第二十五回
注意:今回は歴史小説風でお送りいたします
中華人民共和国、その国がまだ明と呼ばれていた頃の話である。
長白山の麓に小さな村があった。
本日は大晦日、新しい年を迎える準備をしなければならないはずなのだが、おかしな事に村は沼地に沈んだ小石の様に、暗く、静かだった。
それもそのはず。この村の近郊では、近年、人食い虎が出没する様になり、何十人もの村人が、凶猛なる猛虎の爪牙によって命を落としていた。
そしてつい昨日も、村の若者が一人、無惨に食い殺されたばかりだったのだ。
本日は葬式であった。棺桶には若者の妻とおぼしき女性が寄り添い、嗚咽を漏らしている。
そんな村に、一人の屈強な漢(おとこ)が訪れた。
村の異変を瞬時に感じ取った彼は、村長に理由を問いただす。
「実は・・・(以下略)」
それを聞いた漢(おとこ)は憤激した。
そして、ヌルハチと名乗るその漢(おとこ)は、その不埒な人食い虎を屠り去る事を村長に約束し、虎の住処へと赴くのであった。
(中略)
猛然と襲い来る牙をかいくぐり、間延びして二足となった虎の間近に接近し、拳を叩き込む。下から突き上げ、顎を狙う打撃ッ!人間相手ならば脳震盪は免れない、完璧な一撃であった。
だが、人間(ヒト)の打撃が大陸屈指の猛獣に通じるはずも無い。あの四足歩行動物特有の頑強な頸椎が、起きるはずの現象(脳震盪)を防いでいるのだ。
怒りを知らせる咆哮が、周辺の大気を震わせる。
虎にダメージは無い。むしろ余計に怒らせた。
素早く後ずさるヌルハチ。突進し、距離を詰めようとする虎を飛び越し、その背中に飛びついた。
がしっ!
彼の持つ二本の豪腕が、虎の首を万力のように締め上げる。
流石は百戦錬磨の戦士ッ!打撃が通用しないならば、絞め技だ!!
かのギリシャの英雄、ヘラクレスも刃が効かない怪物、ネメアの獅子を斃すため、棍棒の打撃で昏倒させた後に絞め殺すという方法を取っている。この方法は理にかなっているのだ!
数分後。虎は口から泡を吐き、白目を剥いて息絶えた。
ヌルハチは虎の死骸を担ぎ、悠々と村へ戻っていった。
乱暴に投げ捨てられた虎の死体を見て、村人たちは一斉に歓声を上げた。
彼らは喜び勇んで虎を素早く解体し、その肉を生地に包んで食したのであった。
博士:「・・・で、その虎肉を生地に包んだ物が餃子の始まりと言われている」
ホビ:「長い前振りだったね」
博士:「最近、このコラムがやっつけ仕事だな、って知り合いに言われちゃったから、少し気合いを入れてやったんだわ。そしたら、こうなっちゃった」
ホビ:「いやいや、こうなっちゃったじゃないよ。つーか、コレもう、グルメコラムじゃないじゃん」
博士:「別にいいじゃあないか。最後にちゃーんと、虎肉の餃子が出てきたろう?だいたいこのコーナーは、前からこんな感じだったろうが」
ホビ:「いや、明らかに違うだろ!」
本日の豆知識
ヌルハチって一体だれなんじゃい?
ヌルハチとは中国後金の創始者で、清の初代皇帝と言われる満州族の出身。決してハチミツまみれでヌルヌルとなったミツバチハッチでの略称では無い。
周辺の小国や民族を支配していた明に対抗すべく、部族間抗争に明け暮れていた女真族をまとめ、一大勢力を築きあげた。この虎退治のエピソードは明の軍隊とやりあっている時のお話で、ちなみに虎を素手で絞め殺した描写は、作者の創作したフィクションです。
注意:今回は歴史小説風でお送りいたします
中華人民共和国、その国がまだ明と呼ばれていた頃の話である。
長白山の麓に小さな村があった。
本日は大晦日、新しい年を迎える準備をしなければならないはずなのだが、おかしな事に村は沼地に沈んだ小石の様に、暗く、静かだった。
それもそのはず。この村の近郊では、近年、人食い虎が出没する様になり、何十人もの村人が、凶猛なる猛虎の爪牙によって命を落としていた。
そしてつい昨日も、村の若者が一人、無惨に食い殺されたばかりだったのだ。
本日は葬式であった。棺桶には若者の妻とおぼしき女性が寄り添い、嗚咽を漏らしている。
そんな村に、一人の屈強な漢(おとこ)が訪れた。
村の異変を瞬時に感じ取った彼は、村長に理由を問いただす。
「実は・・・(以下略)」
それを聞いた漢(おとこ)は憤激した。
そして、ヌルハチと名乗るその漢(おとこ)は、その不埒な人食い虎を屠り去る事を村長に約束し、虎の住処へと赴くのであった。
(中略)
猛然と襲い来る牙をかいくぐり、間延びして二足となった虎の間近に接近し、拳を叩き込む。下から突き上げ、顎を狙う打撃ッ!人間相手ならば脳震盪は免れない、完璧な一撃であった。
だが、人間(ヒト)の打撃が大陸屈指の猛獣に通じるはずも無い。あの四足歩行動物特有の頑強な頸椎が、起きるはずの現象(脳震盪)を防いでいるのだ。
怒りを知らせる咆哮が、周辺の大気を震わせる。
虎にダメージは無い。むしろ余計に怒らせた。
素早く後ずさるヌルハチ。突進し、距離を詰めようとする虎を飛び越し、その背中に飛びついた。
がしっ!
彼の持つ二本の豪腕が、虎の首を万力のように締め上げる。
流石は百戦錬磨の戦士ッ!打撃が通用しないならば、絞め技だ!!
かのギリシャの英雄、ヘラクレスも刃が効かない怪物、ネメアの獅子を斃すため、棍棒の打撃で昏倒させた後に絞め殺すという方法を取っている。この方法は理にかなっているのだ!
数分後。虎は口から泡を吐き、白目を剥いて息絶えた。
ヌルハチは虎の死骸を担ぎ、悠々と村へ戻っていった。
乱暴に投げ捨てられた虎の死体を見て、村人たちは一斉に歓声を上げた。
彼らは喜び勇んで虎を素早く解体し、その肉を生地に包んで食したのであった。
博士:「・・・で、その虎肉を生地に包んだ物が餃子の始まりと言われている」
ホビ:「長い前振りだったね」
博士:「最近、このコラムがやっつけ仕事だな、って知り合いに言われちゃったから、少し気合いを入れてやったんだわ。そしたら、こうなっちゃった」
ホビ:「いやいや、こうなっちゃったじゃないよ。つーか、コレもう、グルメコラムじゃないじゃん」
博士:「別にいいじゃあないか。最後にちゃーんと、虎肉の餃子が出てきたろう?だいたいこのコーナーは、前からこんな感じだったろうが」
ホビ:「いや、明らかに違うだろ!」
本日の豆知識
ヌルハチって一体だれなんじゃい?
ヌルハチとは中国後金の創始者で、清の初代皇帝と言われる満州族の出身。決してハチミツまみれでヌルヌルとなったミツバチハッチでの略称では無い。
周辺の小国や民族を支配していた明に対抗すべく、部族間抗争に明け暮れていた女真族をまとめ、一大勢力を築きあげた。この虎退治のエピソードは明の軍隊とやりあっている時のお話で、ちなみに虎を素手で絞め殺した描写は、作者の創作したフィクションです。