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花にまつわる幾つもの話

子供時代の花にまつわる思い出や、他さまざまな興味のあることについて書いていきたいと思ってます。

第十四章 椿(つばき)とからすうり

2010年04月27日 | 花エッセイ
 我が家の裏手から私道を抜けて真っ直ぐ進むと、

丁度T地にさしかかる手前、脇道に入る角付近に小さな家があった。

家の周囲をぐるりと塀が囲んでいて、そこで飼われているのだろうか、

いつも猫が一匹瞑想していた。

 その猫のあまりにも超然とした姿に、あれは普通の猫じゃない、哲学猫だと噂したものだった。

 さてくだんの家だが、塀と黒い鉄柵門のところに庭木が植わっていた。

 ことに門構えのところの椿はひときわ見事なもので、春先になると赤い花をつける。

椿は昔から武士の花ともたとえられるように、散る姿が潔い。

 そこの椿もご多分に漏れず、大輪の花が開いたままぽとりと落ちる。

ぽとり、ぽとりと落ちて、やがて入口の石段は赤い花で埋め尽くされる。

おかげでこの家の前を通りかかるたびについ足をとめてしまう。

 その椿と向かい合うようにしてけやきがあった。

けやきは江戸時代から日よけ風よけに武家屋敷などによく植えられていたようだが、

この大きなけやきの木にはからすうりの蔦が絡まっていた。

けやきのどこまでも天に伸びる勇壮な姿によりそうように、

からすうりは枝葉を這い巡らせ、秋になると真っ赤な実をつけた。

 その赤い実が空中にたった一本の蔓から釣り下がっているのである。

これはなんとも不思議な光景だった。

 最初、そんな所に赤い実があるとは思いもしなかった私は初めて目にした時、

少なからず感動を覚えた。

丁度、からすうりという植物を本で知ったばかりの時期だったので、

その符号が余計に私を感銘させたのだろう。

 ちなみにからすうりの花は真っ白いレースのような細い繊維が絡み合ったような感じで、

私は一度も花が咲いているのを見たことがない。

気がつくといつの間にか真っ赤な実が垂れ下がっているのである。
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