何にもない一年でした。何かを期待していた一年でした。生きていれば、起きなきゃいけない、立たなきゃいけない、歩かなきゃいけない。風とすれ違い、何かとすれ違い、誰かとすれ違い、いろいろ...
小学四年生の時、S君という転校生がクラスに来た。彼はちょうど自分の後ろの、空いていた席に座ることになった。休み時間になって後ろを見ると、S君は文庫本を読んでいた。読んでいたのは宮沢...