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アポロメディア ~日々の生活と意見~
日々の出来事を記録することで、その意味を再確認し、今後の行動の指針を探っていきます。
 




岸根公園に散歩したついでに神奈川大学の図書館に立ち寄りました。

たまたま、図書館主催の「羊皮紙写本ができるまで」という企画講演会が始まったばかりで、係の方にご案内いただき聴講させていただきました。

「写本」とは1冊ずつ手書きで作られた書物という意味で羊皮紙で作られていたものを「羊皮紙写本」といいます。

15世紀半ば以降の活版印刷(1455年にグーテンベルクが「グーテンベルク聖書」を活版印刷で出版)が普及する前は、本というものは1冊ずつ手書きで作られていました。(大変手間のかかる作業です。)

中国で発明された「紙」の製造技術がヨーロッパに伝播し普及していくのもそのあたりなので、それ以前の書物は高価な羊皮紙を使って書いていました。

現在でも、重要な書類には羊皮紙が使われており、「羊皮紙」は過去のものではないとのことです。(現在、羊皮紙の生産がもっとも盛んな国はイスラエルだそうです。)

ということで、今回の講演会では、羊やヤギ、牛などの動物の皮が豪華な羊皮紙写本になるまでの各工程や職人の苦労などを、日本で羊皮紙工房を主宰している八木健治氏から直接お話しをお聞きしました。



中世の書類や豪華な写本(図書館所蔵の復刻版)が展示されていて、直接手にとって触れることができるという滅多にない機会でした。

最近、江戸時代から明治、大正、昭和にかけての書籍の作られ方について勉強を始めたところなので、ヨーロッパの中世の本の作り方を勉強できたのはラッキーでした。

これを機会に西洋の出版事情についても関心を持って見ていこうと思います。

■展示されていた写本



まずは、展示されていた羊皮紙で作られた本を紹介します。

11世紀に作られた『祝祭のための読誦集』です。(1983年に限定95部作られた限定複製本販売価格がなんと155万円でした。車が1台買える!)



14世紀に作られた、有名なマルコポーロの『東方見聞録』。 


これは『驚異の書』の一部として書かれたそうです。


きれいな装飾で彩られ、絵も描かれています。


何と書いてあるのでしょうか。


かなりいい加減なことが書いてあります。
これを読んだコロンブスが一攫千金を狙って日本を目指して航海に出てアメリカ大陸発見に至ったということですか。

14世紀末から15世紀に作られた『いとも美しき聖母時祷書』の外観です。


中を開くと。美しい装飾で描かれたページが現れます。


15世紀に作られた『薔薇物語』です。

これは、ウィキぺディアでは「様々な知識・教養を盛り込んだ百科全書的な恋愛作法の書」という解説がついていました。


非常に高価な写本なので、貴族階級の人々の間で回し読みでもしていたのでしょうか。


16世紀に作られた『クロイの時祷書』(祈祷文や詩編を集成し内容に合わせた挿絵をつけて、ローマ・カトリック教会のキリスト教徒としての信仰・礼拝の手引きとして編集したもの。)

がっちりした外観です。簡単に開かないように留め金もついています。


中もカラフルです。




こちらは19世紀に作られた『エチオピア聖書詩集』


本物の写本(の一部)も展示されていました。(こちらは直接手に触れることはできません)

1250年の旧約聖書です。(末尾の参考情報2.に関連情報あり)


拡大してみると、いろいろ書いてあります。


1450年ごろの時祷書。

こちらはフランスのもの。


公文書も展示されていました。




中世の楽譜もありました。オタマジャクシの原型のようなものが見えます。(末尾の参考情報1.に関連情報あり)


巻物状のものもありました。




■羊皮紙の原紙と写本のためのインクやペン

羊皮紙を作具るための道や作られた羊皮紙、さらに写本のためのインクやペンなども展示されていました。



まだら模様のあるほうが外側(毛皮のあるほう)で、白い方が内側(内臓のあるほう)だそうです。


羊皮紙といいつつ、皮は羊だけでなく山羊や牛なども使われているそうです。


文字は羽根ペンで、一文字ずつ丁寧に書きこんでいきます。


装飾用の顔料や金箔です。


■羊皮紙の作り方

まずは、羊などの皮を入手して毛や油などの余分なものを取り除きます。

当時の作成過程を示した図には、手ぶれしていて見にくいのですが、かなり残酷なシーンが描かれています。







原皮には汚れや油が付着しているので、まずこれを取り除きます。(根気のいるきつい仕事です)

続いて、皮をなめして薄くのばし皮の表面を磨いたりくなどしてシート状に整形します。

以下は、展示されていた羊皮紙制作グッズです。




羊皮紙写本の作り方については、こちらに詳しく説明されていますので参照してください。

■文字の筆写



一文字一文字丁寧に書き写して行く作業は根気がいります。




時には、失敗してしまうことも。


こんな文字が続いたんではたまりません。


その時は、削り取るか訂正の線を書きこむか。


拡大してみると、こだわりの跡がわかるといいます。


■装飾
ようやく筆写が終わると今度は装飾です。

羊皮紙写本には文字だけでなく美しい模様や絵が描かれています。




赤、青、黄、緑といった顔料を入手して塗って行きます。


青い色はとりわけ高価だったそうです。




豪華な本には金箔も貼られています。


■製本の仕方

羊皮紙に文字を書いて、さらに装飾が終われば、次はそれを一冊の本に製本する過程にはいります。


本の背に凸凹が見えますが、これは表表紙と裏表紙をつなぐ紐で、ここに折丁を糸で留めます


ひとつひとつ丁寧に強い糸で留めていきます。


すべての折丁をつないだら、表表紙と裏表紙を取りつけます。


留め金その他をつけて完成です。


■ようやく利用者の手に
大変な手間をかけて作られた羊皮紙の写本も最後は貴婦人の手元で愛読されたのでしょうか。


現代でも欧米等では、重要な政府文書や卒業証書などに高価な羊皮紙が使われているとのこと。

英国のウイリアム王子の結婚証書にも羊皮紙が使われたそうです。(羊皮紙の歴史

羊皮紙は過去のものではないということですね。

【参考情報】

1.中世の彩色楽譜展

2.聖書図書館

3.紙の歴史


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