世界の奇食・怪食

世界に存在する身の毛もよだつようなゲテモノや、話の種にもってこいの珍食を紹介します。

餃子

2008-12-23 20:19:10 | Weblog
第二十五回

注意:今回は歴史小説風でお送りいたします

中華人民共和国、その国がまだ明と呼ばれていた頃の話である。

長白山の麓に小さな村があった。
本日は大晦日、新しい年を迎える準備をしなければならないはずなのだが、おかしな事に村は沼地に沈んだ小石の様に、暗く、静かだった。
それもそのはず。この村の近郊では、近年、人食い虎が出没する様になり、何十人もの村人が、凶猛なる猛虎の爪牙によって命を落としていた。
そしてつい昨日も、村の若者が一人、無惨に食い殺されたばかりだったのだ。
本日は葬式であった。棺桶には若者の妻とおぼしき女性が寄り添い、嗚咽を漏らしている。
そんな村に、一人の屈強な漢(おとこ)が訪れた。
村の異変を瞬時に感じ取った彼は、村長に理由を問いただす。
「実は・・・(以下略)」
それを聞いた漢(おとこ)は憤激した。
そして、ヌルハチと名乗るその漢(おとこ)は、その不埒な人食い虎を屠り去る事を村長に約束し、虎の住処へと赴くのであった。

(中略)

猛然と襲い来る牙をかいくぐり、間延びして二足となった虎の間近に接近し、拳を叩き込む。下から突き上げ、顎を狙う打撃ッ!人間相手ならば脳震盪は免れない、完璧な一撃であった。
だが、人間(ヒト)の打撃が大陸屈指の猛獣に通じるはずも無い。あの四足歩行動物特有の頑強な頸椎が、起きるはずの現象(脳震盪)を防いでいるのだ。
怒りを知らせる咆哮が、周辺の大気を震わせる。
虎にダメージは無い。むしろ余計に怒らせた。
素早く後ずさるヌルハチ。突進し、距離を詰めようとする虎を飛び越し、その背中に飛びついた。

がしっ!

彼の持つ二本の豪腕が、虎の首を万力のように締め上げる。
流石は百戦錬磨の戦士ッ!打撃が通用しないならば、絞め技だ!!
かのギリシャの英雄、ヘラクレスも刃が効かない怪物、ネメアの獅子を斃すため、棍棒の打撃で昏倒させた後に絞め殺すという方法を取っている。この方法は理にかなっているのだ!

数分後。虎は口から泡を吐き、白目を剥いて息絶えた。
ヌルハチは虎の死骸を担ぎ、悠々と村へ戻っていった。

乱暴に投げ捨てられた虎の死体を見て、村人たちは一斉に歓声を上げた。
彼らは喜び勇んで虎を素早く解体し、その肉を生地に包んで食したのであった。


博士:「・・・で、その虎肉を生地に包んだ物が餃子の始まりと言われている」

ホビ:「長い前振りだったね」

博士:「最近、このコラムがやっつけ仕事だな、って知り合いに言われちゃったから、少し気合いを入れてやったんだわ。そしたら、こうなっちゃった」

ホビ:「いやいや、こうなっちゃったじゃないよ。つーか、コレもう、グルメコラムじゃないじゃん」

博士:「別にいいじゃあないか。最後にちゃーんと、虎肉の餃子が出てきたろう?だいたいこのコーナーは、前からこんな感じだったろうが」

ホビ:「いや、明らかに違うだろ!」

本日の豆知識
ヌルハチって一体だれなんじゃい?
ヌルハチとは中国後金の創始者で、清の初代皇帝と言われる満州族の出身。決してハチミツまみれでヌルヌルとなったミツバチハッチでの略称では無い。
周辺の小国や民族を支配していた明に対抗すべく、部族間抗争に明け暮れていた女真族をまとめ、一大勢力を築きあげた。この虎退治のエピソードは明の軍隊とやりあっている時のお話で、ちなみに虎を素手で絞め殺した描写は、作者の創作したフィクションです。


餡餅雑煮

2008-12-11 11:09:09 | Weblog
第二十四回

前回までのあらすじ
司会進行役だった博士こと草屋さんがお亡くなりになりました。



ホビ:「うおおおお!博士ッ!!お願いだから目をッ、目を覚まして!」

おっさんの声:「おい、そこの卵。どうしたんだ?」

ホビ:「大変なんだ!この反社会的で、厭世主義で、仕事嫌いで、家族からも愛想を尽かされた人間のクズがいきなり血を吐いて動かな・・・って博士ェえええ!!」

博士:「誰が反社会的で、厭世主義で、仕事嫌いで、家族からも愛想を尽かされた人間のクズだって?」

ホビ:「な、なんで?死んだんじゃあ・・・」

博士:「いやな、いざ死んではみたものの、次に繋ぐネタが思いつかなくて・・・」

ホビ:「あ、そう・・・」

博士:「うん、そう・・・」

二人:「・・・・・・」

博士:「さて、もう師走だな、ホビローよ。だから今回は、正月向けのモノを用意した」

ホビ:「うわ・・・また唐突な。でも、正月の料理で、そんな変なモノあったかな?」

博士:「あるよ。まあ、この下の写真を見てくれ」







ホビ:「白い汁の雑煮?しかも、餅の中にあんこが入っているよ」

博士:「そう、これは香川県のご当地雑煮、餡餅雑煮だ」

ホビ:「・・・しかし、まァ、わざわざアンコが入った餅を入れんでも。甘くて食べられないでしょ」

博士:「そうでもないさ。けっこう美味いぞ」

ホビ:「でも僕は甘いのより、いつも食べている普通のがいいな」

博士:「まあ、待て。香川県と一口にいっても、中讃、西讃、東讃と地域ごとに違いがある。中には砂糖を使わず、塩を餅の餡に練り込んだ甘くない餅を入れるバリエーションもある」

ホビ:「甘くないのがいいなら、まずアンコ使わなきゃ良いのに」

博士:「いやいや、別に甘い物が嫌いだから塩を入れた訳じゃない。昔は砂糖が高級品で金持ちの口にしか入らない物だったから、塩を代用品にしたのだ」

ホビ:「貧乏人はいつの世でも悲しいね。やっぱり、世の中は金がなきゃあ、楽しめないな」

博士:「五歳児がそんな腹の黒いこと言うなよ」

ホビ:「しかし、こんな狭い土地でも色々なバリエーションがあるんだから、日本中の雑煮をかき集めたら、いったいどれくらいあるんだろうね」

博士:「急に話を戻すなよ・・・さァな。それを書いていくと主題からも外れていくし、調べたい人は個人で勝手にやってくれ。あと、狭い土地は余計だ。最後は餡餅雑煮の

ホビ:「それでは皆さん、来週までアディオス!」


熟寿司

2008-12-06 15:44:09 | Weblog
第二十三回

博士:「さて、今週も始まってしまったか」

ホビ:「始まってしまったかって、そんな嫌そうに言わないでよ」

博士:「いやな、最近、レーシックして視力が良くなったから、デスクワークして目をまた悪くしたくないのだ。だから、最近ネットでのネタ集めもおろそかだ」

ホビ:「いやいや、そんな博士の個人的な事情なんて知らないよ。プロなら一度受けた仕事はきちんとやらなきゃ。もう師走なんだし、もう一踏ん張りだ!頑張れ!!」

博士:「しょうがねェなァ・・・じゃあ、今週のテーマを出すか」





ホビ:「ほう、今週は寿司ですか」

博士:「そう、こいつは熟寿司(なれずし)。魚を塩と飯米で発酵させた保存食品だ」

ホビ:「へえー、前に発酵食品シリーズやったけど・・・それに出てきたヤツって、大半のが、口の中がただれたり、内臓を食い破るウジが這いまわってたりとロクなのが無かったよね。だけど、コイツは普通に食べられそうだよ」

博士:「まァ、あれらと比べたら、コイツなんて普通の食品って思うよ、私も。だけどコレも独特の臭気と味を持つから、好きな人と嫌いな人との差が激しい食べ物ではあるな」

ホビ:「・・・なんか、博士。今日は当たり障りがないしゃべり方だね。それに声の張りがない」

博士:「そうか?確かに今、風邪をひいて体調悪いが・・・というか、文章なんだから声の張りとか言われても読者には解らんだろ」

ホビ:「まァ、そうだけど」

博士:「じゃあ、話戻すぞ。さて、そもそも熟寿司っていうのは、古代、腐りやすい生魚を長期保存するために生まれた。ちなみにこの料理、寿司と銘打っているが、発祥は日本ではない」

ホビ:「あ、そうなんだ」

博士:「文献によってまちまちだが、とりあえず大陸から渡ってきた。熟寿司に似た形態を持つ料理は、雲南省や海南省と言った中国南部の少数民族やベトナム中部などに存在する。それが北上して漢民族の間に定着した後、日本に渡ってきたと考えるのが自然だろう」

ホビ:「なんか、普通の話でつまんないな」

博士:「しょうがないだろ。前回のみたいな話を探して持ってくるってのは、大変なんだ。あんまり、文句ばっか言ってると・・・」

ホビ:「?言っているとなんなのさ」

博士:「ゲボハァ!!ブシャアアアアアアアア・・・ドサッ」

ホビ:「博士ェ・・・いくら言葉に詰まったからって、吐血して誤魔化すのは良くないなァ。ほら、とっとと起きて片付け・・・(ゆさゆさ)博士?」

博士: へんじがない ただのしかばねのようだ

ホビ:「な、何ィいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

次回予告
何の伏線も無く、突如としてこの世を去った博士こと草屋。
そして相棒を失ったリビング・エッグ、ホビローは?
そして司会進行役を失ったこのコーナーはどうなるのか!?
無秩序 無軌道 無計画!
とりあえず・・・
刮目して、待て! 次週へ続く!!