マロンはお散歩が大好きなわんこでした。
歩けなくなってからも、
天気のいい日は抱っこでお散歩にでかけます。
腕の中でぐずることもなく、
見慣れた風景を楽しみ、
気持ちよさそうに風の匂いを感じているようです。
だいたい決まった時間にお散歩していると、
同じような顔ぶれのわんこと出会うのですが、
恥ずかしながらマロンは社会性があまり育ってなく、
他のわんこと仲良くしたい子ではなかったので、
いつも軽くご挨拶だけしてすれ違っていました。
『あら、今日は抱っこしてもらって楽ちんね』
いつも元気に歩いていたマロンを見かけていらっしゃったからか、
よく見かける方から初めて声をかけられたのです。
『こんにちは。今日も元気にお散歩できてますね』
そう答えてすれ違おうとしたら、呼び止められて、
『ほら、甘えてちゃだめよ、自分でしっかり歩かなきゃ』と。
今後も出会うことがあるだろうし、
マロンが誤解されているのも嫌だなと思い、
病気で歩けなくなったったことを話すと、
何度も謝られてしまって逆に申し訳なくなりました。
『怖いわねぇ、ある日突然そんな体になるなんて可哀そうに。お大事にね』
眉をひそめてそうおっしゃる気持ち、
とてもよくわかります。
わんこと暮らす家族にとって、
健康な時はいつまでもその健康が続くと思いたいし、願いたいし、
健康を失うことが一番怖いのは皆同じです。
私もマロンが健康な時ならそう思ったでしょう。
でも、マロンが病気になって、
不自由な体になっても、
一緒に今を生きて明日を迎えたい私にとっては、
心配なことも多いけれど喜びだってあるし、
怖くて可哀想ばかりではないのです。
そんな小さなことにひっかかってしまうのも、
ちょっと心が過敏になってるのかな。
お散歩の道でマロンが好きなものが今年もありました。
たんぽぽは断然綿毛派。
蜂がシロツメクサの蜜を吸っているのも、
じいっと見つめます。
一番好きなのは、水田をすいすい泳ぐ水鳥。
いつまででも目で追っています。
誰かにどんな風に見られても、
マロンがお散歩を楽しめる限り、
どんどん外に出ていこうと思います。
ミカ