を持った者でなければならないという意味ではありませんで、消費生活センターというからには何名、そういったような形にしていただいて、ある程度多様な相談担当者の任用も残しながらも必ず一定の相談担当者を置いていただく。

 そして、相談担当者は基本的にはすべて正規職員化していただきたい。国家公務員か地方公務員かは別としまして、正規職員化しなければ、いわゆる嘱託等の立場ですと、常に、都道府県の条例によって嘱託にはこれ以上の待遇はできないんだ、自分たちは相談員の方の能力とか立場はよくわかるけれども、できないといったようなことをたびたび言われながら、そのまま今日まで来ておりますので、基本的には正規職員化する方向で考えていただきたい。

 相談員は、私はずっとこれまで三十年間にわたって養成講座、研修講師を務めてまいりましたが、相談員の立場というのは、いわば、正しい法適用をするという意味では裁判官、交渉力の弱い、情報力の弱い消費者の味方をするという意味では弁護士、そして消費者教育を担当するという意味でいえば教育者、そしてさらに悪質業者を指導しなければならないという行政官としてのこれだけの高い能力と業務を行っておられるわけです。それを、これまでの物すごい個人的な努力をも含めた献身と経験の積み重ねの中で現在適切な処理を行っておられるわけで、それにふさわしい待遇を必ず実現していただきたいというふうに思います。

 ちょっと時間の関係ではしょりますが、三番目の消費者団体訴訟法案につきましては、真の消費者の権利の実現と悪質業者の市場からの駆逐というか追放のためには必要不可欠な制度でありますので、これはぜひ強力に推進していただきたいと思います。

 ただ、適格消費者団体がこのような権限ないし任務を負わされた場合、例えば現在私が所属していますひょうご消費者ネットでは、会員数は百三十六名で、個人会員としては全国で多分最多だと思いますが、予算額は平成二十年度で九十四万円、こういう形です。それで、本当に、今、弁護士五十名ぐらいと相談員の資格のある方とか行政職員とか市民とかで頑張ってボランティアで活動しておりますけれども、活動すればするほど負担も非常に大きく、やはり一定の限界があります。

 特に、損害賠償請求権で得た資金を裁判所の管理のもとに配分するという業務を行うようになれば、当然、専門の職員を置かなければならず、その場合は、推定で言えば、二人の職員を置いた場合も年間最低四百万ぐらいは必要になるということでありまして、やはり前提条件として、適格消費者団体には公的な、決して個人の、会員たちだけの利益のために行動しているわけでは全くありませんので、いわば公的な立場で活動していますので、そういった資金的な援助をぜひお願いしたいと思います。

 ちょっと時間が超過してしまいましたが、また改めて、御質問のところでお答えしたいと思います。


 ありがとうございました。(拍手)

○岸田座長 ありがとうございました。



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